HarnessRouter は、Codex・Claude Code・Hermes Agent といった「エージェントハーネス」(AI モデルにツール操作や作業手順を与えて自律的に動かす実行環境)を、1 つの API で自社のプロダクトに組み込めるようにするインフラサービスです。運営は米国の Lumentree Corporation で、Y Combinator の支援を受けています。エージェントを製品に載せようとすると、サンドボックスの起動、セッションの管理、途中経過のストリーミング、生成ファイルの受け渡し、実行ログの記録といった周辺の仕組みを自前で作る必要がありますが、HarnessRouter はこれらをまとめて引き受けます。2026 年 7 月に公開され、同年 8 月には Apache 2.0 ライセンスのセルフホスト版(Community Edition)もオープンソースで公開されました。
主な特徴
- 統一 API(Unified Harness Protocol): Codex・Claude Code・Hermes・DeepSeek Harness・Pi など複数のハーネスを、共通のリクエスト仕様で呼び分けられます。ハーネスの切り替えは設定の変更だけで済み、製品側の呼び出しコードは書き換えずに済みます
- タスクごとの隔離サンドボックス: 1 つのタスクにつき 1 つの隔離されたサンドボックスを自動で起動します。並列タスクが増えてもインフラの運用作業を意識せずに実行できます
- 実行トレースとコスト管理: ツール呼び出しと所要時間をステップ単位で記録し、モデル利用料・エージェント稼働時間・待機時間の内訳をタスクごとに示します。予算の上限や利用量のキャップも設定できます
- Harness Arena によるベンチマーク: 同じタスクを複数のハーネスとモデルの組み合わせで実行し、速度・コスト・精度を比べてから本番構成を決められます
- Community Edition(セルフホスト版): Apache 2.0 ライセンスで公開されており、Docker コンテナ 1 つで自社インフラ上に同じ API を立てられます。API キー・状態・ファイルを社外に出したくない場合の選択肢になります
- スターターキット: スライド・スプレッドシート・ダッシュボード・動画など、エージェントを組み込んだアプリの雛形をオープンソースで提供しています
料金
コンソールの利用やエージェントの設定は無料で、実際にエージェントが動いた時間に応じて課金される従量制です。有料プランの月額は、そのまま利用枠として使えます。
| プラン | 月額 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 同時タスク 2 件・ワークスペース 1、Agent work $0.020/分、データ保持 7 日間 |
| Developer | $20 | 同時タスク無制限・ワークスペース 1、Agent work $0.014/アクティブ分 |
| Production | $200 | 同時タスク無制限・ワークスペース 5、Agent work $0.010/アクティブ分 |
| Scale | $1,000 | ワークスペース無制限、Agent work $0.006/アクティブ分、トレーシング(Beta) |
| Enterprise | 要問い合わせ | ボリュームディスカウント、請求書・銀行振込対応 |
モデルの利用料は、自前の API キーを使う場合は HarnessRouter 側では課金されず、各モデル提供元に直接支払います。HarnessRouter のキーを使う場合はカタログ価格がそのまま適用され、上乗せはありません(月 $25,000 を超える分には 5% のルーティング手数料がかかります)。
料金は2026年9月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- エージェントの実行基盤を作り込む工数を省き、製品の機能づくりに時間を回せます
- 特定のハーネスに縛られないため、より良いエージェントが出たときに乗り換えやすくなります
- タスクごとの費用内訳と予算上限があるので、エージェントが想定外に長く動いたときの出費を抑えやすくなります
- 無料プランで試せるうえ、セルフホスト版もあるため、クラウド版とオンプレミス的な運用を用途で選べます
⚠️ デメリット
- 2026 年に公開されたばかりの新しいサービスで、基幹機能に組み込む場合は提供元への依存リスクを考える必要があります
- 料金体系が短期間で変わっており、過去のレビュー記事に載っている料金情報は古くなっている場合があります
- 実行基盤を自前で構築する場合に比べると、サンドボックス内部の細かな制御は限られます
- 無料プランはタスクの実行時間が 30 分まで(トップアップ後は最大 1 時間)、データ保持が 7 日間という制約があります
- 開発者向けの API 基盤なので、エージェントを単体で使いたい個人には向きません
類似サービスとの比較
| サービス名 | HarnessRouter との違い |
|---|---|
| OpenRouter | AI モデル単位の API ルーティングに特化しており、サンドボックスやエージェントの実行そのものは扱いません |
| E2B | コード実行用の隔離サンドボックスを提供する部品で、複数ハーネスを統一 API で切り替える仕組みは持ちません |
| Daytona | コンテナベースのエージェント向けサンドボックス基盤で、実行環境の提供が中心です。ハーネスをまたぐルーティング層は担いません |
こんな人におすすめ
- 自社のプロダクトに、資料・コード・動画などを生成するエージェント機能を組み込みたい開発チーム
- Codex と Claude Code のどちらが自社のタスクに合うかを、実データで比べてから決めたい人
- すでに 1 種類のハーネスと連携していて、将来の乗り換えに備えた構成に移したい人
- 大量のタスクを並列に動かす評価・検証を、インフラを組まずに回したい人
- API キーや生成データを自社環境に置いたままエージェント基盤を使いたい組織
まとめ
エージェントを製品に載せるうえで手間がかかるのは、モデルそのものより周辺の実行基盤です。HarnessRouter はその部分を API として切り出し、ハーネスを比べて選び、あとから乗り換えることまで見込んだ設計になっています。まずは無料プランかセルフホスト版で手元のタスクを動かし、ベンチマーク結果と費用の内訳を見てから本番構成を決める進め方が現実的です。