Apify は、Web スクレイピングやブラウザ自動化を「Actor」と呼ばれる実行可能なプログラムとして扱うクラウドプラットフォームです。Google マップや EC サイト、SNS といった主要なサイト向けの Actor があらかじめストアに揃っているため、目的に合うものを選んで実行するだけで構造化データを取り出せます。用意されたもので足りないときは、JavaScript や Python の SDK・CLI で自分の Actor を開発し、ストアに公開することもできます。プロキシの切り替え、ヘッドレスブラウザの管理、取得データの保存、定期実行といった裏方の仕事はプラットフォーム側が引き受けるため、利用者は「どのサイトから何を取るか」に集中できます。運営はチェコ・プラハの Apify Technologies s.r.o.、サービスの提供開始は 2015 年です。
主な特徴
- Actor ストア: Google マップ、Amazon、LinkedIn、TikTok など人気サイト向けの既製スクレイパー・自動化ツールを検索し、そのまま実行できるマーケットプレイスです。設定画面から対象 URL や検索条件を入力するだけで動かせるものも多く、コードを書かずに使い始められます
- SDK と CLI による自作: JavaScript・Python 向けの SDK(クローラーライブラリ Crawlee など)と CLI が公開されており、独自の Actor を開発・ビルド・デプロイできます。作った Actor はストアで他のユーザーに公開することも可能です
- マネージドプロキシ: データセンター型・レジデンシャル型のプロキシと、そのローテーションがプラットフォームに組み込まれています。ブロック対策のためにプロキシ業者を別途契約して組み込む、という手間が省けます
- ストレージとスケジュール実行: 取得結果は Dataset、任意のファイルは Key-value store、巡回予定の URL は Request queue に保存され、API から取り出せます。Actor の定期実行や実行状況の監視、Webhook による他サービスへの通知にも対応します
- 公式 MCP サーバー: リモート版の mcp.apify.com と、ローカルで動かす stdio 版の
@apify/actors-mcp-serverが公式に提供されています。Claude などの AI エージェントから Actor をそのままツールとして呼び出せるため、エージェントにリアルタイムの Web データを渡す経路として使えます - Apify AI(ベータ): 2026 年 7 月に公開された機能で、やりたいことを平易な英語で説明すると、適した Actor を探して実行するところまで面倒を見てくれます。ストアの膨大な Actor から目的のものを探す負担を軽くする位置づけです
料金
| プラン | 月額 | 含まれる内容 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 月 $5 分のプラットフォームクレジット、最大 16GB RAM、コミュニティサポート |
| Starter | $19(年払いで月 $17 相当) | 月 $19 分のクレジット、最大 64GB RAM、32 並行実行、チャットサポート |
| Scale | $199(年払いで月 $179 相当) | 月 $199 分のクレジット、最大 256GB RAM、128 並行実行、優先チャットサポート |
| Business | $999(年払いで月 $899 相当) | 月 $999 分のクレジット、最大 512GB RAM、256 並行実行、専任アカウントマネージャー |
ストアの Actor には 2 つの課金モデルがあり、どちらが適用されるかは各 Actor のページに書かれています。ひとつは開発者が定義したイベント(Actor の起動や 1 件の結果取得など)ごとに固定料金がかかる方式、もうひとつは開発者が上乗せを取らず、実行時のプラットフォーム使用量だけを支払う方式です。いずれもプランに含まれるクレジットから差し引かれ、超過分は次回の請求に加算されます。
料金は2026年9月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 人気サイト向けの Actor が多数そろっているため、「まず自分で書く」前に試せる選択肢があり、着手までの時間が短くて済みます
- プロキシ・ブラウザ・ストレージ・スケジューラを個別に契約して組み合わせる必要がなく、請求先も運用の窓口も 1 つにまとまります
- 公式 MCP サーバーがあるため、AI エージェントに Web データを供給する仕組みを自前の API ラッパーなしで用意できます
- Crawlee や apify-cli などの周辺ツールがオープンソースで公開されており、プラットフォームから離れた環境でも資産を使い続けられます
⚠️ デメリット
- 非エンジニアには学習コストが高く、UI が複雑だという指摘がレビューで見られます
- コンピュート使用量に応じた課金に加え、プロキシやストレージ、データ転送が別途かかるため、実行前に総額を見積もりにくい面があります
- URL を投げるだけで結果が返る従量課金 API と比べると、プロキシの選択や必要メモリの見当をつけるなど、最初のセットアップで決めることが多くなります
類似サービスとの比較
| サービス | Apify との違い |
|---|---|
| Bright Data | 大規模なプロキシネットワークとエンタープライズ向けのデータ収集基盤が主軸で、Actor ストアのような開発者向けマーケットプレイスの色は薄い |
| ScraperAPI | URL を渡すだけで使えるシンプルな従量課金のプロキシ・レンダリング API。導入は容易だが、既製ツールの流通や自作ツールの公開という仕組みは持たない |
| Oxylabs | エンタープライズ向けのプロキシとスクレイピング API に特化し、大規模収集でのコンプライアンス対応を重視する |
| Zyte (Scrapy Cloud) | Python の Scrapy フレームワークに特化したクラウドホスティング。既存の Scrapy 資産がある前提で、汎用のマーケットプレイスではない |
こんな人におすすめ
- 営業リストや市場調査のために Web からデータを集めたいが、スクレイパーをゼロから書く時間はないビジネス担当者
- 競合の価格や在庫を定期的に追いたい EC 事業者
- プロキシやブラウザ管理の面倒を外に出して、抽出ロジックの実装だけに集中したい開発者
- AI エージェントにリアルタイムの Web データを渡す経路を、MCP で手早く用意したい人
- 自作のスクレイパーをストアで公開し、他のユーザーに使ってもらいたい開発者
まとめ
Web からデータを集める作業は、抽出ロジックそのものよりも、ブロック対策・ブラウザの制御・保存先の用意・定期実行の仕組みといった周辺の準備に時間を取られがちです。Apify はその周辺をまとめて引き受けたうえで、よく使われる対象サイトについては出来合いの Actor まで用意しているため、「まず動くものを見る」までが早いのが持ち味です。一方で課金の構造は使った分だけ積み上がる形なので、本格運用の前に小さい範囲で実行してコストの感触をつかんでおくと安心です。まずは無料プランで目的に近い Actor を探して動かしてみるのが分かりやすい入り口になります。