Alibaba Cloudが開発する映像生成モデル群と、それを誰でも試せるWebサービス。テキストや静止画から映画のような質感の動画を生成でき、複雑なモーションやキャラクターのアニメーション、音声に合わせた口の動きまで扱える。2025年2月の初公開以降、モデルの重み(学習済みデータ)がApache 2.0ライセンスのオープンソースとして公開されている点が大きな特徴で、GitHubのWan 2.1・Wan 2.2リポジトリはいずれも1万を超えるスターを集めている。ブラウザから使えるWeb版のほか、iOS・Androidアプリも提供され、クラウドAPI経由での商用利用にも対応する。
主な特徴
- テキスト・画像からの動画生成: 「夕暮れの街を歩く人物」といった文章から動画を作れるほか、手持ちの1枚の画像を起点に動かすこともできる。ストーリーボード(絵コンテ)を与えて、カットをまたいで一貫した見た目の映像を作る使い方にも対応する
- Mixture-of-Experts構造による表現力: モデル内部を役割の異なる複数の「専門家」に分けて処理するMixture-of-Experts(MoE)構造を採用し、カメラの動きや被写体の動作といった複雑なモーション、キャラクターのアニメーションを安定して描き出す
- 音声駆動の動画生成: 音声を与えて、それに合わせた口の動きや身振りを持つ人物動画を生成できる。ナレーション付きの説明動画やアバター表現に向く
- 12言語対応の高精度テキストレンダリング: 動画内に文字を描き込む処理に強く、12言語のテキストを崩れにくい形で表示できる。ロゴ・字幕・看板などを含む映像で効果を発揮する
- 色調コントロール: 生成結果の色味を精密に調整でき、ブランドの世界観や作品のトーンに合わせたカラーグレーディングが行える
- オープンソースのモデル重み: Wan 2.1・Wan 2.2などのモデルがApache 2.0ライセンスでGitHubに公開されており、自前のGPU環境で動かしたり、独自に追加学習させたりできる。商用利用も許諾されている
- マルチプラットフォーム対応: Webブラウザに加え、iOS・Androidアプリからも利用できる
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Web版(wan.video) | 公式サイトで要確認 | クレジット制のプランを提供。ブラウザから動画・画像生成を利用 |
| API(Alibaba Cloud Model Studio) | 従量課金(要確認) | 生成した動画の秒数・解像度に応じた課金。商用利用可 |
| セルフホスト(オープンソース版) | 無料(Apache 2.0) | モデル重みを自前のGPU環境で実行。GPU等のインフラ費用は別途必要 |
料金は2026年8月時点の情報です。Web版の料金ページは動的に読み込まれるため本記事では金額を明記していません。最新の料金は公式の料金ページおよびAlibaba Cloud Model Studioのドキュメントをご確認ください。なお、サードパーティのAPI提供事業者では生成1秒あたりの単価で提供されている例があるが、公式の価格とは異なるため注意が必要である。
メリット・デメリット
✅ メリット
- モデル重みがApache 2.0で公開されており、自前環境での実行・追加学習・商用利用まで自由度が高い
- Webアプリ・スマホアプリ・APIと入り口が複数あり、試すだけなら難しいセットアップが不要
- 音声駆動の動画生成や12言語のテキスト描画など、他モデルが苦手としがちな領域をカバーしている
- ストーリーボードからの一貫制作や色調コントロールなど、映像制作の実務に寄った機能を持つ
- オープンソースコミュニティが活発で、周辺ツールや作例の情報を集めやすい
⚠️ デメリット
- Web版の料金体系が公式サイト上で動的表示のため、事前に費用感をつかみにくい
- セルフホストには相応のGPUメモリと環境構築の知識が必要で、初心者が気軽に手を出せるものではない
- 生成できる1クリップの長さには上限があり、長尺の映像は分割生成してつなぐ運用になる
- 提供元が中国のクラウド事業者のため、組織によってはデータの取り扱いポリシー上の確認が必要になる
- 人物の指先や細かな文字など、生成AI動画に共通する破綻は依然として起こりうる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Wan | Sora | Runway | Kling AI |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Alibaba Cloud(中国) | OpenAI(米国) | Runway(米国) | 快手/Kuaishou(中国) |
| モデル公開 | オープンソース(Apache 2.0) | 非公開 | 非公開 | 非公開 |
| セルフホスト | 可能 | 不可 | 不可 | 不可 |
| 主な入り口 | Web・iOS・Android・API | Web・アプリ | Web・API | Web・アプリ・API |
| 強み | 開放性・音声駆動・多言語テキスト描画 | 一般ユーザー向けの手軽さ | 編集機能を含む制作ワークフロー | 人物モーションの自然さ |
こんな人におすすめ
- 生成AI動画を自分のサーバーやGPU環境で動かしたい開発者・研究者
- モデルをカスタマイズして、自社の映像スタイルに合わせた生成を行いたいチーム
- ナレーションに合わせて話す人物動画(アバター・説明動画)を作りたい人
- 動画内に日本語を含む多言語のテキストを崩さず入れたい制作者
- まずはブラウザやスマホアプリで、テキストから動画を作る体験を試してみたい人
まとめ
Wanは、映画品質の動画生成を狙ったAlibaba Cloudのモデル群であり、その重みをApache 2.0で公開している点が最大の特色である。手軽に試したい人はWebアプリやスマホアプリから、業務に組み込みたい開発者はクラウドAPIから、自前で自由に扱いたい研究者はオープンソース版から、と目的に応じた入り口を選べる。一方でWeb版の料金は公式サイトで随時確認する必要があり、セルフホストには相応のGPU資源が要る。まずは無料で触れる範囲で生成品質を確かめ、用途が固まってからAPIやセルフホストへ広げていくのが現実的な進め方である。