Jamie Pine氏が開発するオープンソース(MIT ライセンス)のAI音声スタジオ。数秒の音声サンプルから声をクローンして読み上げさせる「出力側」と、グローバルホットキーでどのアプリにも話しかけて文字入力する「入力側」を、1つのデスクトップアプリにまとめている。ElevenLabsとWisprFlowの機能をまとめて置き換えることを狙った設計で、モデルも音声データもすべて自分のマシン上で動くため、クラウドに音声を送らずに済む。Tauri(Rust)製のネイティブアプリで、macOS・Windows・Linuxに対応する。
主な特徴
- 7種類のTTSエンジンを切り替えて使える: Qwen3-TTS、Qwen CustomVoice、LuxTTS、Chatterbox Multilingual、Chatterbox Turbo、HumeAI TADA、Kokoroを生成ごとに選択できる。多言語ならChatterbox Multilingual(23言語)、軽さ重視ならLuxTTS、プリセット音声ならKokoro、といった使い分けができる
- 数秒のサンプルからの音声クローン: 参照音声を1つ与えるだけのゼロショットクローンに対応。KokoroとQwen CustomVoiceには50以上のプリセット音声も用意されており、自分の声を用意しなくても始められる
- どのアプリにも話しかけられるディクテーション: グローバルホットキーを押しながら話すと、macOSではフォーカス中のテキストフィールドに文字起こしが直接入る。文字起こしはOpenAI Whisper(Turbo含む)をローカル実行する。録音と文字起こしはすべて「Captures」タブに残り、再文字起こしや音声プロフィールへの流用ができる
- AIエージェントに声を持たせるMCPサーバー: アプリに Model Context Protocol サーバーが内蔵されており、Claude Code・Cursor・Windsurf などのエージェントが
voicebox.speakを呼ぶだけでクローンした声で話しかけてくる。REST API(POST /speak、/generate、/transcribeなど)も同じポートで公開される - Storiesエディタとエフェクトパイプライン: 複数話者の会話やポッドキャストを組み立てるマルチトラックのタイムラインエディタを搭載。生成後にはピッチシフト・リバーブ・ディレイ・コンプレッサーなど8種のエフェクト(Spotifyのpedalboardを使用)をかけ、プリセットとして保存できる
- 長文の自動分割生成: 文の境界で自動的にチャンク分割し、クロスフェードでつないで書き出す。最大5万文字までのテキストを扱え、記事や章単位の読み上げにも耐える
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| オープンソース版(唯一の提供形態) | $0 | 全機能を無償で利用可能。MIT ライセンスのため商用利用・改変・再配布も可 |
推論はすべて自分のマシンで動くため、サービス利用料は発生しない代わりに、GPU・メモリなどのハードウェアが実質的なコストになる。macOS(Apple Silicon)はMLX/Metal、WindowsのNVIDIA GPUはCUDA、AMDはROCm、Intel ArcはIPEX/XPUで加速し、CPUのみでも動作する(速度は落ちる)。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 音声データもモデルもマシンの外に出ないため、社外に出せない音源や個人の声を扱いやすい
- 従量課金や文字数制限がなく、長尺の読み上げを何度作り直しても追加費用がかからない
- 音声出力(TTS)と音声入力(ディクテーション・文字起こし)が1つのアプリに揃っており、ツールを行き来しなくて済む
- MCPとREST APIが標準搭載で、エージェントや自作スクリプトへの組み込みが容易
- MIT ライセンスのオープンソースで、エンジンの追加や改造も許容されている
⚠️ デメリット
- モデルのダウンロードとGPU設定が必要で、クラウドサービスのように「開いてすぐ使う」わけにはいかない
- 生成速度は手元のマシン性能に依存する。CPUのみの環境では実用速度が出ないエンジンもある
- ディクテーションの自動ペーストは現時点でmacOSのみ対応(Windows・Linuxはロードマップ段階)
- Linux向けのビルド済みバイナリは提供されておらず、ソースからのビルドが必要
- 感情タグ(
[laugh]・[sigh]など)を解釈するのはChatterbox Turboのみで、他のエンジンは文字として読み上げてしまう
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Voicebox | ElevenLabs | WisprFlow | OpenAI Audio API |
|---|---|---|---|---|
| 実行場所 | ローカル | クラウド | クラウド | クラウド |
| 音声出力(TTS) | 対応(7エンジン) | 対応 | 非対応 | 対応 |
| 音声入力(文字起こし) | 対応(Whisper) | 対応 | 対応(主機能) | 対応 |
| 音声クローン | 対応(ゼロショット) | 対応 | 非対応 | 限定的 |
| 料金体系 | 無料・オープンソース | サブスクリプション | サブスクリプション | 従量課金 |
| ライセンス | MIT | プロプライエタリ | プロプライエタリ | プロプライエタリ |
こんな人におすすめ
- 音声データを外部サービスにアップロードできない環境で、読み上げや文字起こしを使いたい人
- ナレーションやポッドキャストを大量に作り、従量課金の上限を気にしたくない制作者
- Claude CodeやCursorなどのエージェントに、作業完了を声で知らせてほしい開発者
- キーボード入力より話す方が速く、どのアプリでも音声入力を使いたい人
- 自分でエンジンを追加・改造したいオープンソース志向のユーザー
まとめ
Voiceboxは、これまでElevenLabs(出力)とWisprFlow(入力)に分かれていた音声の入出力を、ローカル実行のデスクトップアプリ1本にまとめたツールである。MIT ライセンスで無償、従量課金もなく、MCPサーバー経由でAIエージェントに声を持たせられる点が大きな特徴になる。一方でモデルのダウンロードやGPU環境の準備は自分で行う必要があり、手軽さではクラウドサービスに及ばない。プライバシーとコストを重視するなら第一候補になりうるので、まずは自分のマシンで軽量なLuxTTSやKokoroを試し、必要に応じて重いエンジンへ広げていくとよい。