Google Cloud上で生成AIアプリケーションを開発するための統合環境。ブラウザ上でプロンプトを書いて即座に試し、そのままモデルのチューニング・評価・本番デプロイまで一本の流れでつなげられるのが特徴で、GoogleのマルチモーダルモデルGeminiをはじめ多数のモデルを同じ画面から扱える。もともと「Vertex AI Studio」という名称で提供され、2026年のGoogle Cloud Next以降はプラットフォーム全体が「Gemini Enterprise Agent Platform」へと改称され、Studioはその中のプロンプト実験・開発コンソールという位置づけになっている。個人の検証から企業システムへの組み込みまで、同じ基盤の上で段階を上げていける点が他のAIツールとの一番の違いといえる。
主な特徴
- プロンプトを書いてすぐ試せるStudio: テキスト・画像・音声・動画を入力に取れるマルチモーダルなプロンプト画面で、温度やトークン上限などのパラメータを変えながら出力を比較できる。仕上がったプロンプトはPythonやcurlなどのコードとして書き出せるため、そのままアプリに移植しやすい
- 多数のモデルを同じ場所から選べるModel Garden: Gemini系のほか、Googleの各種基盤モデルやサードパーティ・オープンソースのモデルをカタログから選び、同じインターフェースで試せる。用途とコストに応じてモデルを差し替える運用がしやすい
- チューニングと評価が組み込み: 自社データによるチューニングと、出力品質を指標で比べる評価機能をプラットフォーム側に持つ。「なんとなく良さそう」ではなく数値で比較しながらモデルを選定できる
- エージェント構築の一式が揃う: 低コードのAgent Studio、コードで組むためのAgent Development Kit(ADK)、本番稼働させるためのAgent Engineといった構成要素が同じプラットフォーム上に用意され、試作したエージェントを運用まで持っていける
- Google Cloudの基盤に乗る: IAMによる権限管理、監査ログ、リージョン選択、BigQueryなど他のGoogle Cloudサービスとの連携が前提になっており、企業のセキュリティ要件やデータ基盤に組み込みやすい
- 課金なしで試せるExpressモード: 請求先アカウントを有効にしなくてもStudioやエージェント構築を試せる入口が用意されており、最初の一歩の敷居は低い
料金
| 区分 | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 無料トライアル | $0(新規アカウントに$300分のクレジット、90日間) | Google Cloud全体で使えるクレジット。Agent Platformの各機能も対象 |
| Expressモード | $0 | 請求先アカウントを有効にせずにStudio・エージェント構築を試せる入門枠。利用量に上限あり |
| 従量課金 | 使った分だけ | 月額固定のサブスクリプションはなく、モデル別のトークン単価・実行時間・クエリ数などに応じた課金 |
| エンタープライズ契約 | 要問い合わせ | 大規模利用時のコミットメント割引やサポート契約 |
モデルのトークン単価はモデルごとに大きく異なり、軽量モデルでは100万トークンあたり数十セント台から、高性能モデルではその十倍以上になる。エージェントを常時稼働させる場合は、トークン課金に加えてランタイム(vCPU時間・メモリ時間)や検索クエリ数の課金も積み上がる点に注意したい。実際の見積もりは対象モデルと想定リクエスト数を決めてから公式の料金ページで確認するのが確実。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- プロンプト実験からチューニング・評価・本番デプロイまで、環境を移らずに一貫して進められる
- Geminiを含む多数のモデルを同じ画面で比較でき、用途とコストに合わせて選び直しやすい
- IAM・監査ログ・リージョン指定など、企業利用で求められる統制が最初から揃っている
- BigQueryやCloud Storageなど既存のGoogle Cloud資産とつなぎやすい
- 従量課金なので、小さく始めて必要な分だけ広げられる
⚠️ デメリット
- Google Cloudのプロジェクト・課金・権限の概念を理解している必要があり、チャットツールに比べると初期の学習コストが高い
- 従量課金は上限が見えにくく、想定外の利用量でコストが膨らむリスクがある。予算アラートの設定が実質必須
- 機能とサービス名の刷新が速く、ドキュメントや過去記事の名称が現行のUIと一致しないことがある
- 単に文章生成を使いたいだけの個人には過剰な構成になりやすい
- モデルや機能によって利用できるリージョンが限られる場合がある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Agent Platform (Vertex AI Studio) | Google AI Studio | Amazon Bedrock | Azure AI Foundry |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Amazon Web Services | Microsoft | ||
| 主な想定用途 | 企業システムへの組み込み・エージェント運用 | 個人・小規模の素早い試作 | マネージドな基盤モデル利用 | Azure上でのAIアプリ開発 |
| 扱えるモデル | Gemini+多数の基盤モデル・OSSモデル | Gemini中心 | Anthropic・Meta等の複数ベンダー | OpenAI系+複数ベンダー |
| チューニング・評価 | プラットフォーム内で対応 | 限定的 | 対応 | 対応 |
| 課金 | 従量課金(クラウド課金に統合) | 無料枠+API従量課金 | 従量課金 | 従量課金 |
同じGoogleでも、手軽に試すだけならGoogle AI Studio、運用と統制まで含めて業務システムに載せるならAgent Platform、という住み分けになる。
こんな人におすすめ
- 生成AIを試作で終わらせず、社内システムやプロダクトに組み込むところまで進めたい開発者
- 複数のモデルを比較して、品質とコストのバランスで選定したいチーム
- 権限管理・監査ログ・データの保存場所といった統制要件を満たす必要がある企業のIT部門
- すでにBigQueryやCloud Storageなど、Google Cloud上にデータ基盤を持っている組織
- 低コードとコードの両方でAIエージェントを組み立てたいエンジニア
まとめ
Agent Platform (Vertex AI Studio) は、Geminiをはじめとする多数のモデルを、実験から本番運用まで同じ基盤で扱える生成AI開発環境である。チャット型のAIツールと比べると導入の敷居は高いが、権限管理や評価・チューニングまで含めて「業務で運用できる形」に持っていける点が最大の価値になる。まずは無料クレジットやExpressモードでStudioのプロンプト画面を触り、扱いたいモデルと想定リクエスト数が固まった段階で、公式の料金ページを見ながらコスト設計に進むとよい。なお2026年に入ってプラットフォーム名が「Gemini Enterprise Agent Platform」へ改称されているため、情報を調べる際は記事の公開時期にも注意したい。