Vercelがプラットフォームに組み込んだAIエージェント。デプロイ・ログ・メトリクス・設定・接続済みリポジトリといったVercel側の文脈をそのまま材料に使えるのが最大の特徴で、本番アプリの異常を自ら調査したり、プルリクエストをレビューしたりできる。2025年10月に発表され、その後もチャットやSlack連携などが追加されてきた。提案するコード修正は安全なSandbox内で実際のビルド・テスト・リンターを通してから提示されるため、的外れな指摘が混ざりにくい。2026年8月時点ではPro/Enterpriseチーム向けのパブリックベータとして提供されている。
主な特徴
- Code Review(PRレビュー): プルリクエストが作成されたときや、開いているPRにコミットが積まれたときに自動でレビューが走る。差分だけでなくコードベース全体を文脈として読み、セキュリティ上の問題・ロジックの誤り・パフォーマンスの懸念を指摘する
- Sandbox検証済みの修正提案のみを表示: 修正パッチを生成したうえで、安全なSandbox上でそのプロジェクト本来のビルド・テスト・リンターを実行する。チェックを通ったものだけがPRに現れ、ワンクリックで適用できる
- Investigations(異常アラートの自動調査): 異常検知アラートが発火すると、その前後のログとメトリクスを照会し、パターンや関連するエラーを突き合わせて原因の候補をまとめる。結果はダッシュボードのObservability→Alertsから確認でき、分析中はストリーミング表示される
- 既存のAIルールファイルをそのまま読む:
AGENTS.md・CLAUDE.md・.cursor/rules/*.mdc・.windsurfrulesなど主要なコーディングガイドラインを自動検出し、レビューの文脈として使う。親ディレクトリのルールは継承され、合計50KBまでが読み込まれる - PRコメントから
@vercelで呼び出せる: 自動レビューとは別に、PRのコメントで@vercel run a review(再レビュー)、@vercel fix the type errors(修正の実装とコミット)、@vercel why is this failing?(原因調査)のように依頼できる。返信は同じスレッドに付く - 既定は読み取り専用: 書き込みが必要な作業では、範囲を絞った計画を提示して承認を待つ。承認後に直接変更するか、プルリクエストを開くかは作業内容によって分かれる
- チャットとInstallation: ダッシュボードとSlackから自然文で質問でき、Web AnalyticsやSpeed Insightsなど対応プロダクトの導入をリポジトリ解析からPR作成まで任せることもできる
料金
Vercel Agentは座席課金ではなく、実際に使ったトークン量に応じた従量課金である。プロバイダーの推論コストが上乗せなしの原価で請求され、これに「Vercel Token Rate」として100万トークンあたり$0.25が加算される。
| 機能 | 含まれる利用枠 | 追加分の料金 |
|---|---|---|
| チャット(ダッシュボード / Slack) | ベータ期間中、簡単なリクエストを一定数まで | 推論コスト(原価)+$0.25/100万トークン |
| Code Review | なし | 推論コスト(原価)+$0.25/100万トークン |
| Investigations | Observability Plusに月10回分 | 推論コスト(原価)+$0.25/100万トークン |
| Installation | 無料 | 導入したプロダクト自体の利用料は別途 |
利用対象はPro/Enterpriseチーム(パブリックベータ)。Vercel Token Rateは入力・出力・キャッシュのいずれのトークンにもかかり、プロジェクトの文脈収集やモデルのルーティング、実行基盤のコストをまかなうものとされている。使用量と費用はダッシュボードのAgent→Usageで機能別に確認でき、残高の自動チャージや月間の上限額も設定できる。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- ログ・メトリクス・デプロイ履歴・設定といったプラットフォーム側の情報にそのままアクセスできるため、外部ツールでは組み立てにくい文脈を最初から持っている
- 提案が実際のビルド・テスト・リンターを通過したものに絞られるので、AIレビュー特有のノイズが少ない
- 座席課金がなく、チーム人数が増えても固定費が跳ね上がらない
- 既存の
AGENTS.md・CLAUDE.mdなどをそのまま使えるので、レビュー用に別のルールを書き直す必要がない - 既定が読み取り専用で、書き込みは承認制。エージェントに勝手に触られる心配が小さい
⚠️ デメリット
- Vercelにデプロイしているプロジェクトが前提であり、他のホスティングを使うチームには恩恵が薄い
- 2026年8月時点でパブリックベータであり、Hobbyプランでは使えない
- 従量課金のため、大きなPRが続くと費用が読みにくい(上限設定での自衛が前提になる)
- Investigationsの無償枠はObservability Plusの契約が前提で、10回/請求サイクルと控えめ
- 調査結果はあくまで原因の候補であり、最終的な判断と修正の責任は開発者側に残る
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Vercel Agent | GitHub Copilot Code Review | CodeRabbit | Sentry |
|---|---|---|---|---|
| 主な役割 | PRレビュー+本番異常の調査 | PRレビュー | PRレビュー | エラー監視と原因分析 |
| 実行環境の検証 | Sandboxでビルド・テスト・リンターを実行 | 静的な解析中心 | 静的な解析中心 | 実行時のエラーデータが中心 |
| 本番ログ・メトリクス参照 | あり(Vercelの Observability) | なし | なし | あり(自社の監視データ) |
| 前提プラットフォーム | Vercelへのデプロイ | GitHub | GitHub / GitLab等 | 言語・基盤を問わない |
| 課金の形 | トークン従量(座席課金なし) | Copilotの座席課金 | 座席課金が中心 | イベント量に応じた従量 |
こんな人におすすめ
- すでにVercelで本番運用していて、障害調査とコードレビューを同じ文脈のまま片付けたいチーム
- AIレビューを試したが指摘のノイズが多くて定着しなかった、という経験のある開発チーム
- 人数分の座席課金を避けたい、メンバーの増減が多いチーム
- 深夜のエラー急増アラートに対して、まず原因の当たりをつけておいてほしい少人数の運用チーム
AGENTS.mdやCLAUDE.mdでコーディング規約をすでに整備している開発者
まとめ
Vercel Agentは、コードレビューと本番監視という別々に扱われがちな作業を、同じプラットフォームの文脈でつなぐエージェントである。Sandbox検証を挟んで提案を絞り込む設計は、AIレビューが敬遠されがちな「指摘が多すぎて読まなくなる」問題への現実的な答えになっている。一方でVercel前提であること、パブリックベータであること、従量課金であることは把握しておきたい。すでにVercelを使っているなら、まずCode Reviewだけを有効にして費用と指摘の質を見てから、Investigationsまで広げる進め方が扱いやすい。