米国のVellum AIが2023年から提供しているAIエージェント/LLMアプリ開発プラットフォーム。プロンプトの管理とバージョン管理、ワークフローのオーケストレーション、評価(eval)、RAG、デプロイ、本番監視までを一つの環境に統合している。ビジュアルなワークフロービルダーとPython/GoのSDKの両方が用意されており、非エンジニアの担当者とエンジニアが同じ定義を共有しながら開発を進められる点が特徴。SlackやNotion、HubSpotなど1000以上のツールと連携でき、ヘルスケアから金融まで幅広い業界で使われている。加えて近年は、常駐型の個人向けAIアシスタント「Vellum Assistant」(オープンソース)も並行して展開している。
主な特徴
- プロンプト管理とバージョン管理: プロンプトを一箇所で管理し、変更履歴・比較・ロールバックを扱える。複数のLLMプロバイダーを差し替えながら同じプロンプトを検証できる
- ビジュアルなワークフロービルダー: LLM呼び出し・分岐・ツール実行などをノードでつないでエージェントの処理フローを組み立てられる。ノーコードUIとコード定義が同じ内容を指すため、担当者間で認識がずれにくい
- 評価(eval)と回帰テストの内蔵: テストケース群に対してワークフローを一括実行し、精度や出力の妥当性を数値で比較できる。プロンプトを変えたときの劣化を、本番に出す前に検知できる
- RAG(検索拡張生成): ドキュメントのインデックス化とセマンティック検索を備え、自社データを参照させるエージェントを組める
- 本番監視とトレース: ノード単位のトレースからワークフロー全体のダッシュボードまで、稼働中のエージェントの挙動を追える。スケジュールトリガーによる定期実行にも対応
- 1000以上のツール連携: Slack、Notion、HubSpotなど業務ツールと接続し、社内フローに組み込める
- 柔軟なデプロイ先: クラウド利用のほか、上位プランではVPCやオンプレミスでの稼働にも対応する
料金
Vellumは開発プラットフォームと個人向けアシスタントで料金体系が分かれている。
Vellumプラットフォーム(開発向け)
| プラン | 月額料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 1ユーザー、少量のクレジットで試用 |
| Pro | $25 | 1ユーザー、ビルダー用クレジットの拡大 |
| Business | 1ユーザーあたり$79 | 少人数チーム向け、クレジット枠の拡大 |
| Enterprise | 要問い合わせ | クレジット無制限、RBAC・SSO・環境分離、VPCインストール、専任サポート |
Vellum Assistant(個人向けアシスタントのホスティング)
| プラン | 月額料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 無料クレジット | $0 | 初回分のタスクは無料 |
| Mighty | $30 | 1 vCPU / 2 GiB RAM、10 GBストレージ |
| Super | $100 | 2.5 vCPU / 5 GiB RAM、30 GBストレージ、独自サブドメイン |
| Ultra | $200 | 4 vCPU / 8 GiB RAM、60 GBストレージ、独自サブドメイン |
AIの応答やWeb検索、画像生成などの実行分は「$1=1クレジット」の従量課金として加算される。アシスタント側はオープンソース版をセルフホストする選択肢もある。
料金は2026年8月時点の情報です。プラン構成は変更されることがあるため、最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- プロンプト管理・ワークフロー・評価・監視が一つにまとまっており、複数のツールを継ぎ足さずに済む
- 評価と回帰テストが標準で入っているため、プロンプト変更による品質劣化を出す前に気付ける
- ノーコードUIとSDKが同じ定義を共有し、非エンジニアとエンジニアの分業がしやすい
- VPC・オンプレミス対応があり、データの持ち出しに制約がある業界でも検討しやすい
- 無料プランがあり、小さく試してから広げられる
⚠️ デメリット
- クレジット制の従量課金が加わるため、利用量が読みにくいうちはコストの見積もりが立てにくい
- 機能が広いぶん、プロンプト管理だけ・監視だけといった単機能の用途にはやや重い
- チーム利用のBusinessプランは1ユーザーあたりの単価が高めで、人数が増えると負担が大きい
- 開発プラットフォームと個人向けアシスタントの2系統があり、初見ではどちらの製品情報を見ているのか混乱しやすい
- 日本語での公式情報・事例はまだ少なく、ドキュメントは英語が中心
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Vellum | LangSmith | Dify | n8n |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Vellum AI | LangChain | LangGenius | n8n GmbH |
| 主な用途 | エージェントの構築・評価・運用 | LLMアプリの監視・評価 | LLMアプリ/エージェント構築 | 汎用ワークフロー自動化 |
| ビジュアルUI | あり(ワークフロービルダー) | 限定的 | あり | あり |
| 評価機能 | 標準搭載 | 得意領域 | あり | 非搭載(LLM評価は対象外) |
| セルフホスト | 上位プランでVPC・オンプレ対応 | 有償プランで対応 | オープンソース版で可 | オープンソース版で可 |
| 無料で試せるか | 無料プランあり | 無料枠あり | 無料(セルフホスト) | 無料(セルフホスト) |
こんな人におすすめ
- プロンプトをスプレッドシートやコード内に散らかしたまま運用していて、管理を一本化したいチーム
- LLMの出力品質を感覚ではなく数値で評価し、変更前後の比較を仕組みとして持ちたい開発者
- 企画・業務担当者がワークフローを組み、エンジニアが仕上げるという分業体制を作りたい組織
- 社内データを参照するRAGエージェントを、監視込みで本番運用したい担当者
- データの取り扱いに制約があり、VPCやオンプレミスでの稼働を前提に検討している企業
まとめ
Vellumは、プロンプト管理・ワークフロー・評価・RAG・監視という「LLMアプリを本番で回すために必要な要素」を一つの製品にまとめたプラットフォームである。個々の機能はそれぞれ専用ツールが存在するが、それらを継ぎ合わせずに済むこと、そして評価と回帰テストが最初から組み込まれていることが選ぶ理由になりやすい。まずは無料プランでワークフローを1本組み、評価機能を通してみると、自分たちの開発フローに合うかどうかが判断しやすい。