Typeless は「話すだけで、タイプしたように読める文章に」をコンセプトにした AI 音声入力ツールである。従来の音声入力は話した言葉をそのまま文字にするため、「えーと」「あの」といったフィラーワードや、途中で言い直した箇所がそのまま残り、あとから手直しが必要だった。Typeless はこれを AI 側で処理し、フィラーの除去・言い直しの反映・リストや手順の自動構造化までを行ったうえでテキストを出力する。公式サイトではタイピングの約 4 倍の速さで書けるとうたっている。macOS / Windows / iOS / Android に対応し、Microsoft Office、Google Workspace、Slack、Notion、ChatGPT、VS Code など 60 以上のアプリ上で使える。提供元は Simply CA LLC(米国)で、2025 年 11 月に公開された。
主な特徴
- フィラーワードと言い直しの自動除去: 「えーと」「あの」のような言いよどみを取り除き、話している途中で言い直した場合も、最終的に言いたかった内容だけを文章に反映する。録音をそのまま文字起こしするツールとの一番大きな違いがここにある
- リスト・手順の自動構造化: 「まず〜、次に〜、最後に〜」のように話すと、箇条書きや番号付きリストとして整形される。メモや手順書を口頭で作るときに、あとから整える手間が減る
- アプリごとの文体自動調整: 入力先のアプリを見て文体を切り替える。Slack ではカジュアルに、メールやドキュメントでは整った書き言葉に、といった調整が自動で入る
- 話し方の学習とパーソナル辞書: 使い込むほどユーザーの語彙や言い回しを学習する。固有名詞・専門用語・社内用語はパーソナル辞書に登録しておくと正しく変換される
- 100 以上の言語とリアルタイム翻訳: 言語の自動検出に対応し、複数言語を混ぜて話しても処理できる。日本語で話して英語で出力する、といった翻訳的な使い方もできる
- 選択テキストへの音声編集: 既存の文章を選択した状態で「もっと短く」「箇条書きにして」のように話すと、その指示に沿って書き換えられる
- プライバシー重視の設計: 端末側での処理を基本とし、音声データをクラウドに保持しない方針を掲げる。デバイス間の履歴同期は暗号化され、データをモデルの学習に使わないとしている。ISO 27001 認証、GDPR / HIPAA 対応をうたう
- ウィスパーモード: 小さな声・ささやき声でも認識する。オフィスやカフェなど、声を出しにくい場所での利用を想定した機能
料金
| プラン | 料金 | 利用量 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | 週 8,000 語まで | 標準精度、フィラー除去、翻訳、パーソナル辞書、100 以上の言語、ウィスパーモード |
| Pro | 年払いで月額 $12 相当 / 月払い $30 | 無制限 | Free の全機能に加え、精度向上、混雑時の優先アクセス、デバイス間のクラウド同期、新機能への早期アクセス |
| Enterprise | 要問い合わせ | 無制限 | Pro の全機能に加え、SSO、SCIM によるユーザープロビジョニング、ドメイン認証、保持期間を設定できる監査ログ、HIPAA 対応の強制適用と BAA、ボリュームディスカウント、優先サポート |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
チーム利用向けのメンバー管理・請求のとりまとめ・利用状況の分析といった機能も有料プランに含まれるとされているが、どのプランに紐づくかは公式サイトの記載だけでは判別しにくい。チーム導入を検討する場合は問い合わせで確認するのが確実である。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 話した内容をそのまま文字にするのではなく、読める文章に整えた状態で出力されるため、あとからの手直しがほとんど不要になる
- 対応アプリが 60 以上あり、メール・チャット・ドキュメント・エディタと入力先を選ばず同じ操作で使える
- 無料プランでも週 8,000 語まで主要機能を試せるので、自分の話し方に合うかを費用をかけずに判断できる
- 音声データをクラウドに保持しない設計で、業務利用時の情報の取り扱いに配慮している
- 日本語を含む 100 以上の言語に対応し、多言語が混ざる環境でも使いやすい
⚠️ デメリット
- 月払いだと $30 と、音声入力ツールとしては安くない。実質的には年払い前提の価格設定になっている
- 無料プランの週 8,000 語は、日常的に音声で書く使い方だと早い段階で足りなくなる
- AI が文章を整える性質上、話した内容と出力が完全に一致するとは限らない。議事録のように発言をそのまま残したい用途には向かない
- 2025 年 11 月公開と新しく、公式 FAQ でもベータ・早期アクセスの位置づけとして案内されている段階のため、機能や仕様が変わる可能性がある
- 専門用語や固有名詞は、パーソナル辞書に登録するまで誤変換が起きうる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Typeless | Wispr Flow | superwhisper | OS 標準の音声入力 |
|---|---|---|---|---|
| 主な用途 | AI で整形済みの文章を音声入力 | AI で整形済みの文章を音声入力 | ローカル処理中心の音声入力 | そのまま文字起こし |
| フィラー・言い直しの処理 | 自動除去・自動反映 | 自動除去 | モード設定により対応 | 非対応 |
| 対応 OS | macOS / Windows / iOS / Android | macOS / Windows / iOS | macOS 中心 | 各 OS 標準 |
| 音声データの扱い | 端末処理中心、クラウド保持なしをうたう | クラウド処理あり | ローカルモデルでオフライン処理が可能 | OS の仕様に依存 |
| 料金 | 無料枠あり、Pro は年払いで月額 $12 相当 | 無料枠あり / 有料プラン | 買い切り / サブスクリプション | 無料 |
競合と比べたときの Typeless の位置づけは、モバイルを含む 4 プラットフォーム対応と、アプリごとの文体調整・言い直しの反映といった「整形の細かさ」にある。逆に、完全オフラインで動かしたい・音声を一切外に出したくないという要件が最優先なら、ローカルモデルを使うタイプのツールのほうが条件に合う場合がある。
こんな人におすすめ
- メールやチャットの返信量が多く、タイピングの時間を削りたい人
- 考えながら話して、そのままメモや下書きに落としたい人(思考の速度に手を追いつかせたい人)
- 手や肩の負担を減らしたい、長時間のタイピングがつらい人
- 日本語と英語を行き来する環境で、言語をまたいで音声入力したい人
- 移動中や歩きながらなど、キーボードに向かえない時間に文章を書きたい人
- 音声データの取り扱いに配慮が必要な業務で、音声入力を導入したいチーム
まとめ
Typeless は、音声入力の一番のネックだった「話し言葉のまま出てきてしまう」問題を、AI 側の整形で解いたツールである。フィラーの除去、言い直しの反映、リストの自動構造化、アプリごとの文体調整までを自動で行うため、出力された時点で人に見せられる文章に近い。無料プランで週 8,000 語まで試せるので、まずは普段よく書くメールやチャットで自分の話し方との相性を確かめ、手直しの量が実際に減るかを見てから有料プランを検討するとよい。一方で、発言をそのまま残したい議事録用途や、完全オフラインでの利用が必須の場合は、別のタイプのツールを検討したほうがよい。