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Trigger.dev ─ タイムアウトなしでAIワークフローとバックグラウンド処理をTypeScriptで動かすオープンソース基盤

英国の API Hero Ltd. が開発するオープンソースの開発プラットフォーム。TypeScript で書いた関数をそのまま「バックグラウンドタスク」としてデプロイでき、自動リトライ・キュー・スケジュール実行・リアルタイム監視といった、本番運用に必要な仕組みが最初から揃っている。最大の特徴は実行時間の上限がないこと。Vercel や AWS Lambda のようなサーバーレス環境では数十秒〜数分でタイムアウトしてしまう長時間処理を、そのまま走らせられる。AI エージェントのように「LLM を何度も呼び、途中で人間の承認を挟み、数十分かかる」ような処理と相性がよい。2022 年の公開以来、Cal.com や Supabase などのプロダクトで採用されている。

主な特徴

  • タイムアウトのない実行: タスクの実行時間に上限がなく、無料プランでも制限されない。動画のエンコード、大量データの取り込み、長く続く AI エージェントの推論ループなど、サーバーレスの制限に引っかかる処理を素直に書ける
  • TypeScript のコードがそのままタスクになる: 独自の DSL や YAML を覚える必要はなく、関数を定義してデプロイするだけ。Next.js・Remix・Nuxt・SvelteKit・Astro などのフレームワークや、Vercel・AWS・Supabase といったサービスと組み合わせて使える。Python 実行のサポートもある
  • 自動リトライとキュー制御: 失敗したタスクは設定に応じて自動で再試行され、同時実行数の上限やキューの優先度も指定できる。外部 API のレート制限に合わせて流量を絞る、といった調整がコード側で完結する
  • Waitpoint(人間の承認待ち): 実行を途中で止め、承認や外部からの HTTP コールバックを待ってから再開できる。AI が実行する前に人間が確認する「human-in-the-loop」のワークフローを、状態管理を自作せずに組める
  • Realtime でフロントエンドに状態を流す: 実行中のタスクの進捗や LLM の生成結果を、フロントエンドへストリーミングで届けられる。ページを再読み込みしたりデプロイが挟まっても接続が続く設計になっている
  • ダッシュボードでの可観測性: 実行ごとのトレース・ログ・バージョン・アラートを管理画面で確認できる。OpenTelemetry で外部の監視ツールへ送ることも可能
  • オープンソースとセルフホスト: Apache 2.0 ライセンスで GitHub に公開されており、自前のインフラで動かせる。マネージドのクラウド版と使い分けられる

料金

プラン月額料金主な内容
Free$0月 $5 分のクレジット、同時実行 20、ログ保持 1 日、メンバー 5 人、スケジュール 10 件
Hobby$10月 $10 分のクレジット、同時実行 50、ログ保持 7 日、メンバー 5 人、スケジュール 100 件
Pro$50月 $50 分のクレジット、同時実行 200〜(追加は 50 ごとに $10)、ログ保持 30 日、メンバー 25 人〜、専用 Slack サポート
Enterprise要問い合わせPro の全機能に加え、ログ保持期間のカスタマイズ、SSO、権限管理、SOC 2 レポート、優先サポート

すべてのプランでタスクの実行時間は無制限。プラン料金に含まれるクレジットを超えた分は従量課金となり、計算リソースのサイズに応じた秒単位の料金と、実行 1 万回あたり $0.25 の起動料金がかかる。

料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。

メリット・デメリット

メリット

  • 実行時間の上限がないため、サーバーレスのタイムアウト回避のために処理を分割する、といった作り込みが不要になる
  • リトライ・キュー・スケジュール・監視といった「自分で作ると面倒な部分」が最初から揃っている
  • TypeScript の通常の関数として書けるので、学習コストが低く既存のコードベースに馴染ませやすい
  • オープンソースかつセルフホスト可能なため、特定ベンダーへの依存を避けたい場合にも選べる
  • 無料プランでも同時実行 20・タスク数無制限と、個人開発で試すには十分な枠がある

⚠️ デメリット

  • 中心は TypeScript / Node.js で、他言語が主体のプロジェクトには導入しづらい
  • クレジット超過分は従量課金のため、処理量が読みづらいうちはコストの見積もりが難しい
  • 無料プランのログ保持は 1 日と短く、後から障害を追う用途には向かない
  • セルフホストは自由度が高い反面、スケーリングや監視の運用を自分で抱えることになる
  • ダッシュボードやドキュメントは英語のみで、日本語の情報は多くない

類似サービスとの比較

比較項目Trigger.devInngestTemporalUpstash Workflow
主な用途AIワークフロー・バックグラウンドタスクイベント駆動のワークフロー長期実行の分散ワークフローサーバーレス上の長時間処理
主な言語TypeScript(Python 実行も可)TypeScript / Python / GoGo / Java / Python / TypeScript 等TypeScript / Python
セルフホスト可(Apache 2.0)可(OSS)不可(マネージドのみ)
実行時間の上限なしなしなしステップ単位で実行環境に依存
導入のしやすさ関数を書くだけ関数を書くだけ概念の学習コストが高い既存の関数に組み込む
無料枠ありありセルフホストは無料あり

こんな人におすすめ

  • サーバーレスのタイムアウトに悩まされている TypeScript / Next.js の開発者
  • LLM を複数回呼び出す長時間の AI エージェントやワークフローを、本番で安定して動かしたい人
  • 動画変換・大量データ処理・定期バッチなど、重い非同期処理をアプリ本体から切り離したい人
  • 人間の承認を挟むワークフローを、状態管理を自作せずに組みたい人
  • ベンダーロックインを避けたく、必要に応じてセルフホストへ移行できる選択肢を残しておきたいチーム

まとめ

Trigger.dev は、TypeScript で書いた処理を「落ちない・止まらない・見える」バックグラウンドタスクに変えるためのプラットフォームである。リトライやキューを自前で組む手間を省ける点は以前から有用だったが、AI エージェントのように実行が長く、途中で人間の判断を挟み、進捗をユーザーに見せたい処理が増えたことで、その価値はより分かりやすくなった。無料プランでも実行時間が無制限なので、まずは重い処理をひとつ移してみて、運用の手触りを確かめるとよい。

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