Tines 3Bは、アイルランド発のワークフロー自動化企業Tinesが2026年7月に公開した、AIネイティブな業務ワークフロー基盤である。自然言語のプロンプトからでもコードからでも、AIエージェント・社内アプリ・自動化ワークフローを同じ環境で構築・実行・監視できる。狙いは、現場の従業員がAIで作ってしまった正体不明の業務コード(Tinesが wild code と呼ぶ現象)を、IT・セキュリティ部門が把握できる統制下に取り込むことにある。セキュリティ自動化(SOAR)分野で知られる従来のTinesとは別建ての新プロダクトで、従来製品は「Tines Stories」と改称されて並行開発が続く。
主な特徴
- プロンプトでもコードでも構築できる: やりたい業務を普通の言葉で説明して作り始められる一方、生成物はノーコードの抽象レイヤーではなく実際のコードとして扱われる。Git連携とネイティブなブランチ機能が標準で、人の変更もAIの変更も追跡・レビューできる
- ステップ単位の隔離実行と認証情報の隠蔽: 各ステップが独立したコンピューターとして機能し、次のステップから完全に分離される。認証情報は透過プロキシ経由でランタイムに注入され、構築者にもAIにも見えず、コードにも保存されない
- 壊れる前に直す仕組みが組み込まれている: 構築中はTines 3B側がテストを提案してダミーデータを生成し、本番のデータやアプリを使う場面では実行前に確認を求める。稼働後はAutofixが異常や壊れそうな箇所を検知して修正案を出し、Autotuneが信頼性・性能・可読性の改善案をレビュー可能なブランチとして提案する
- Spaces・Skills・RBACによる統制: 用途ごとにコネクタ・権限を絞った「Space」を切り、LLMの振る舞いを揃える「Skill」で組織横断の一貫性を保つ。カスタムロールやSSOにも対応する
- コストと価値を測るダッシュボード: LLMプロバイダー・モデル別のAI支出、ワークフローごとの削減時間の見積もり、重複ワークフローの検出、依存パッケージの一覧を1画面で監視できる
- MCPで外部AIクライアントから操作: リモートMCPエンドポイントを備え、Claude Codeなどから接続できる。OAuthサインインなら作成・公開まで、サービスアカウントのトークンなら閲覧と実行までと、認証方式で権限が分かれる
料金
機能を個別に買い足すのではなく、プラットフォーム全体のライセンスを購入する方式。インフラ構成と実行容量でプランが分かれる。
| プラン | 位置づけ | 実行容量(Tines units / 月) |
|---|---|---|
| Explore | 無料の試用エディション | 5,000 TU(稼働ワークフロー3本まで、一度きりの$50分のAI利用枠、公開URLは不可) |
| Core | マルチテナント構成。中小規模向け | 150,000 TU |
| Scale | 専有スタック。大規模・性能重視向け | 300,000 TU |
| Power | プレミアムな専有スタック。最大規模向け | 600,000 TU |
- TU の定義: コンピュート・ストレージ・転送量を合成した独自の実行量指標
- 繰り越し不可: 毎月リセットされ、超過分は追加課金
- LLM 費用は別: Bring-Your-Own-Model(BYOM)方式で自社契約のモデルを使う
- 金額は非公開: 有料プランは問い合わせベース
メリット・デメリット
✅ メリット
- 非エンジニアが作ったものも含め、社内で乱立しがちな自動化を1つの環境に集約でき、IT・セキュリティ部門が全体を把握できる
- 認証情報が構築者にもAIにも露出せず、ステップごとに実行が隔離されるため、生成コードが暴走したときの影響範囲を閉じ込められる
- AI支出をモデル別に可視化でき、生成AI活用のコストが読めないという典型的な悩みに正面から答えている
- 既存のTines顧客は追加費用なしで試せるため、Tines Storiesを止めずに並行検証できる
⚠️ デメリット
- 想定読者が企業のIT・セキュリティ部門であり、個人利用や小規模チームには過剰な作りになりやすい
- 有料プランの価格が非公開で、導入コストの見積もりに商談が必要
- BYOM方式のため、別途LLMプロバイダーとの契約とそのコスト管理が前提になる
- 2026年7月に登場したばかりで、外部の導入事例や第三者レビューはまだ限られる
Tines Stories(従来のTines)との違い
| 比較項目 | Tines 3B | Tines Stories(従来のTines) |
|---|---|---|
| 位置づけ | AIネイティブな全社向けワークフロー基盤 | セキュリティ・IT運用向けのビジュアルデザイナー |
| 構築方法 | 自然言語 + コードファースト | ノーコードのビジュアル構築 |
| 想定ユーザー | 全部門の担当者 + IT・セキュリティ管理者 | セキュリティ・IT運用チーム |
| 今後 | 新規プロダクトとして開発中 | 並行して継続開発・サポート |
公式ブログによれば、2018年当時の前提で設計されたノーコード基盤の上にAIネイティブな体験を載せるのは無理があり、ゼロから作り直したという。既存顧客はTines Storiesを使い続けられ、追加費用なしでTines 3Bを試せるとされている。
こんな人におすすめ
- 全社的なAI活用を進めたいが、従業員が個別に作る自動化やAPIキーの扱いに歯止めがかからず困っているIT・セキュリティ責任者
- 部門ごとに散らばったAIエージェント・社内アプリ・自動化を1か所に集約し、棚卸しとコスト管理をしたい情報システム部門
- Claude Codeなどのコーディングエージェントから社内ワークフローを操作・監視したい開発者
- すでにTines Storiesを使っており、AIネイティブな次世代環境を評価したい既存ユーザー
まとめ
Tines 3Bは、「AIで誰でも作れる」ことを前提に置いたうえで、隔離実行・認証情報の秘匿・監査・コスト可視化を最初から組み込んだ業務ワークフロー基盤である。個人の効率化ツールというより、AI活用が先行して統制が追いつかない組織のための管理基盤に近い。無料のExploreエディションで構築体験を確かめられるので、社内のAI利用がすでに広がっている組織は小さな業務から試すとよい。従来のTines(Tines Stories)とは別物である点だけは、検討の入口で押さえておきたい。