Synthetic は、米国の Synthetic Lab, Co. が運営するオープンソースLLM のホスティングサービスである。GLM・Kimi・Qwen・GPT-OSS といった公開モデルを自社管理のデータセンターで動かし、OpenAI 互換/Anthropic 互換の API として提供する。最大の特徴は「ユーザーのデータを学習に使わず、API のプロンプトも応答も保存しない」と明言している点と、トークン単価ではなく月額 30 ドルの定額で使える点にある。Claude Code や OpenCode、Cline といった既存のコーディングエージェントの接続先を差し替えるだけで使えるため、商用モデルの従量課金が読めない開発者の受け皿になっている。
主な特徴
- オープンソースLLM をまとめてホスティング: Kimi K3(512k コンテキスト)、GLM 5.2、GLM 4.7 Flash、Qwen3.8 27B、GPT-OSS-120B、NVIDIA Nemotron-3 Super など、vLLM で動く主要な公開モデルを一つの API から利用できる。埋め込み用に Nomic Embed Text v1.5 も用意されている
- OpenAI 互換・Anthropic 互換の二本立て:
https://api.synthetic.new/openai/v1で OpenAI 形式の chat/completions・embeddings を、https://api.synthetic.new/anthropic/v1で Anthropic 形式の messages を受け付ける。既存コードは基本的にベース URL と API キーの差し替えだけで移行できる - モデルエイリアス: 具体的なモデル名の代わりに
syn:large:text・syn:small:textといった役割ベースの別名を指定できる。モデルが世代交代しても、アプリ側のコードを書き換えずに追従できる - 学習に使わない・保存しない設計: 公式は「ユーザーのデータで学習しない、API のプロンプトと応答を保存しない」と表明しており、GDPR 準拠のプライバシーポリシーを掲げている。社外に出せないコードを扱う場面で判断材料になる
- 定額サブスクリプション: トークン単価の積み上げではなく、月額の定額パックで使う。1 パックあたりのリクエスト上限が決まっており、足りなければパックを追加購入して同時実行数を増やせる
- 既存のエージェントツールにそのまま接続: Claude Code、OpenCode、GitHub Copilot、Cline、Roo、Octofriend、OpenClaw、Xcode Intelligence など、OpenAI 互換の接続先を設定できるツールから利用できる
- Synbad(評価スイート)を公開: 実際のコーディングエージェントで起きたバグを題材にした評価スイートをオープンソースとして公開しており、モデル選定の材料を外部に開いている
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| サブスクリプションパック | 月額 $30(または $1/日) | 5 時間あたり 500 リクエスト、モデルごとに同時実行 1、UI と API の両方を利用可。パックの追加購入で上限と同時実行数を拡張 |
| 従量課金(usage-based) | 要問い合わせ | 前払いなしの使った分だけの課金。大口・エンタープライズ向け |
埋め込み(embeddings)のリクエストはサブスクリプションのレート上限を消費しない扱いになっている。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 月額固定のため、コーディングエージェントを長時間回してもコストが読める
- 学習に使わない・プロンプトを保存しないという方針が明示されており、扱う情報に気を使う場面で選びやすい
- OpenAI 互換・Anthropic 互換の両方に対応するため、既存のツールやコードの改修がほぼ不要
- モデルエイリアスにより、モデルの入れ替わりにアプリ側が振り回されにくい
- 複数のオープンソースモデルを一つの契約・一つのキーで比較しながら試せる
⚠️ デメリット
- 提供されるのはオープンソースモデルのみで、GPT・Claude・Gemini といった商用フラッグシップモデルは使えない
- 標準では「モデルごとに同時実行 1」のため、並列度が要る用途ではパックの追加購入が前提になる
- 5 時間あたりのリクエスト上限があり、大量バッチ処理のような使い方には向かない
- 従量課金の単価は公開ページからは読み取れず、問い合わせが必要
- 日本語のドキュメントや日本国内サポートは用意されていない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Synthetic | OpenRouter | Together AI | Groq |
|---|---|---|---|---|
| 提供モデル | オープンソースLLM 中心 | 商用+オープンソースを横断 | オープンソース中心 | オープンソース中心 |
| 課金方式 | 月額定額が主軸(従量も可) | 従量課金 | 従量課金 | 従量課金 |
| API 互換 | OpenAI + Anthropic | OpenAI 互換 | OpenAI 互換 | OpenAI 互換 |
| 強み | コストの予測しやすさ、非保存の明示 | モデルの選択肢の広さ | モデル数とファインチューニング | 推論速度 |
| 向く用途 | エージェントの常用 | モデル比較・乗り換え | 学習・推論の両面 | 低レイテンシ用途 |
こんな人におすすめ
- Claude Code や Cline などのコーディングエージェントを毎日使い、従量課金の請求額が読めないことに困っている開発者
- 商用モデルに送りたくないコードやテキストを、学習・保存されない前提で処理したい人
- GLM・Kimi・Qwen といったオープンソースモデルの実力を、環境構築なしで横並びに試したい人
- OpenAI 互換の接続先を差し替えるだけで移行できる、軽い乗り換え先を探しているチーム
まとめ
Synthetic は、オープンソースLLM を「定額で」「学習にも保存にも使わない形で」提供することに振り切った API サービスである。商用フラッグシップモデルが必要な場面には向かないが、コーディングエージェントを日常的に回す用途では、月額固定というコスト構造そのものが価値になる。まずは月額 $30 のパックで、手元のエージェントの接続先を差し替えて、レート上限が自分の使い方に収まるかを確かめるとよい。