「9個開いたターミナルタブのうち、どれが鳴っているのか分からない」─そんな日常の苛立ちから生まれたデスクトップアプリが Solo である。米国の Try Hard Studios, LLC が2026年2月に公開したもので、Claude Code や Codex といった AIコーディングエージェントと、開発サーバー・ビルドウォッチャーなどの常駐プロセスを、ひとつのワークスペースにまとめて可視化する。Tauri 製のネイティブアプリで、Electron 系のツールに比べて軽い。公式サイトは「IDE ではない。意図的に」と明言しており、エディタやエージェントを置き換えるのではなく、その横で状態を束ねる役割に徹している。
主な特徴
- エージェントと開発プロセスを1画面に集約: エージェント、開発サーバー、ビルド、シェルセッションを同じダッシュボードに並べ、どれが動作中で、どれが入力待ちで、どれが落ちたのかを一目で判別できる。タブを順番に覗いて回る必要がなくなる
- 落ちたプロセスの自動再起動: 信頼済みとして登録したコマンドが予期せず終了した場合、Solo が自動で再起動する。開発サーバーが静かに死んでいて気づかない、という事故を防げる
- MCPサーバーとしてエージェントに状態を公開: Solo 自身が MCP(Model Context Protocol)サーバーとして振る舞い、ローカルの stdio 接続でプロセスの状態・ログ・プロジェクト情報をエージェントに渡す。エージェント側からプロセスの起動・停止・再起動や、ポートが開くまでの待機も指示できる
- ベンダーロックインなし: 特定の AI に縛られない。Claude Code、Codex、Gemini CLI、Copilot CLI、Kimi CLI などの CLIエージェントをワンクリックで接続でき、それ以外の任意のコマンドも登録できる
- 複数エージェントの協調作業: 共有 todo、Markdown のスクラッチパッド、ロック、タイマーを備え、1体のリードエージェントが複数のワーカーエージェントを同一プロジェクト内で統率する使い方に対応する
- 設定をリポジトリで共有:
solo.ymlをリポジトリにコミットしておけば、チームの誰が clone しても同じプロセス構成で立ち上がる - ネイティブターミナルとしての作り込み: GPU アクセラレーションによる描画、ANSI 対応、検索、クリック可能なリンクを備える
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Free | $0(無期限) | プロジェクト 4 件まで、プロセス合計 20 件まで。全機能・MCP連携を含む |
| Pro | 年額 $99 | プロジェクト・プロセス数の制限なし、3台まで有効化、優先メールサポート、30日間の返金保証 |
| Team | 1席あたり年額 $99〜 | 席数に応じて逓減(51席以上は 1席あたり年額 $69)。内容は Pro に準じる |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 複数のエージェントとプロセスの状態を1画面で把握でき、「どれが鳴っているか探す」時間がなくなる
- 特定の AIベンダーに縛られず、手元の CLIエージェントをそのまま活かせる
- Tauri 製で軽量。IDE をもう1つ立ち上げるほどの負荷にはならない
- MCP 経由でエージェント自身がプロセスの状態とログを読めるため、「サーバーが落ちています」と人間が伝える手間が減る
- 無料プランでも機能制限がなく、上限(4プロジェクト・20プロセス)の範囲なら本格的に使える
⚠️ デメリット
- 現時点の公開ビルドは macOS と Windows のみ。Linux は「近日対応」の段階
- 有料プランは年額のみで、月単位で試す形の課金は用意されていない
- エディタでも AI でもないため、これ単体では開発が完結しない。既存のツール群の上に足す性格のもの
- バージョンはまだ 0.x 台で更新が速く、設定や UI が変わる可能性がある
- 無料プランの上限(4プロジェクト・20プロセス)は、多数のリポジトリを並行で扱う人にはすぐ届く
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Solo | Warp | Conductor | tmux + iTerm2 |
|---|---|---|---|---|
| 位置づけ | プロセス/エージェントのダッシュボード | AI統合型の開発環境(ADE) | エージェントごとの隔離ワークスペース | 汎用のターミナル多重化 |
| AI の内蔵 | なし(外部の CLIエージェントを使う) | あり(自社のエージェント機能) | Claude Code / Codex を前提 | なし |
| 得意なこと | 常駐プロセスの監視・自動再起動・MCP連携 | ターミナルとエージェントの統合体験 | git worktree による並行作業と差分レビュー | 自由度の高いレイアウト |
| 対応OS | macOS / Windows(Linux は近日) | macOS / Windows / Linux | macOS | macOS / Linux |
| 料金 | 無料枠あり、Pro は年額 $99 | 無料枠あり/有料プラン | 無料枠あり/有料プラン | 無料(OSS) |
Warp はターミナル自体を AI 込みで作り替える方向に進んでおり、Conductor はエージェントごとに git worktree を切って隔離する設計。Solo はそのどちらとも重ならず、「すでに動いている自分のプロセス群をどう見張るか」に的を絞っている点が違いになる。
こんな人におすすめ
- Claude Code や Codex を日常的に使っていて、ターミナルタブが常時 5 個以上開いている開発者
- 開発サーバー・ワーカー・ビルドウォッチャーなど、落ちると困る常駐プロセスを複数抱えている人
- 複数のエージェントを並行で走らせ、どれが待機中でどれが終わったのかを把握したい人
- 特定の AIベンダーに寄せたくない、CLI中心のワークフローを持つ人
- チームで開発環境の立ち上げ手順を揃えたいが、重い共通 IDE は導入したくないチーム
まとめ
Solo は、AIエージェント時代に増えた「同時に動いているもの」を1枚のダッシュボードに集約するツールである。AI を内蔵しない代わりに、手元のどの CLIエージェントとも組み合わせられ、MCPサーバーとしてエージェント側にプロセスの状態を渡せる点が独自性になっている。無料プランでも機能制限がないため、まずは 4 プロジェクトの範囲で自分のワークフローに合うかを確かめ、扱うリポジトリが増えてきた段階で Pro を検討するのがよい。