Scale AIが開発・公開したAIエージェント構築フレームワーク。シンプルなチャットボットから完全自律型まで、必要な複雑さに応じてエージェントを組み立てられる。特徴は「長時間動き続ける非同期エージェント」を前提にした設計で、Temporalによる耐障害性のあるワークフロー、Redisを使ったストリーミングと永続的な状態管理を最初から備える。Docker Composeでのローカル開発から、Kubernetes上でのクラウド運用まで同じ構成で持ち上がる。2025年11月12日にApache 2.0ライセンスでオープンソース化され、Scale GenAI Platform(SGP)のエージェント基盤層としても提供されている。
主な特徴
- 5段階のエージェントレベル: 単純なチャットボット(L1)から完全自律型(L5)まで、目的に応じた雛形をCLIで生成できる。最初から複雑な構成を組む必要がなく、必要になった段階で上のレベルへ移れる
- Temporal連携による耐久性のあるワークフロー: 数分〜数時間かかる処理や、途中で失敗しうる長時間タスクを前提にした設計。処理の途中経過が失われず、再開・リトライが効く
- 非同期アーキテクチャとストリーミング: Redisを介したメッセージングにより、モデルの出力をトークン単位で流しながら、状態はサーバー側に永続化される
- 開発用UIとトレース可視化: ローカルにWeb UIが立ち上がり、エージェントの応答テスト・デバッグ・実行トレースの確認ができる。コード変更時の自動リロードにも対応
- マルチエージェント構成: Agent Developer Kit(ADK)を通じてサブエージェント同士を通信させ、役割分担型のシステムを組める
- Kubernetesネイティブ/クラウド非依存: Docker ComposeでもDockerなしのローカルモードでも動き、そのまま自前のKubernetesクラスタへ展開できる。特定のクラウドベンダーに縛られない
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| オープンソース版 | 無料(Apache 2.0) | Agent Server・開発用UI・Python SDK・CLIを含む全機能。ローカル開発と自己ホストが可能。サポートはGitHubコミュニティ |
| Enterprise Edition | 要問い合わせ | 上記に加え、ScaleによるGitOps/CI-CD、AgentOps(ホスティング・バージョン管理・トレース・評価)、モデル推論とナレッジベース、SSO/SAML、稼働率SLA |
料金は2026年8月時点の情報です。Enterprise Editionの価格は公開されておらず、問い合わせベースとなります。最新の情報は公式ドキュメントをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 長時間・非同期のエージェントに必要な「状態の永続化」「再開」「トレース」が最初から組み込まれており、自前で作り込む手間が省ける
- ローカル開発(Docker Compose)と本番(Kubernetes)が同じ構成で動くため、動作環境の差異による事故が起きにくい
- Apache 2.0のオープンソースで、ソースを読める・自己ホストできる・ベンダーロックインを避けられる
- CLIによる雛形生成があり、エージェント開発の入口の敷居が低い
- 必要になればEnterprise Editionへ移行でき、SSOやSLAなど組織要件を後から満たせる
⚠️ デメリット
- Python 3.12以上が前提で、RedisやTemporalといった周辺コンポーネントの理解が必要。単純なチャットボットを作るだけなら過剰になりやすい
- 本番運用にはKubernetesの運用知識が求められ、インフラ担当がいない小規模チームには負担が大きい
- 公開が2025年11月と新しく、日本語の情報やコミュニティの蓄積はまだ少ない
- Enterprise Editionの価格が非公開のため、導入コストを事前に見積もりにくい
- ノーコードのエージェント構築ツールではなく、コードを書くことが前提
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Scale Agentex | LangGraph | CrewAI | Google Agent Development Kit |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Scale AI | LangChain | CrewAI | |
| ライセンス | Apache 2.0 | オープンソース | オープンソース | Apache 2.0 |
| 得意分野 | 長時間・非同期エージェントの本番運用 | グラフ構造によるフロー制御 | 役割分担型のマルチエージェント | Googleエコシステムとの連携 |
| 耐久ワークフロー | Temporal連携で標準装備 | チェックポイント機構 | 外部実装に依存 | 外部実装に依存 |
| デプロイ | Kubernetesネイティブ/クラウド非依存 | マネージド版あり | マネージド版あり | Google Cloud連携が中心 |
| 商用版 | Enterprise Edition(要問い合わせ) | あり | あり | Google Cloud側の課金 |
こんな人におすすめ
- 数十分〜数時間かかるリサーチや自動処理など、長時間動き続けるエージェントを本番で運用したい開発チーム
- プロトタイプで終わらせず、監視・トレース・バージョン管理まで含めた運用を最初から設計したいエンジニア
- 特定のクラウドに縛られず、自社のKubernetes基盤の上でエージェントを動かしたい企業
- オープンソースで中身を確認しながら採用の可否を判断したい技術選定担当者
- 将来的にSSOやSLAといった組織要件が必要になる見込みがあり、移行先を確保しておきたいチーム
まとめ
Scale Agentexは、「デモは動くが本番で壊れる」という段階にとどまりがちなAIエージェント開発に対して、非同期・長時間実行・状態の永続化という運用側の課題を正面から扱うフレームワークである。Temporal連携やKubernetesネイティブな設計は本格運用に向く反面、学習コストと運用負荷は決して小さくない。まずはオープンソース版をローカルで動かし、開発用UIでトレースを眺めながら、自分たちの用途に見合う複雑さかどうかを確かめるとよい。