さくらインターネットが2025年9月に提供を開始した生成AIプラットフォーム。モデルの実行から通信、データの保存まですべてを日本国内のデータセンターで完結させることを掲げており、データを国外に出せない業務でも生成AIを組み込める点が最大の特徴である。開発者向けの推論API「さくらのAI Engine」と、導入支援まで含めた企業向けの「AIソリューション」の2本立てで提供されている。APIはOpenAI互換のため、既存のSDKやコードをほぼそのまま流用できる。
主な特徴
- 国内完結のデータ処理: モデルの実行・通信・保存が日本国内のクラウド基盤と日本の法制度の下で行われる。入力したデータはモデル提供元と共有されず、学習にも利用されない
- OpenAI互換API: OpenAI・Anthropic互換のインターフェースを備えるため、既存の生成AIアプリの接続先を差し替えるだけで移行しやすい
- 用途別に選べるモデル群: チャット向けのgpt-oss-120bや国産のllm-jp-3.1-8x13b-instruct4に加え、音声認識のwhisper-large-v3-turbo、埋め込みのmultilingual-e5-large、VOICEVOXによる音声合成まで、1つのAPIキーで使い分けられる
- RAG向けのドキュメント管理: 文書をチャンク単位で登録して検索に使うRAG基盤が用意されており、社内文書を参照する仕組みを自前で構築しなくてよい
- ブラウザで試せるPlayground: 契約前や実装前に、複数モデルの応答をブラウザ上で比較検証できる
- セキュリティ認証と導入支援: プライバシーマーク・ISO27001・PCI DSSを取得済み。AIソリューション側ではInfiniCloud AI、neoAI Chat、議事録作成ツールなどのパッケージと導入支援が受けられる
料金
「基盤モデル無償プラン」と「従量課金プラン」の2種類があり、無料枠は毎月リセットされる。
| 対象 | 無料枠(月) | 従量課金の単価 |
|---|---|---|
| チャット(gpt-oss-120b / llm-jp-3.1-8x13b-instruct4) | 3,000リクエスト | 入力 ¥0.15 / 1万トークン、出力 ¥0.75 / 1万トークン |
| 音声認識(whisper-large-v3-turbo) | 50リクエスト | ¥0.5 / 60秒 |
| 埋め込み(multilingual-e5-large) | 10,000リクエスト | ¥2 / 1万トークン |
| 音声合成(VOICEVOX) | 50リクエスト | ¥3 / 1万モーラ |
| ドキュメント管理(RAG) | なし | ¥3 / 100チャンク |
プレビュー提供のモデル(Kimi-K2.6、Qwen3.6-35B-A3B、gemma-4-31B-itなど)は上記と異なる単価が設定されている。AIソリューション側の価格は構成によって変わるため、公式サイトからの問い合わせが必要。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- データが国外に出ず、モデル提供元とも共有されないため、個人情報や機密文書を扱う業務でも検討しやすい
- OpenAI互換APIなので、既存の実装やライブラリの資産をほぼそのまま活かせる
- 無料枠が月次でリセットされ、小規模な検証や社内ツールなら費用をかけずに始められる
- チャット・音声認識・埋め込み・音声合成・RAGが1つの窓口にまとまっており、サービスを組み合わせる手間が少ない
- プライバシーマーク・ISO27001・PCI DSSを取得しており、社内の調達要件を満たしやすい
⚠️ デメリット
- 提供されるのはオープンウェイトモデルと国産LLMが中心で、海外大手の最新フロンティアモデルは選べない
- 一部のモデルはプレビュー提供のため、仕様や価格が変更される可能性がある
- 公開されているモデル一覧に画像生成は含まれておらず、画像を作る用途には別サービスが必要
- ドキュメント管理(RAG)には無料枠がなく、登録した時点から課金対象になる
- ドキュメントやサポートは日本語が中心で、海外メンバーが多いチームでは扱いにくい場面がある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | さくらのAI | Amazon Bedrock | Azure OpenAI Service | OpenAI API |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | さくらインターネット(日本) | Amazon(米国) | Microsoft(米国) | OpenAI(米国) |
| データの所在 | 国内データセンターで完結 | リージョン選択(東京あり) | リージョン選択(日本あり) | 提供元が指定するリージョン |
| 主なモデル | オープンウェイト+国産LLM | 複数ベンダーのモデルを選択 | GPT系が中心 | GPT系 |
| API形式 | OpenAI / Anthropic互換 | 独自SDK(互換レイヤーあり) | OpenAI互換 | 標準 |
| 無料枠 | あり(月次リセット) | 原則なし | 原則なし | 原則なし |
こんな人におすすめ
- 個人情報や機密文書を扱うため、データを国外に送れない業務システムに生成AIを組み込みたい開発者
- 官公庁・医療・金融など、調達要件でデータの所在や認証取得が問われる組織
- すでにOpenAI APIで実装済みのアプリを、国内完結の基盤へ移したいチーム
- 社内文書を参照するチャットボットを、RAG基盤ごとまとめて用意したい情シス担当者
- まず無料枠で生成AIの内製を試してみたい中小企業や個人開発者
まとめ
さくらのAIは、性能競争の最前線を狙うのではなく「データを国内に留めたまま生成AIを使う」という要件に正面から応えるプラットフォームである。OpenAI互換APIと月次リセットの無料枠により、既存の実装を活かしながら小さく試せる。最新フロンティアモデルの性能が必要な用途には向かないが、データの所在が意思決定を左右する業務では有力な選択肢になる。