RuViewは、部屋にすでに飛んでいるWiFiの電波そのものをセンサーとして使うオープンソースのソフトウェア基盤である。アクセスポイントと端末の間を行き交う電波は、人が動いたり呼吸したりするたびにわずかに乱れる。この乱れを記録したCSI(Channel State Information/チャネル状態情報)を機械学習モデルに通すことで、カメラもウェアラブル端末も使わずに、在室の有無・人数・姿勢・呼吸数・心拍数・転倒などを推定する。開発しているのはカナダの技術者Reuven Cohen(ruvnet)で、実装はRust、ライセンスはMIT。GitHubで公開され、9万を超えるスターを集めている。
主な特徴
- WiFi CSIから姿勢とバイタルを推定: 呼吸数(毎分6〜30回)、心拍数(毎分40〜120回)、17点キーポイントの姿勢推定、転倒検知(200ミリ秒未満で応答)、複数人のカウント、睡眠ステージの分類などに対応する
- 学習済みモデルをそのまま使える: HuggingFaceで
wifi-densepose-pretrained(CSIエンコーダー)とwifi-densepose-mmfi-pose(17点姿勢推定)が配布されており、自分でデータを集めなくても試せる。数KB〜数十KB規模の量子化版も用意されている - 安価な市販ハードで組める: ESP32-S3(1ノード約9ドル)やWiFi 6対応のESP32-C6を複数台メッシュ状に配置してCSIを集める構成が基本。研究用NIC(Intel 5300、Atheros AR9580)にも対応する
- エッジモジュールで機能を足せる: ヘルス・セキュリティ・建物管理・リテール・産業・研究など11カテゴリ、105以上のモジュールが用意されており、必要なものだけ載せられる
- スマートホームと連携できる: Home Assistant、Apple Home、Google Home、Alexa、Matterに接続でき、在室検知を既存の自動化に組み込める
- ローカル完結でプライバシーを守る: 映像を一切撮らず、処理も手元で完結する設計。1,463件のテストが通っており、リリースも高頻度で更新されている
料金
| プラン | 費用 | 内容 |
|---|---|---|
| ソフトウェア本体 | 無料(MITライセンス) | 全機能を利用可能。商用利用・改変・再配布も認められる |
| ハードウェア | 実費 | ESP32-S3ノードが1台あたり約9ドル、ESP32-C6が6〜10ドル。公式が案内する組み立て済みバンドル「Cognitum Seed」は約140ドル |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式リポジトリをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- カメラを設置せずに在室・姿勢・バイタルを取れるため、寝室や脱衣所の近くなど映像を置きたくない場所でも使える
- 電波は壁や家具をある程度透過するので、レンズのような死角ができにくい
- MITライセンスで無料。ソフトウェアのコストがかからず、商用利用の制約もゆるい
- 学習済みモデルが公開されており、データ収集という重い初期作業を省ける
- ESP32ベースなので、1ノードあたり日本円で1,000円台から試せる
⚠️ デメリット
- CSIを取得できるハードウェアを自分で用意し、配置・電源確保まで面倒を見る必要がある。市販センサーのような「箱から出してすぐ」ではない
- Rustのビルド環境やコマンドライン操作が前提で、非エンジニアが単独で導入するのは難しい
- 精度は電波環境(部屋の形、家具の配置、周囲のWiFi機器)に左右され、設置場所ごとの調整が要る
- 公開されている精度指標(姿勢推定のtorso-PCK@20が82.69%など)は研究用ベンチマーク上の値であり、医療機器のような信頼性を期待できるものではない
- 開発の速度が非常に速く、バージョン間で構成や設定が変わることがある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | RuView | mmWave人感センサー | 見守りカメラ | ウェアラブル端末 |
|---|---|---|---|---|
| 検知方式 | 既設WiFiの電波(CSI) | ミリ波レーダー | 映像 | 体に着けたセンサー |
| カメラ | 使わない | 使わない | 使う | 使わない |
| 取得できる情報 | 在室・人数・姿勢・呼吸・心拍・転倒 | 在室・動き・おおまかな位置 | 映像そのもの、動体検知 | 心拍・睡眠・歩数 |
| 装着の必要 | なし | なし | なし | あり |
| 導入のしやすさ | 自作が前提で難しい | 製品を買って設置するだけ | 製品を買って設置するだけ | 買って身に着けるだけ |
| 費用 | ソフト無料+ESP32の実費 | 製品価格 | 製品価格+クラウド利用料 | 製品価格 |
こんな人におすすめ
- カメラを置かずに家族の在室や転倒を見守りたい人(自作の手間を許容できる場合)
- WiFiセンシングやCSIを研究・学習したい学生や研究者
- ESP32や自作IoTに慣れていて、Home Assistantの自動化を電波ベースの在室検知で強化したい人
- プライバシー上の理由で映像やクラウド送信を避けたい環境に、在室検知を入れたい人
- 商用製品に組み込める、ライセンスのゆるいWiFiセンシング実装を探している開発者
まとめ
RuViewは、すでに部屋を飛び交っているWiFiの電波を、新しいセンサーとして使い直すオープンソースプロジェクトである。カメラも装着物も要らずに在室・姿勢・呼吸を推定できる点は、見守りやスマートホームの自動化にとって魅力がある。一方で、ハードウェアの調達から配置、Rustのビルドまで自分で面倒を見る必要があり、完成品のセンサーを買う感覚では導入できない。まずはESP32-S3を数台用意し、学習済みモデルで在室検知を試すところから始めるのが現実的だろう。呼吸数や心拍数といったバイタルの値は参考値として扱い、医療的な判断には使わないという線引きも必要になる。