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Ralph ─ PRDを起点にAIコーディングツールを自律ループで回し、全タスク完了まで実装させるbash製オーケストレーションフレームワーク

Ryan Carson氏(snarktank)が公開しているオープンソースのAIコーディング自動化フレームワーク。開発者がPRD(要件定義書)を書いて構造化JSONに変換しておくと、ralph.sh というbashスクリプトがAmpやClaude CodeといったAIコーディングツールを繰り返し起動し、未完了のユーザーストーリーを1件ずつ実装させる。型チェックやテストが通ったらコミットし、学んだことを記録して次のループへ ─ という流れを、全ストーリーが完了するか指定回数に達するまで自動で回し続ける。エンジニアのGeoffrey Huntley氏が提唱した「Ralphパターン」(while :; do cat PROMPT.md | claude-code; done という素朴な無限ループ)を、実務で使える形に整えた実装にあたる。ライセンスはMIT。

主な特徴

  • PRDを起点にした自律ループ: 機能要件をPRDとして書き、付属のスキルで prd.jsonbranchName とユーザーストーリー配列を持つJSON)に変換する。各ストーリーには受け入れ基準と passes フラグがあり、ループは passes: false の中から優先度の高いものを1件選んで実装する
  • 毎回クリーンなコンテキストで起動: イテレーションごとにAIツールを新しいプロセスとして立ち上げるため、前の試行で溜まった無関係な文脈や誤解を引きずらない。持ち越されるのはGitの履歴、progress.txt(追記専用の学びログ)、prd.json の完了状況の3つだけ
  • 品質チェックを通ったときだけコミット: 実装後に型チェックとテストを実行し、通った場合のみコミットしてストーリーを passes: true に更新する。壊れたコードがそのまま次のループに積み上がるのを防ぐ設計
  • AGENTS.md への学習の書き戻し: 発見したコード規約や落とし穴を AGENTS.md に追記する。多くのAIコーディングツールはこのファイルを自動で読むため、次のイテレーション以降の精度に効いてくる
  • AmpとClaude Codeに対応: 既定はAmp CLI。--tool claude を付けるとClaude Codeで実行できる。Claude Codeではプラグインマーケットプレイス(/plugin marketplace add snarktank/ralph)経由での導入にも対応する
  • フロントエンドはブラウザ検証も: UI関連のストーリーでは、受け入れ基準にブラウザでの動作確認を含めることで、見た目の破綻を検知させられる

料金

プラン料金主な特徴
Ralph本体(OSS)$0(MITライセンス)ralph.sh・プロンプトテンプレート・PRD生成スキル一式
実行に使うAIツール各ツールの料金体系に準拠Amp CLI または Claude Code の利用料が別途かかる

料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式リポジトリをご確認ください。

Ralph自体はGitHubで公開されたbashスクリプトとプロンプト集なので、フレームワークとしての課金はない。実際のコストは、ループ中に呼び出すAmpやClaude Codeのトークン消費として発生する。消費量はイテレーション回数とコードベースの規模におおむね比例するため、ralph.sh の引数で最大イテレーション数(既定10回)を制限しておくのが安全側の運用になる。

メリット・デメリット

メリット

  • 要件をストーリー単位に割っておけば、実装・テスト・コミットまでを人が張り付かずに進められる
  • クリーンなコンテキストで毎回起動するため、長時間の対話でありがちな文脈の劣化や誤解の固着が起きにくい
  • 品質チェックを通過したものだけをコミットするので、Git履歴が「動く状態」の連なりになり、レビューや巻き戻しがしやすい
  • bashスクリプトとMarkdownだけの薄い構成で、中身を読んで自分のプロジェクト向けに手を入れやすい
  • Amp・Claude Codeという既存のAIコーディングツールを土台にするため、新しいサブスクリプションを増やさずに導入できる

⚠️ デメリット

  • 1つのストーリーが1回のコンテキストに収まる粒度まで分解されている必要があり、「ダッシュボードを丸ごと作る」のような粗い依頼は失敗しやすい
  • 型チェック・テスト・CIといったフィードバックループが整っていないプロジェクトでは、誤りが検知されないまま次のループに積み上がる
  • Ralph自体に安全装置はなく、品質ゲートの設計は利用者側の責任になる
  • 生成されたコードの人によるレビューは前提。無人で本番に流す用途向きではない
  • Ralphパターンの提唱者自身が、既存の大規模なレガシーコードベースへの適用には否定的で、新規開発(グリーンフィールド)向きの手法とされている
  • 導入にはGitリポジトリ、jq、対応AIツールの認証済み環境が必要で、CLIに不慣れな人にはハードルがある

類似サービスとの比較

比較項目RalphClaude Code(単体)OpenHandsDevin
提供形態OSS(bashスクリプト)CLIツールOSS(エージェント基盤)商用SaaS
実行の単位PRDのストーリー1件ずつ対話中の指示ごとタスク単位タスク単位
自律ループあり(完了まで反復)基本は対話ベースありあり
進捗の持ち越しGit履歴・progress.txt・prd.jsonセッション内の文脈エージェントの状態管理サービス側で管理
実行環境自分のマシン・自分のリポジトリ自分のマシンローカル/コンテナ/クラウドクラウド
料金無料(AIツール利用料は別)Claudeの各プランに準拠無料(LLM API費は別)有料(要確認)

こんな人におすすめ

  • 要件を細かいユーザーストーリーに分解する習慣があり、その先の実装を自動化したい開発者
  • 型チェックとテストがすでに整備されていて、AIの出力を機械的に検証できるプロジェクトを持っている人
  • 新規プロダクトのプロトタイプや、独立性の高い機能追加をまとめて片付けたいソロ開発者・小規模チーム
  • AIコーディングツールを「都度チャットで指示する道具」から「回しっぱなしにできる仕組み」へ引き上げたい人
  • ブラックボックスの自動化を避け、中身のスクリプトを読んで挙動を把握したうえで使いたい人

まとめ

Ralphは、AIコーディングツールに「1件ずつ実装し、検証し、通ったらコミットする」というループを与えるだけの薄いフレームワークである。仕組みそのものは数百行のbashとプロンプトに過ぎないが、クリーンなコンテキストでの再起動と品質ゲート通過時のみのコミットという2点によって、長時間の自動実行でも破綻しにくい構造になっている。効果を出せるかどうかは、ストーリーの粒度とテストの充実度というプロジェクト側の準備にかかっている。まずは小さな機能追加をPRDに落とし、最大イテレーション数を絞って挙動を確かめるところから始めるとよい。

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