Apple Silicon搭載のMacとiPhoneで、音声合成をすべて端末内で完結させるアプリ。Alibabaが公開する音声合成モデル「Qwen3-TTS」を、AppleのMLXフレームワーク+ネイティブSwiftで動かす構成になっており、Pythonや外部サーバー、クラウドAPIを一切必要としない。原稿を書いて声を選ぶ(あるいは言葉で声を説明する)だけで、そのまま音声ファイルが手に入る。MITライセンスの無料・オープンソースソフトウェアで、アカウント登録も従量課金もない。
もともとは「QwenVoice」という名前で公開されていたが、バージョン2.2.0からプロジェクト名が Vocello に変更され、リポジトリも PowerBeef/QwenVoice から PowerBeef/Vocello へ移っている。公式サイトも vocello.vercel.app に移転済みで、旧ドメインは現在つながらない。
主な特徴
- 完全オフラインで動作: 初回のモデルダウンロード(Hugging Face経由)が済めば、以降はネット接続なしで音声を生成できる。原稿も生成した音声もローカルストレージに留まり、自分で書き出さない限り外部に送信されない
- 3通りの声の決め方: 9種類のビルトイン話者プリセット(Neutral/Calm/Whisper/Sad/Happy/Fearful/Angry/Surprisedの8つの話し方を切り替え可能)、自然言語で声質を説明して生成する「Voice Design」、そして手持ちの音声から声を写し取る「Voice Cloning」の3系統を用意
- 音声クローンは録音・ファイル取り込みの両対応: マイクでその場で録音する方法と、既存の音声ファイルを読み込ませる方法のどちらでも登録でき、作った声は保存して再利用できる
- 長文原稿のプロジェクト管理: 長いスクリプトは自動的にセグメントへ分割され、生成履歴からセグメント単位で作り直せる。ナレーションやオーディオブックのような長尺制作を想定した設計
- 10言語の自動判定: 中国語・英語・日本語・韓国語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・ポルトガル語・スペイン語・イタリア語に対応し、入力テキストから言語を自動で判別する
- Python不要のネイティブ実装: mlx-audio-swiftをベースにした独自のSwiftランタイム上でQwen3-TTSを動かす。Macでは推論エンジンを別プロセスに分離しており、モデルのメモリ消費が本体アプリを巻き込みにくい
- iPhone版もベータ提供中: iPhone 15 Pro以降+iOS 26の環境で、TestFlightの公開ベータとして同じローカル生成を試せる
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 無料(MITライセンス) | $0 | 全機能を利用可能。サブスクリプション・文字数課金・アカウント登録なし |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
クラウド型の音声合成サービスにありがちな「1文字あたり◯円」「月◯文字まで」といった制限は存在しない。かかるコストは、モデルを動かすMac本体と、初回ダウンロードの通信量だけである。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 従量課金がないため、長尺のナレーションや何度も作り直す用途でもコストを気にせず回せる
- 音声が端末外に出ないので、社外秘の原稿や個人的な録音を扱う場面でも扱いやすい
- ソースコードがMITライセンスで公開されており、中身を確認したり自分でビルドしたりできる
- M2 Mac mini(8GB)でもリアルタイムの1.5〜2.1倍程度の速度で生成でき、待ち時間が短い
- 声の指定を「プリセット」「言葉で説明」「クローン」から選べるため、作りたい声への到達手段が複数ある
⚠️ デメリット
- Apple Silicon搭載Macに限定され、Intel MacやWindows・Linuxでは動かない
- macOS 26以降が必要(macOS 15環境には旧QwenVoice 1.2.3がレガシー版として残されているが、最新機能は使えない)
- 初回にモデルのダウンロードが必要で、そこだけはネット接続が要る
- iPhone版はまだTestFlightの公開ベータ段階で、対応機種もiPhone 15 Pro以降に限られる
- 個人開発のオープンソースプロジェクトのため、商用SaaSのようなサポート窓口やSLAは期待できない
- 音声クローンは「自分の声、または許諾を得た声のみ」という前提で使う必要がある。生成音声には不可聴のウォーターマーク(AudioSeal)が埋め込まれ、クローン音声を公開する際はAI生成である旨の明示が求められている
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Vocello | ElevenLabs | OpenAI TTS(API) | Kokoro TTS |
|---|---|---|---|---|
| 実行場所 | 端末内(ローカル) | クラウド | クラウド | ローカル(自前環境) |
| 料金体系 | 無料・MITライセンス | 無料枠+月額サブスク | 従量課金 | 無料・オープンソース |
| 音声クローン | 対応(マイク録音・ファイル取り込み) | 対応(品質は上位プラン) | 非対応(既定音声のみ) | 限定的 |
| 導入のしやすさ | Macアプリをダウンロードするだけ | ブラウザで完結 | APIキーと実装が必要 | Python環境の構築が必要 |
| 動作要件 | Apple Silicon+macOS 26以降 | Webブラウザ | インターネット接続 | GPU推奨 |
クラウド型は品質と手軽さで優れ、ローカル型はコストとプライバシーで優れる、という一般的な構図がここでも当てはまる。Vocelloの立ち位置は「ローカル型でありながら、GUIアプリとして導入の手間がほぼない」点にある。
こんな人におすすめ
- Apple Silicon搭載のMacを持っていて、音声合成をとりあえず無料で試したい人
- 動画やポッドキャストのナレーションを日常的に作っており、従量課金の積み上がりが気になっている人
- 社外に出せない原稿を音声化する必要がある、企業内利用や個人の機密的な用途
- クラウドサービスへのアップロードを避けたいプライバシー志向のユーザー
- ローカルLLM・ローカル生成AIの環境を揃えていて、音声合成もその一部として端末内に置きたい人
まとめ
Vocello(旧QwenVoice)は、Qwen3-TTSをApple SiliconのMLX上でネイティブに走らせることで、「クラウドに送らない音声合成」を普通のアプリとして使えるようにした無料・オープンソースのツールである。Apple Silicon+macOS 26以降という動作要件は厳しめだが、条件を満たすなら導入コストはダウンロード一回分だけで、以降は文字数も回数も気にせず使える。名称とリポジトリがQwenVoiceからVocelloへ移っている点だけ、検索や情報収集の際に注意しておきたい。