Pascal Editor は、Pascal が開発するオープンソースの3D建築エディタである。専用ソフトのインストールは不要で、ブラウザを開けばそのまま間取りや建物を立体で作れる。壁・床・ゾーン・家具といった要素を「意味を持った構造」として保持するセマンティックシーングラフを採用しており、人間だけでなくAIエージェントからも中身を読み書きできるのが最大の特徴だ。ライセンスは MIT で、エディタ本体・ビューア・シーンエンジンが NPM パッケージとして公開されているため、自社サービスへの組み込みもできる。
主な特徴
- ブラウザで完結する3D建築エディタ: Three.js の WebGPU レンダラーと React Three Fiber で描画するため、インストールなしで滑らかに動く。壁を引く、ゾーンを切る、床スラブを置く、家具を配置するといった建築特有の操作が最初から揃っている
- AIによる生成と手動ツールの二段構え: スケッチや指示からジオメトリを起こすAI生成を使ってラフを一気に作り、寸法や納まりを詰める段階では通常の編集ツールに切り替えられる。「たたき台はAI、仕上げは手」という分業がそのままワークフローになっている
- MCP サーバー内蔵でAIエージェントから操作できる:
npx @pascal-app/cli editorでローカルにエディタと MCP サーバーを起動でき、pascal mcp setup claudeなどでAIクライアントに接続する。エージェント側からシーンを読み込み、部屋の面積を調べたり、マテリアルを変更したりできる。CLI 側の保存もブラウザ側に反映される - 階層的なシーン構造: サイト → 建物 → 階 → 壁・スラブ・ゾーン という階層でモデルを保持する。階の表示は積層・分解・単独表示を切り替えられ、複数階の建物も扱いやすい
- スキャンした空間の取り込みとウォークスルー: 実空間のスキャンデータや2Dの下敷き図面を読み込んで、その上に設計を重ねられる。完成後は一人称視点で歩き回って見せられる
- プラグインとNPM組み込み: プラグイン機構で機能を足せるほか、
@pascal-app/core/@pascal-app/viewer/@pascal-app/editorなどのパッケージを使って自社アプリに3Dビューアやエディタを埋め込める - アセットライブラリとマテリアル: 既製の3Dオブジェクトが多数用意され、マテリアル面ではプロンプトや写真から質感を起こす Material Studio も備える
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| オープンソース版(セルフホスト) | $0(MIT ライセンス) | ソースコードを取得してローカル実行。NPM パッケージでの組み込みも可 |
| ホスト版エディタ(editor.pascal.app) | $0 | ブラウザからそのまま利用。アカウント登録で保存・共有 |
| Studio の生成機能 | 毎日の無料クレジットあり | 画像・動画・マテリアル生成などのAI機能。無料枠を超えた場合の扱いは公式サイトで要確認 |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- エディタ本体が無料かつ MIT ライセンスのオープンソースで、商用利用や改変の自由度が高い
- インストール不要でブラウザから触れるため、3D CAD の経験がなくても入り口が低い
- AI生成で形を出してから手動で詰められるので、「AIに全部任せて破綻する」パターンを避けやすい
- MCP 対応により、Claude などのAIエージェントに設計作業の一部を任せる使い方ができる
- NPM パッケージとして配布されており、自社プロダクトへの3Dビューア組み込みに転用できる
⚠️ デメリット
- 建築確認申請や施工図といった、法規・製図の実務要件を満たすCADではない
- 更新頻度が高く機能が流動的なため、業務フローに組み込むとバージョン差の影響を受けやすい
- WebGPU 前提の描画のため、古いブラウザや非力な端末では快適に動かない可能性がある
- MCP やローカル実行、プラグインといった強みを活かすには、Node.js やコマンドライン操作の知識が要る
- AI生成クレジットの上限や有償化の条件は明示されておらず、大量利用時のコストが読みにくい
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Pascal Editor | SketchUp(Web版) | Planner 5D | Blender |
|---|---|---|---|---|
| 主な用途 | 3D建築モデリング・共有 | 汎用3Dモデリング・建築 | 間取りとインテリアの作成 | 汎用3D制作全般 |
| 動作環境 | ブラウザ/ローカル実行 | ブラウザ | ブラウザ・アプリ | デスクトップアプリ |
| ライセンス | オープンソース(MIT) | 商用プロプライエタリ | 商用プロプライエタリ | オープンソース(GPL) |
| AI連携 | AI生成 + MCP でエージェント操作 | 限定的 | AI補助あり | 標準では非搭載 |
| 料金 | 無料 | 無料版あり/有料プラン | 無料版あり/有料プラン | 無料 |
| 組み込み | NPM パッケージで可 | 不可 | 不可 | 不可(別途開発が必要) |
こんな人におすすめ
- 間取りやリノベーション案を、専用ソフトを買わずに立体で検討したい人
- AIエージェントに設計作業を触らせてみたい開発者・デザイナー
- 自社のWebサービスに3Dの間取りビューアやエディタを組み込みたい制作者
- 不動産・内装・住宅まわりで、施主やクライアントへ視覚的に提案したい人
- オープンソースであることを重視し、データやツールを自分の手元に置きたい人
まとめ
Pascal Editor は「ブラウザで動く無料の3D建築エディタ」という入り口の広さと、「AIエージェントがシーンを読み書きできる」という技術的な尖り方を両立させた珍しいツールである。セマンティックシーングラフと MCP 対応により、AIに設計を手伝わせる実験ができる一方、エディタ単体としても間取り検討やプレゼン用途に十分使える。まずはブラウザ版で壁を数本引いてみて、AIエージェント連携まで試したくなったらローカル実行に進むとよい。実務のCADを置き換えるものではなく、検討・提案・プロトタイピングの道具として位置づけるのが現実的だ。