Onyx AI は、社内に散らばったドキュメントや業務アプリを横断して、自然言語で検索・対話できる AI アシスタントである。Google Drive、Slack、Confluence、Salesforce など多数の外部サービスとつなぎ、「先月の請求フローの変更点は?」といった質問に、社内の実データを根拠として答えを返す。コア機能は MIT ライセンスのオープンソースとして公開されており、自社サーバーや任意のクラウドに自前で立てて運用できるのが最大の特徴だ。運用の手間を避けたい場合は、開発元 Onyx が提供するマネージドのクラウド版も選べる。
一般的なチャット AI が「モデルが学習した知識」で答えるのに対し、Onyx は「自社が持っている情報」で答える点が根本的に違う。社内 Wiki を検索しても目当ての資料にたどり着けない、部署ごとにツールが分かれていて情報が分散している ─ そうした課題を持つチームに向いた製品である。
主な特徴
- 社内データを横断する RAG 検索: ハイブリッド検索(キーワード + ベクトル)と文脈を踏まえた検索、LLM によるナレッジグラフを組み合わせ、根拠となる社内文書を引きながら回答を生成する。回答には参照元が示されるため、裏取りがしやすい
- 多数の業務アプリコネクタ: Google Drive / Slack / Confluence / Salesforce / Notion / GitHub など、主要な業務アプリと接続できるコネクタを標準搭載する(公式サイトは 40 以上、GitHub の README は 50 以上と記載)。定期同期に対応し、元のツール側の閲覧権限を引き継いだアクセス制御も行える
- ディープリサーチ・Web 検索・コード実行: 社内データだけでなく Web 検索(Serper / Google PSE / Brave / SearXNG など)も併用でき、複数ステップで調べ物を進めるディープリサーチや、サンドボックス内でのコード実行、画像生成にも対応する
- カスタム AI エージェントと MCP 連携: 用途別に指示と参照知識を設定したエージェントを作れる。Model Context Protocol(MCP)や OpenAPI 経由のアクションにも対応し、外部ツールを呼び出す処理を組み込める
- LLM を自由に選べる: OpenAI、Anthropic、Google などの商用モデルに加え、自社でホストしたローカルモデルも指定できる。機密性の高いデータを外部 API に出さない構成も取れる
- セルフホストとクラウドの二択: Docker / Kubernetes / Helm / Terraform に対応し、インストールスクリプト 1 行から立ち上げられる。メモリ 1GB 未満で動く軽量な Lite 構成と、インデックスやバックグラウンド処理を含む Standard 構成が用意されている
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| セルフホスト(Community Edition) | $0(MIT ライセンス) | コア機能を自前サーバーで無償利用。インフラ費用と運用は自己負担 |
| Business(クラウド) | 1ユーザーあたり月額 $20(年払い) | チャット・検索 UI、主要 LLM、カスタムエージェント、MCP/OpenAPI アクション、40以上のコネクタ、Web 検索・ディープリサーチ、コードインタープリタ・画像生成、Slack 連携、開発者 API、Google OAuth と RBAC、コミュニティサポート。無料トライアルあり |
| Enterprise | 要問い合わせ | Business の内容に加え、OIDC/SAML SSO、オンプレミス・地域指定デプロイ、新機能への早期アクセス、ホワイトラベル・カスタム連携、データエクスポート、請求書払い、ボリュームディスカウント、専任サポートと SLA |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
なお、SSO・監査ログ・高度な分析などの企業向け機能は Enterprise Edition として別ライセンスで提供され、MIT ライセンスのコア部分とは扱いが分かれる。
メリット・デメリット
✅ メリット
- コア機能がオープンソース(MIT)で、ライセンス費用なしに自社環境で運用できる
- データを自社インフラの外に出さない構成が取れるため、機密情報を扱う組織でも導入しやすい
- 主要な業務アプリのコネクタが揃っており、情報が分散したままでも横断検索できる
- 利用する LLM を差し替えられるので、コストや性能、データ保護方針に合わせて選択できる
- クラウド版も用意されており、運用体制が整うまではマネージドで始めて後から移行する選択肢もある
⚠️ デメリット
- セルフホストは無償でも、サーバー費用・アップデート・バックアップなどの運用負荷は自社が負う
- 本格構成ではベクトルインデックスやバックグラウンドワーカーを動かすため、相応のマシンリソースが必要になる
- 導入効果はコネクタ設定と権限設計の丁寧さに左右され、初期のセットアップに一定の工数がかかる
- SSO や監査ログなど、企業導入で求められがちな機能は有償エディション側にある
- 個人が一人で使う用途にはやや重く、汎用チャット AI のほうが手軽な場面も多い
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Onyx AI | Glean | 汎用チャットAI(ChatGPT・Claude) | Dify |
|---|---|---|---|---|
| 主な用途 | 社内データ横断検索とAIアシスタント | エンタープライズ検索・アシスタント | 汎用的な対話・作成支援 | LLMアプリの構築基盤 |
| セルフホスト | 可能(MIT のコア) | 不可(SaaS) | 不可(SaaS) | 可能(オープンソース版あり) |
| 社内データ連携 | 40以上のコネクタを標準搭載 | 多数のコネクタを標準搭載 | コネクタ機能はあるが範囲は限定的 | 自前で構築する前提 |
| LLM の選択 | 商用・ローカルとも自由 | 提供元が管理 | 自社モデルに固定 | 自由 |
| 料金の入口 | 無償のセルフホスト、または月額 $20/ユーザー | 要問い合わせ | 個人向け月額プランあり | 無償のセルフホストあり |
こんな人におすすめ
- 社内 Wiki・Slack・ドライブに情報が散らばり、「どこに書いてあるか分からない」が常態化しているチーム
- 機密データを外部 SaaS に預けたくない、あるいは業界規制でそれが難しい組織
- 自社でサーバーを運用でき、ライセンス費用を抑えて社内 AI 検索を立ち上げたい情報システム部門
- 利用する LLM を用途やコストに応じて切り替えたい開発チーム
- まずはクラウド版で効果を確かめ、必要になったらセルフホストへ移したいと考えている企業
まとめ
Onyx AI は、社内の情報資産を根拠にした回答を返す AI アシスタントを、オープンソースで自前運用できる点に価値がある製品である。コネクタと RAG の作り込みがしっかりしている一方、導入効果はデータ接続と権限設計にかかっているため、最初の設定にはある程度の工数を見込んでおきたい。運用リソースが確保できるなら、まずセルフホスト版を検証環境に立てて自社データとの相性を確かめ、社内展開の段階でクラウド版や Enterprise を検討するのが現実的な進め方だろう。