AI Deck

olmOCR ─ PDFや画像の文書を表・数式・手書きまで含めてMarkdownに変換する、Ai2のオープンソースOCRツールキット

Ai2(Allen Institute for AI)が開発するオープンソースのOCRツールキット。PDFやスキャン画像を、表・数式・手書き文字まで含めてクリーンなテキストとMarkdownに変換する。一般的なOCRのように文字だけを拾うのではなく、視覚言語モデル(VLM)がページ全体のレイアウトを理解したうえで書き起こすため、2段組の読み順を正しく推定したり、ヘッダー・フッターのような本文以外の要素を自動で取り除いたりできる。2025年2月に最初のバージョンが公開され、2025年10月には精度を大きく引き上げた「olmOCR 2」が登場した。ライセンスはApache 2.0で、モデルの重みまで含めて公開されている。

主な特徴

  • レイアウトを理解した書き起こし: 2段組・図版まわりの回り込みなど複雑な紙面でも、人間が読む順番に沿ってテキストを並べ直す。ページ番号やヘッダー・フッターは本文から自動的に除外される
  • 表・数式・手書きに対応: 表はHTMLの表として、数式はLaTeXとして出力できるため、変換後に構造を失わない。手書き文字の書き起こしにも対応する
  • 視覚言語モデルベース(olmOCR 2): Qwen2.5-VL-7Bを土台に、「表の構造が保たれているか」「読み順が正しいか」といった検証可能なテストを報酬にした強化学習で訓練されている。ベンチマークolmOCR-Benchでの総合スコアは82.4点で、特に表(84.9%)と複数段組(83.7%)が改善した
  • オープンソースで自前運用できる: Apache 2.0ライセンスで、GitHubのツールキットとHugging Face上のモデル重み(BF16・FP8)が公開されている。文書を外部サービスに送らずに社内のGPU環境で完結させられる
  • 大量ページを低コストで処理: Ai2の見積もりでは、自前運用で100万ページあたり200米ドル未満。FP8量子化版はH100 GPUで毎秒3,400トークン程度の処理速度が出るとされる
  • ブラウザで試せるデモ: Ai2のPlayground(playground.allenai.org)上でolmOCR 2のデモが公開されており、インストールせずに変換結果を確かめられる

料金

利用形態費用主な内容
オンラインデモ(Ai2 Playground)無料ブラウザ上で変換結果を試せる
セルフホスト(自前GPU)ソフトウェアは無料(Apache 2.0)GPU費用のみ。Ai2の試算で100万ページあたり200米ドル未満
外部推論プロバイダ経由各社の従量課金(要確認)DeepInfra・Parasail・Cirrascaleなどが対応。単価は各社サイトを参照

料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトおよびGitHubリポジトリをご確認ください。

メリット・デメリット

メリット

  • モデルの重みまで含めて完全にオープンソース。ベンダーロックインの心配がない
  • 文書を外部に送信せず自社環境内で処理できるため、機密文書や個人情報を含む資料でも扱いやすい
  • 表・数式・手書きといった、従来のOCRが苦手としてきた要素に一通り対応している
  • 大量処理時の単価が非常に低く、数十万ページ規模のアーカイブ電子化に向く
  • Markdown出力なので、そのままRAG(検索拡張生成)の入力データやドキュメント基盤に流し込みやすい

⚠️ デメリット

  • 英語の文書を対象に開発・評価されており、日本語文書での精度は保証されていない
  • 動かすにはNVIDIA GPU(VRAM 12GB以上)とCUDA環境が必要で、CPUだけのPCでは実用的に動かない
  • コマンドラインとPython環境の知識が前提。ノーコードで完結する商用OCRサービスに比べると導入のハードルが高い
  • 入力はPDF・PNG・JPEGに限られる。OfficeファイルなどはPDF化してから渡す必要がある
  • 生成モデルベースであるため、まれに原文にない文字列を出力する可能性があり、重要書類では目視確認が要る

類似サービスとの比較

比較項目olmOCRMistral OCRMarkerGoogle Document AI
提供元Ai2Mistral AIDatalabGoogle Cloud
ライセンス/提供形態オープンソース(Apache 2.0)API(クラウド)オープンソース+商用ライセンスクラウドサービス
自前環境での実行可能(GPU必須)不可可能(GPU推奨)不可
出力形式Markdown/HTML表/LaTeXMarkdown中心Markdown/JSON/HTML構造化JSON
多言語対応英語中心多言語多言語多言語
費用ソフトは無料(GPU費用のみ)従量課金無料枠+商用条件あり従量課金

こんな人におすすめ

  • 英語の論文・技術資料・報告書をまとめてテキスト化し、検索やRAGの材料にしたい研究者・エンジニア
  • 機密性の高い文書を外部APIに送れず、社内GPU環境で完結させたい企業の情報システム担当者
  • 数十万ページ規模の紙資料・PDFアーカイブを、できるだけ低コストで電子化したい図書館・アーカイブ運用者
  • 既存のOCRでは表や数式が崩れてしまい、後工程の手直しに時間を取られている人
  • OCRの処理内容を自分で検証・改造したいオープンソース志向の開発者

まとめ

olmOCRは、視覚言語モデルによる「レイアウトを理解するOCR」を、モデルの重みごとオープンソースで公開している点が最大の特徴である。表や数式、手書きまで扱えて大量処理の単価も低く、機密文書を外に出せない現場では特に選択肢になりやすい。一方で英語文書中心の設計であること、NVIDIA GPU環境が必須であることは前提として押さえておきたい。まずはAi2のPlaygroundで自分の手元の文書を試し、精度が要件に合うか確かめてから自前環境の構築に進むのが現実的だろう。

関連リンク

← ブログ