国立国会図書館が開発・公開している軽量OCRソフトウェア。書籍や雑誌をスキャンした画像を読み込ませると、日本語の縦書き・横書きを認識してテキストデータに変換する。最大の特徴はGPUを必要としない点で、手元のノートPCでもそれなりの速度で動く。マウス操作だけで完結するデスクトップアプリ版と、大量処理を自動化できるコマンドライン版の両方が用意されており、ライセンスはCC BY 4.0。個人の資料整理から研究・業務利用まで、無料で使える。
主な特徴
- GPU不要でローカル動作: レイアウト認識・文字列認識・読み順推定の3モジュールを軽量なモデルで構成しており、一般的なCPUのみのPCで動作する。onnxruntime-gpuを導入した環境では
--device cudaでGPUを使うベータ機能もある - 日本語の縦書き・横書きに対応: 近代以降の活字資料を想定した設計で、縦組みの書籍・雑誌もそのまま処理できる。混植(縦中横)を改善する
--enable-tcyオプションも用意されている - 手書き文字・英文への実験的対応: v1.2系のモデル更新で日本語の手書き文字と英文タイプライター文字の認識が改善された。GitHubのREADMEには手書きデータセットでの評価結果も公開されている
- 5種類の出力形式: TXT・JSON・XML・TEI・透明テキスト付きPDFに対応。TEIは人文学のテキスト研究で使われる形式で、透明テキスト付きPDFは見た目を保ったまま全文検索できるようになる
- アプリ版とCLI版の二本立て: GUIアプリはインストールして画像フォルダを指定するだけ。Python 3.10以降が入っていればコマンドライン版も使え、
--sourcedirでフォルダ一括、--sourceimgで単一ファイル、--viz Trueで認識範囲の可視化画像を出力できる - クローズドな環境でも使える: ローカル完結のためスキャン画像を外部に送信しない。社外秘資料や個人情報を含む紙資料の電子化でも扱いやすい
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 無料(CC BY 4.0) | 0円 | 全機能を利用可能。アプリ版・コマンドライン版とも制限なし |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式のGitHubリポジトリをご確認ください。なお本体はCC BY 4.0ですが、依存ライブラリはそれぞれ別のライセンスが適用されます。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 完全無料で、商用利用も含めてCC BY 4.0の条件下で自由に使える
- GPUを持たない一般的なノートPCで動くため、導入のハードルが低い
- 画像を外部に送信しないので、機密資料や個人情報を含む資料でも安心して処理できる
- 縦書きの古い書籍・雑誌という、汎用OCRが苦手とする領域に強い
- TEIや透明テキスト付きPDFなど、研究・アーカイブ用途で使いやすい形式に直接出力できる
⚠️ デメリット
- 手書き文字への対応は実験的な位置づけで、活字ほどの精度は期待できない
- 表や複雑なレイアウトの構造化(セル単位の抽出など)は主目的ではない
- 全角日本語を含むパスにアプリを置くと起動に失敗することがある
- 起動には1GB以上の空きメモリが必要で、極端に非力な環境では動かない
- サポート窓口は商用サービスのような形では用意されておらず、基本的に自己解決が前提
類似サービスとの比較
| 比較項目 | NDLOCR-Lite | NDLOCR(フル版) | YomiToku | Google Cloud Vision OCR |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | 国立国会図書館 | 国立国会図書館 | 個人開発(OSS) | |
| 動作環境 | CPUのみで可 | GPU推奨 | GPU推奨 | クラウド(API) |
| ライセンス | CC BY 4.0 | CC BY 4.0 | CC BY-NC-SA 4.0 | 商用サービス |
| 料金 | 無料 | 無料 | 非商用は無料 | 従量課金 |
| 得意分野 | 近代の活字資料・縦書き | 大量の資料デジタル化 | レイアウト解析込みの日本語文書 | 多言語・汎用 |
| データの外部送信 | なし | なし | なし | あり |
こんな人におすすめ
- 手元にある紙の書籍・雑誌・冊子をテキスト化して検索できるようにしたい人
- 縦書きの日本語資料を扱っており、汎用OCRの精度に満足できなかった人
- 機密資料や個人情報を含むため、クラウドOCRに画像を送りたくない組織
- 図書館・アーカイブ・郷土資料館など、資料のデジタル化を予算をかけずに進めたい現場
- コマンドラインで大量の画像を一括処理し、後段の処理につなげたい開発者・研究者
まとめ
NDLOCR-Liteは、国立国会図書館が長年の資料デジタル化で培った知見を、GPUなしのPCでも動く形にまとめた無料のOCRツールである。近代以降の日本語活字資料、とくに縦書きの書籍・雑誌に強く、TEIや透明テキスト付きPDFといった実用的な出力形式を備える。手書きや複雑な表組みには限界があるものの、「手元の資料をローカルで安全にテキスト化する」という目的にはまず試す価値がある選択肢だ。GUIアプリ版が用意されているので、まずはアプリで数枚の画像を試し、量が増えてきたらコマンドライン版へ移行するとよい。