Music AIは、音楽・オーディオ向けのAIモデルをAPIとして提供するプラットフォームである。運営元は2019年創業の同名企業で、ミュージシャン向けアプリ「Moises」でも知られる。同社は米国・ブラジル・ヨーロッパにチームを持ち、1日あたり200万分を超える音声を処理していると公表している。中核となるのは、権利者への配慮を明示した「エシカルAI」による高品質な音源分離(ステム分離)で、そこに歌詞認識、コード検出、楽曲識別、メタデータ解析、AIミキシング/マスタリングといったモジュールが積み重なる構成になっている。自社サービスに音声AI機能を組み込みたい開発者が主な想定ユーザーで、REST APIに加えてPython/Node.js向けのSDKが用意されている。
主な特徴
- 高品質なステム分離: ボーカル・ベース・ドラム・ギター・ストリングス・ピアノ・キーボード・管楽器などを、ミックス済みの音源から個別のトラックとして取り出せる。カラオケ音源の生成、リミックス、耳コピ支援などに使われる
- 歌詞・コードの自動認識: 歌唱音声から歌詞をテキスト化し、タイムライン上に整列させる。コード進行やキー、ベース音の検出にも対応しており、練習用譜面や楽曲解析に活用できる
- 楽曲識別とメタデータ解析: 大規模なカタログから楽曲を特定する識別モジュールと、ジャンル・ムードなどの高度なメタデータを付与する解析モジュール(Cyanite)を備える。音楽ライブラリの整理や検索性の向上に向く
- AIミキシング/マスタリング: マルチトラックのミキシングをAIが担うモジュール(ROEX)を統合し、仕上げ工程まで自動化できる
- ワークフローとして組み合わせられる: 各モジュールは「部品」として設計されており、複数を連結して独自のワークフローを構成できる。
music-ai/stems-vocals-accompanimentのようなテンプレートワークフローも用意されている - 開発者向けのAPIとSDK: 音声ファイルのURLとワークフロー名を指定してジョブを作成し、状態をポーリングして結果を受け取る素直な設計。Python/Node.js のSDKとEmbedded SDKが提供されている
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Pay as You Go | $0(従量課金) | 使った分だけ支払う方式。モジュールごとの単価は $0.0005/分〜$1.2/分。一時保存は48時間、同時実行は2ジョブ |
| Professional | 月額 $25 | 月 $25 分のクレジット付き(期間限定の提供内容)。永続ストレージ100GB、同時実行10ジョブ、全モジュール5%割引 |
| Business / Enterprise | 要問い合わせ | SLA、専任のインテグレーションエンジニア、ボリュームディスカウント、高スループット処理。専用モデルの構築や自社ストレージ接続はオプション |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 音源分離の品質が高く、商用製品に組み込める水準のモデルを自前で学習せずに使える
- 分離・歌詞・コード・識別・メタデータ・マスタリングが1つのAPIに揃っており、複数ベンダーを組み合わせる必要がない
- 従量課金から始められるため、小規模な検証にコストをかけずに着手できる
- モジュールを連結してワークフロー化できるため、用途に合わせた処理を組み立てやすい
- 権利者への配慮を明示した学習方針を掲げており、商用利用時の説明がしやすい
⚠️ デメリット
- 基本的に開発者向けのプラットフォームであり、GUIだけで完結させたい人には向かない(その用途には同社のMoisesが該当する)
- モジュールごとに単価が大きく異なるため、処理内容によっては費用の見積もりが読みにくい
- 従量課金プランでは保存期間が48時間に限られ、結果の保持は利用側で設計する必要がある
- 同時実行数に上限があり、大量のバッチ処理では上位プランや個別相談が前提になる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Music AI | Moises | AudioShake | LANDR |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | API/SDK(開発者向け) | アプリ(一般ユーザー向け) | API中心 | Webサービス中心 |
| 得意領域 | 分離・歌詞・コード・解析・マスタリング | 練習・演奏支援 | 音源分離 | マスタリング・配信支援 |
| 主な利用者 | 製品に音声AIを組み込む開発者 | ミュージシャン・学習者 | 音楽業界・権利者向け事業者 | インディーアーティスト |
| 運営元 | Music AI(Moisesと同一) | Music AI | AudioShake | LANDR |
| 従量課金 | あり | 月額中心 | 要問い合わせ | 月額中心 |
こんな人におすすめ
- 自社の音楽アプリやWebサービスに、カラオケ生成・パート分離・歌詞表示などの機能を追加したい開発者
- 大量の楽曲ライブラリにメタデータを付与し、検索性やレコメンドを改善したい音楽配信・ストック音源事業者
- 音源分離モデルを自前で学習・運用するコストを避けたいスタートアップ
- 分離から仕上げまでを1本のパイプラインとして自動化したい制作・配信の現場
- まず小さく試して、成果を見てから本格導入したいチーム
まとめ
Music AIは、音源分離を核に音楽向けAI機能をまとめて提供する開発者向けプラットフォームである。歌詞・コード・識別・メタデータ・マスタリングまでを同じAPIから呼び出せるため、複数のベンダーをつなぎ合わせる手間を省ける点が大きい。一方で、GUIだけで完結させたい人には同社のMoisesのほうが適しており、用途によって入口を選び分ける必要がある。従量課金で小さく検証し、処理量が増えた段階でProfessional以上を検討するのが現実的な進め方になる。