MOVE(Move AI)は、英国の Move AI Ltd. が開発するAIモーションキャプチャプラットフォーム。専用スーツも反射マーカーも使わず、普通のカメラで撮った映像から人物の3Dモーションを抽出できるのが最大の特徴である。スマートフォン1台で撮った動画を使う手軽な運用から、複数カメラを組んで精度を追い込むスタジオ用途まで同じ基盤でカバーする。抽出したモーションはFBXやBVHといった標準形式で書き出せるため、UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジン、BlenderやMayaといったDCCツールにそのまま持ち込める。従来のモーションキャプチャは専用スタジオと高額な機材が前提だったが、MOVEはその前提を「手元のカメラ」まで引き下げようとしているサービスだといえる。
主な特徴
- スーツ・マーカー不要のマーカーレスキャプチャ: 演者に機材を装着させる必要がないため、着替えやキャリブレーションの手間が大きく減る。普段着のまま、あるいは衣装を着たままの撮影でもモーションを取得できる
- 単一カメラと複数カメラの使い分け: iPhoneなど1台のカメラで手軽に収録するモードと、複数台のカメラを配置して精度を高めるマルチカムのモードを用途に応じて選べる。試作段階は単一カメラ、本番収録はマルチカム、といった段階的な運用ができる
- ハンドトラッキング技術「Dex」: 全身のモーションに加えて、指先の細かな動きまで捉える。手話や楽器演奏、道具の扱いなど、手の表現が意味を持つシーンで効いてくる
- 複数人の同時トラッキングとリアルタイム対応: 最大20人規模の同時トラッキングに対応し、ライブ配信やバーチャルイベントなどリアルタイムの用途にも使える
- FBX/BVHエクスポートとエンジン連携: 出力は業界標準のFBX/BVH形式。Unity/Unrealへ直接組み込めるため、既存のアニメーションパイプラインに載せやすい
- iOSアプリとWebコンソール、API: 収録はiOSアプリ、処理と管理はWebコンソール、自動化や自社ツールへの組み込みは開発者向けAPI、と役割が分かれている
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 無料プラン | $0 | クレジットの無料枠で処理を試せる。まずは出力品質の確認に使う想定 |
| 有料プラン(クレジット制) | 要問い合わせ | 月次・年次でクレジットが付与され、動画の長さと使用モデルに応じて消費する。付与分を超えた場合は従量課金 |
| スタジオ/エンタープライズ | 要問い合わせ | マルチカムを前提としたシステム構築、大規模収録、導入支援を含む個別見積もり |
料金は2026年8月時点の情報です。MOVEの料金はクレジット制で、プラン構成や単価は改定されることがあります。最新の料金・クレジット単価は公式サイトおよび料金ドキュメントをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 専用スタジオや高額な光学式機材がなくても3Dモーションを取得でき、導入コストと準備時間を大幅に下げられる
- スーツ着用が不要なため、演者の負担が軽く、撮影場所の自由度も高い
- FBX/BVHという標準形式で書き出せるので、既存のゲーム制作・映像制作パイプラインに組み込みやすい
- 単一カメラから複数カメラまで同じサービス内で段階的にスケールできる
- 指の動きまで取るDex、最大20人の同時トラッキング、リアルタイム配信と、対応シーンの幅が広い
⚠️ デメリット
- 料金がクレジット制で、公開情報だけでは総額が読みにくい。継続利用の前に想定尺からの試算と問い合わせが必要
- 光学式マーカーの高精度キャプチャと比べると、遮蔽(体の一部が隠れる)や高速な動きでは精度が落ちやすい
- 出力されたモーションはそのまま使えるとは限らず、足の滑りやジッターの補正など、後処理の工程を見込んでおく必要がある
- 撮影条件(照明・背景・カメラ配置・フレームレート)の影響を受けるため、安定した品質を出すには撮影側のノウハウが要る
- マルチカム運用ではカメラの台数分の機材と設営の手間が発生し、「手軽さ」は単一カメラ運用ほどではない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | MOVE | Rokoko Vision | DeepMotion(Animate 3D) | Plask Motion |
|---|---|---|---|---|
| 方式 | マーカーレス(単一/複数カメラ) | マーカーレス(1〜2カメラの映像) | マーカーレス(動画アップロード) | マーカーレス(動画アップロード) |
| 主な用途 | ゲーム・映像制作、ライブ配信 | 手軽な収録、Rokokoスーツ製品との併用 | アバター向けアニメーション生成 | ブラウザ内での収録・編集 |
| 手指のトラッキング | 対応(Dex) | 限定的 | オプション的な扱い | 限定的 |
| 複数人の同時収録 | 対応(最大20人規模) | 限定的 | 限定的 | 限定的 |
| リアルタイム利用 | 対応 | 別製品(スーツ側)が中心 | 非中心 | 非中心 |
| 主な出力 | FBX / BVH | FBX / BVH 等 | FBX / BVH / GLB 等 | FBX / BVH 等 |
| 料金 | 無料枠あり+クレジット制の有料プラン | 無料枠あり+有料プラン | 無料枠あり+有料プラン | 無料枠あり+有料プラン |
高精度が最優先で予算も確保できる現場では、依然としてマーカー式の光学キャプチャ(Vicon、OptiTrackなど)が選ばれる。MOVEを含むマーカーレス系は「そこまでの精度は要らないが、量とスピードが欲しい」領域を埋める位置づけになる。
こんな人におすすめ
- モーションキャプチャスタジオを借りずに、自社やスタジオ内でモーションを内製したいゲーム・映像制作チーム
- キャラクターアニメーションの試作を大量に回したい個人開発者やインディーゲームスタジオ
- VTuber・バーチャルイベントなど、複数人のリアルタイム配信を扱う運営者
- 手や指の動きを含めたモーションが必要な、スポーツ解析・教育・リハビリ分野の実務者
- まずは手持ちのスマートフォンでモーションキャプチャを試してみたい学習者
まとめ
MOVEは、マーカーレスAIモーションキャプチャの中では対応範囲が広い部類のサービスである。単一カメラでの手軽な収録と複数カメラでの高精度収録を同じ基盤で扱え、Dexによる指のトラッキング、最大20人規模の同時トラッキング、リアルタイム配信まで守備範囲に入る。FBX/BVHでの書き出しに対応しているため、既存の制作パイプラインへ載せる際の障害も小さい。
一方で、料金がクレジット制であること、そして出力に後処理が必要になりうることは、導入前に見積もっておくべき点だ。まずは無料枠で自分の撮影環境の映像を処理してみて、出てくるモーションの品質と後処理の手間を実測してから、有料プランやスタジオ構成の検討に進むのが現実的である。