Rand Arete が公開しているオープンソースのエージェントメモリ基盤。Claude Code はセッションを閉じると文脈を失うが、Mnemosyne を挟むと「前に決めたこと」「気づいたこと」がローカルのデータベースに蓄積され、次のセッションでも呼び出せるようになる。Rust と LibSQL で実装され、ベクトル検索・全文検索・グラフ探索を組み合わせたハイブリッド検索でミリ秒単位の想起を実現する。Model Context Protocol(MCP)サーバーとして Claude Code に接続する形で使い、データはすべて手元に残る。初版 v1.0.0 は 2025 年 10 月 27 日公開、ライセンスは MIT。
主な特徴
- ハイブリッド検索による高速な想起: ベクトル類似度(70%)・FTS5 による全文検索(20%)・メモリ間リンクのグラフ探索(10%)を重み付けして統合。公式が示すベンチマークでは検索が約 1.6ms、保存が約 2.3ms と、体感待ち時間のない水準で応答する
- 意味づけされたメモリ型と双方向リンク: 記録は Insight(気づき)・Architecture(構成)・Decision(決定)・Task(作業)・Reference(参照)に分類され、関連するメモリ同士がリンクでつながる。単なるログの山ではなく、あとから辿れる知識のネットワークとして育つ
- メモリの自動整理(Evolution System): 重複したメモリの統合、重要度スコアの再計算、使われないリンクの減衰、古い記録のアーカイブを自動で行う。放置しても肥大化しにくい設計になっている
- 4 つの専門エージェントによる協調実行: Orchestrator(作業キューと依存関係、デッドロック検出)、Optimizer(コンテキスト予算の配分)、Reviewer(品質ゲート)、Executor(実行とタイムアウト管理)が役割分担する。Rust のアクターモデル(Ractor)上で動く
- MCP サーバーとして Claude Code に接続: OODA ループ(Observe / Orient / Decide / Act)に沿った 8 つのツール(recall、list、graph、context、remember、consolidate、update、delete)を提供。インストールスクリプトが MCP の設定まで面倒を見る
- ローカル完結とその周辺ツール: データは手元の LibSQL に保存され、外部サービスへ送られない。あわせて CRDT ベースの協調エディタ ICS(Interactive Collaborative Space、Vim モード・13 言語のシンタックスハイライト対応)、リアルタイム監視ダッシュボード
mnemosyne-dash、リモートアクセス用の gRPC API が同梱される
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| オープンソース版(MIT ライセンス) | $0 | 全機能を自分の環境で利用可能。セルフホスト前提 |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
ソフトウェア自体は無料だが、メモリ保存時の自動要約など LLM を使う一部の機能では Anthropic API キーの設定が必要で、その分の API 利用料は別途かかる。
メリット・デメリット
✅ メリット
- Claude Code のセッションをまたいで文脈が引き継がれ、同じ説明を毎回やり直す手間が減る
- データがローカルに閉じるため、業務コードや社内固有の判断を記録しても外部に出ない
- git リポジトリや CLAUDE.md からプロジェクトを自動認識するため、プロジェクトごとの記憶の切り分けを手作業でやらずに済む
- Rust 実装で軽量かつ高速。メモリ 1,000 件あたり約 800KB とストレージ消費も小さい
- MIT ライセンスの完全なオープンソースで、内部実装を読んで挙動を確かめられる
⚠️ デメリット
- 導入は Rust 1.75 以上・Python 3.10〜3.13・uv といった開発環境の準備が前提で、非エンジニアが気軽に試せるものではない
- 公式ドキュメントの記載時点で、MCP ツールのうち検索(recall)と統合(consolidate)は実装途上とされている。使う前に現在の対応状況を確認したい
- PyO3 の制約により Python 3.14 以降には対応しない
- GUI はなく、ターミナル中心の操作になる
- 公開されているリリースは 2025 年 11 月の v2.3.1 が最新で、その後の更新頻度は読みにくい。個人開発のプロジェクトであることを踏まえて採用判断したい
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Mnemosyne | mem0 | Basic Memory | Letta |
|---|---|---|---|---|
| 主な用途 | Claude Code への永続メモリ付与とエージェント協調 | アプリ・エージェント全般のメモリ層 | Markdown ファイルとして記憶を残す | 記憶を持つエージェントの構築・運用 |
| 実装言語 | Rust | Python | Python | Python |
| データの持ち方 | ローカルの LibSQL(ベクトル+全文+グラフ) | ベクトルDB(セルフホスト / マネージド) | ローカルの Markdown ファイル | データベース(セルフホスト / クラウド) |
| 提供形態 | オープンソースのみ(MIT) | オープンソース+マネージド版 | オープンソース | オープンソース+クラウド版 |
| 特徴的な点 | 4 エージェント協調・ICS エディタ・gRPC | 幅広いフレームワーク連携 | 記憶を人間が直接読み書きできる | エージェントの状態管理まで含む |
こんな人におすすめ
- Claude Code を日常的に使っていて、セッションのたびに前提を説明し直すのが負担になっている開発者
- 設計上の決定やハマりどころを、プロジェクト単位で蓄積して後から検索したい人
- コードや業務上の判断を扱うため、記憶を外部サービスに預けたくない人
- Rust 製ツールのセルフホストに抵抗がなく、環境構築を自分で進められる人
- エージェント間の役割分担やメモリ設計そのものに関心があり、実装を読んで学びたい人
まとめ
Mnemosyne は、Claude Code の弱点である「セッションをまたぐと文脈が消える」問題に、ローカル完結のセマンティックメモリで答えるオープンソースプロジェクトである。ハイブリッド検索の速さ、メモリ型と双方向リンクによる構造化、4 エージェントの協調実行と、機能面の作り込みは個人プロジェクトとしてはかなり厚い。一方で導入には開発環境の準備が要り、一部機能は実装途上と明記されている。まずは小さめのプロジェクトで試し、記憶が実際に効いてくる感触を確かめてから本格導入を判断するのが現実的だろう。