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memsearch ─ Markdownを正としMilvusで検索する、AIコーディングエージェント向けの記憶レイヤー

ベクトルデータベース Milvus を開発する Zilliz が公開した、AIコーディングエージェント向けの記憶(メモリ)レイヤー。エージェントとの会話を自動で書き留め、次のセッションで関連する内容だけを呼び戻す仕組みを提供する。記憶の実体はただの Markdown ファイルで、人が読んで直接編集でき、Git でバージョン管理もできる。検索用の索引は Milvus に持たせるが、Markdown 側が常に正であり、索引は壊れてもいつでも再構築できる。Claude Code・Codex CLI・OpenClaw・OpenCode・DeepSeek Harness といった複数のエージェントにプラグインとして導入でき、同じ Milvus を共有すればツールをまたいで記憶を持ち回れる。MITライセンスのオープンソースで、GitHub では 2,500 を超えるスターを集めている。

主な特徴

  • Markdown が正、ベクトル索引は従: 記憶は .md ファイルとして保存される。中身を目で確認でき、エディタで書き換えられ、Git の差分にも乗る。Milvus 側の索引は Markdown から再生成できる「影」の位置づけなので、索引が壊れても記憶そのものは失われない
  • ハイブリッド検索(密ベクトル + BM25 + RRF): 意味の近さを見る密ベクトル検索と、キーワード一致を見る BM25 を併用し、RRF(Reciprocal Rank Fusion)で結果を統合する。「言い回しは違うが意味は同じ」も「固有名詞のピンポイント一致」も拾えるため、どちらか片方だけの検索より取りこぼしが少ない
  • SHA-256 による重複排除: チャンク(分割された文章の断片)の内容をハッシュ化して識別するため、変わっていない部分は再度ベクトル化しない。初回の索引作成は時間がかかるが、以降の再索引はほぼ一瞬で終わる。埋め込みAPIの利用料も抑えられる
  • ファイル監視による自動再同期: ファイルウォッチャーが Markdown の変更を検知して索引を更新し、消えた内容に対応する古いチャンクも取り除く。手動で「保存」や「再インデックス」を叩く必要がない
  • LLMによる記憶の圧縮(コンパクション): 古くなった記憶をLLMに要約させてまとめる。放っておくと際限なく膨らむ記憶を、検索に耐える密度に保つための仕組み
  • 段階的な開示(progressive disclosure): 検索ではまず要約が返り、必要に応じてセクション全文、さらに元の会話ログへと掘り下げる三段構え。エージェントのコンテキストを無駄に埋めずに済む
  • 複数エージェント間での記憶共有: Claude Code・Codex CLI・OpenClaw・OpenCode・DeepSeek Harness に対応。Markdown の形式は共通で、コレクション名はプロジェクトのディレクトリから導出されるため、同じプロジェクトを別のエージェントで開いても記憶が引き継がれる

料金

プラン料金主な特徴
memsearch 本体無料(MITライセンス)全機能。uv tool install memsearch などで導入
埋め込み(ONNX ローカル)無料既定は bge-m3 をCPUでローカル実行。外部APIに送らない
埋め込み(OpenAI / Google / Voyage / Jina / Mistral など)各社の従量課金精度や速度を優先する場合の選択肢
Milvus Lite(ローカル)無料既定のバックエンド。単独利用向け
Milvus Server(自前ホスト / Docker)無料(サーバー費用は自己負担)複数エージェントで共有する場合
Zilliz Cloud公式サイト参照マネージド運用。本番用途向け

料金は2026年8月時点の情報です。memsearch 自体はオープンソースで無料ですが、埋め込みプロバイダやマネージドバックエンドを使う場合は各サービスの料金が別途かかります。最新の情報は公式サイトをご確認ください。

メリット・デメリット

メリット

  • 記憶が Markdown なので中身がブラックボックスにならない。何が覚えられているかを目で確かめ、要らない記憶を手で消せる
  • 既定構成(ONNX + Milvus Lite)なら外部APIキーもクラウド契約も不要で、完全にローカルで動く。社外に出せないコードを扱う環境でも導入しやすい
  • 密ベクトルとBM25の併用により、曖昧な言い回しの検索と固有名詞の一致検索の両方に強い
  • SHA-256 の重複排除で再索引が速く、埋め込みのコストも積み上がりにくい
  • 複数のエージェントを併用していても、同じ記憶を共有できる
  • MITライセンスのオープンソースで、ベンダーロックインの懸念が小さい

⚠️ デメリット

  • CLIとプラグインが前提で、GUIは用意されていない。セットアップには uvpip でのインストール、バックエンドの選択といった作業が必要
  • Windows では Milvus Lite のバイナリが提供されておらず、Docker・WSL2・Zilliz Cloud のいずれかを選ぶ必要がある
  • 初回の索引作成には時間がかかる(2回目以降は速い)
  • 埋め込みプロバイダを途中で変えると次元数が合わなくなり、索引の作り直しが要る
  • プラグインの成熟度はエージェントごとに差があり、Claude Code 向けが最も整っている
  • リリースの頻度が高く機能が動いている段階のため、運用に組み込むならバージョンを固定する判断が要る

類似サービスとの比較

比較項目memsearchMem0Letta(旧MemGPT)エージェント標準のメモリ
提供元ZillizMem0Letta各エージェント提供元
記憶の実体Markdown ファイル独自ストア(マネージド/OSS)エージェント状態として保持設定ファイル・独自形式
検索方式密ベクトル + BM25 + RRFベクトル検索中心エージェント自身が記憶を管理主に全文・単純参照
主な想定コーディングエージェントの長期記憶アプリ/エージェント全般の記憶API記憶を持つ自律エージェント構築単一ツール内の設定・文脈
ツール横断対応(Milvus共有)対応(API経由)構築次第基本的に不可
ローカル完結可能(ONNX + Milvus Lite)セルフホスト構成なら可能可能可能
ライセンスMITOSS版ありOSS版ありツールに準ずる

こんな人におすすめ

  • Claude Code や Codex CLI を毎日使っていて、「前回の会話で決めた方針」を毎回説明し直すのに疲れている人
  • 複数のコーディングエージェントを使い分けており、記憶をツールごとに分断したくない人
  • AIに何を覚えさせているかを可視化・監査したい人。Markdown なので Git 管理もレビューもできる
  • 社外にコードや会話を出せない環境で、ローカル完結の記憶レイヤーを探している開発者
  • すでに Milvus / Zilliz Cloud を使っており、既存のベクトル基盤を活かしたいチーム

まとめ

memsearch は、AIエージェントの記憶を「専用データベースの中の見えない何か」ではなく「読める Markdown ファイル」として扱う点に一貫した設計思想がある。ベクトル索引はあくまで検索を速くするための従属物で、いつでも作り直せる。この割り切りにより、記憶の中身を人が確認・編集・バージョン管理でき、ツールを乗り換えても資産が残る。

一方でCLI前提のセットアップやWindowsでの制約など、導入の手数は小さくない。まずは既定構成(ONNX + Milvus Lite)で1つのプロジェクトに入れてみて、記憶の呼び戻しが実際の作業を楽にするかを確かめてから、共有バックエンドやマネージド運用へ広げるのが現実的だろう。

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