TypeScript 製 AI エージェントフレームワークで知られる Mastra AI が 2026 年 2 月に公開した、ターミナルで動くコーディングエージェント。Apache 2.0 のオープンソースとして提供され、npm install -g mastracode か npx mastracode ですぐに使い始められる。最大の特徴は「Observational Memory(観察記憶)」と呼ばれる仕組みで、会話を強制的に圧縮(コンパクション)せずに文脈を保ち続ける点にある。長時間の作業でも「さっき決めた方針をエージェントが忘れる」という現象が起きにくく、腰を据えた開発に向く。
主な特徴
- Observational Memory による永続的な文脈保持: 会話を監視して要点を「観察」として蓄積し、それを振り返ることで文脈を圧縮する。従来のコーディングエージェントにありがちな、コンテキスト上限に達した時点での強制コンパクションと、それに伴う情報の欠落を避けられる
- Build / Plan / Fast の 3 モード: Plan モードで既存コードを調査して実装計画を立て、Build モードで実際に手を動かす。Fast モードは短い質問や小さな修正のための低レイテンシ用途と、作業の粒度に合わせて切り替えられる
- プロジェクト単位の永続スレッド: 会話スレッドがプロジェクトに紐づいて保存されるため、日をまたいだ作業でも前回の続きから再開できる
- 多数のモデルに接続できるモデルルーター: Anthropic・OpenAI・Google など多数のプロバイダのモデルを扱え、会話の途中でモデルを切り替えて回答を比較することもできる。API キーのほか、Claude Max や ChatGPT Plus の既存サブスクリプション経由の認証にも対応する
- ファイル操作・シェル・Web 検索などのツール群: ファイルの閲覧・編集・検索、シェルコマンドの実行、Web 検索、Git 操作までをエージェントに任せられる
- MCP サーバー対応と拡張性: Model Context Protocol(MCP)サーバーを接続して機能を拡張できるほか、Mastra フレームワークの上に構築されているため、カスタムツール・サブエージェント・ストレージをプログラムで追加できる
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Mastra Code 本体 | 無料(Apache 2.0 オープンソース) | ターミナルエージェントの全機能。Mastra への支払いは発生しない |
| LLM 利用料 | 各プロバイダへの実費 | 自分の API キー、または Claude Max / ChatGPT Plus 等の既存サブスクリプションを利用 |
| Mastra Cloud(別サービス) | Starter は無料、Teams は月額 $250、Enterprise は要問い合わせ | エージェントのホスティング・可観測性・運用向け。Mastra Code の利用に必須ではない |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- コンパクションによる文脈の欠落が起きにくく、長時間・大規模なセッションでも方針がぶれにくい
- Apache 2.0 のオープンソースで、ツール本体の利用料が発生しない
- モデルを固定されず、用途やコストに応じて多数のプロバイダから選べる
- Plan / Build / Fast のモード分けにより、調査と実装を意識的に分けて進められる
- MCP 対応とフレームワーク基盤により、自分の環境に合わせて拡張しやすい
⚠️ デメリット
- ターミナル前提の CUI ツールのため、GUI エディタ中心の人には最初のハードルがある
- Node.js 22.13.0 以降が必要で、実行環境の準備が要る
- LLM の利用料は自己負担のため、使い方によっては API 課金が膨らむ
- 2026 年 2 月公開と歴史が浅く、成熟した競合と比べると情報や事例の蓄積が少ない
- Observational Memory はモデルを消費する仕組みのため、記憶処理そのものにもコストがかかる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Mastra Code | Claude Code | OpenCode | Gemini CLI |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Mastra AI | Anthropic | OpenCode | |
| 動作形態 | ターミナル | ターミナル | ターミナル | ターミナル |
| ライセンス | オープンソース(Apache 2.0) | プロプライエタリ | オープンソース | オープンソース |
| モデルの選択 | 多数のプロバイダから選択可 | Claude 系 | 複数プロバイダ対応 | Gemini 系 |
| 文脈管理 | Observational Memory(非コンパクション) | 自動コンパクション | 自動コンパクション | 自動コンパクション |
| 費用 | ツールは無料、LLM は実費 | サブスクリプションまたは API 従量 | ツールは無料、LLM は実費 | 無料枠あり |
こんな人におすすめ
- 長時間のリファクタリングや大規模な調査で、エージェントに文脈を保ち続けてほしい開発者
- 特定ベンダーのモデルに固定されず、用途ごとにモデルを選び分けたい人
- オープンソースであることを重視し、必要なら中身を読んで改造したい人
- MCP サーバーやカスタムツールを組み合わせて、自分専用のエージェント環境を作りたい人
- すでに Mastra フレームワークでエージェントを開発していて、同じ思想のツールを手元でも使いたい人
まとめ
Mastra Code は、ターミナル型コーディングエージェントの弱点として指摘されがちな「コンテキスト圧縮による文脈の喪失」に、Observational Memory という設計で正面から取り組んだツールである。ツール自体は Apache 2.0 のオープンソースで無料、モデルは自分で選ぶ方式のため、費用の見通しを自分でコントロールしやすい。まだ公開から日が浅く事例は少ないが、長時間のセッションで文脈が崩れることに悩んでいるなら、npx mastracode で試してみる価値がある。