Claude CodeやCodexのようなAIコーディングエージェントを同時に何本も走らせると、どのターミナルで何が起きているのか分からなくなってくる。Maestriは、その混乱を「1枚の無限キャンバス」で解決しようとするデスクトップアプリである。ターミナルを自由に配置できるノードとして扱い、ノード同士をドラッグで線でつなぐと、エージェント同士がPTY経由で直接やり取りしながら協調して作業を進める。開発しているのはブラジル在住の個人開発者Evert Junior氏で、アカウント登録は不要、テレメトリも一切なく、データはすべて手元のマシンに保存される。macOSとWindowsに対応している。
主な特徴
- エージェント同士を線でつないで連携させる: キャンバス上のターミナルノード間に接続を引くと、エージェント同士がPTY(疑似端末)を通じて直接プロンプトをやり取りする。片方の出力をもう片方に手でコピーする必要がない
- 無限キャンバスで全体を俯瞰する: ターミナル、スティッキーノート、ファイルツリー、差分表示、デバイスポータルを好きな場所に配置できる。パン・ズームに制限はなく、プロジェクトごとに作業空間のレイアウトを組める
- Ombro(オンデバイスAIアシスタント): Apple Foundation Modelsを使い、離席中にエージェントが進めた作業を要約してくれる。処理は100%端末内で完結する
- ロール(再利用可能なカスタム指示): 「レビュー担当」「実装担当」といったカスタム指示付きのエージェント設定を保存し、必要なときに呼び出せる。プロジェクトごとの構成をテンプレート化できる
- リモート接続とセッション永続化: SSH・Docker・サンドボックス経由の接続に対応。tmuxを使ってエージェントのセッションをアプリ終了後も維持でき、リモート環境での長時間作業が途切れない
- デバイスポータル: iPhoneシミュレータ、Androidエミュレータ、ブラウザをキャンバス上に埋め込んで表示できる。エージェントの成果物をその場で確認しながら指示を出せる
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Free | $0 | ワークスペース1つ。無限キャンバス、エージェント間接続、ロール、ノート、Ombroなどコア機能はすべて利用可 |
| Pro | $18(買い切り) | ワークスペース無制限、最大2台のMacで利用可、ワークスペース間のナビゲーションショートカット。7日間の無料トライアルあり |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
サブスクリプションではなく一度払いの永久ライセンスという点が、この分野のツールとしては珍しい。無料プランでも機能制限はほぼなく、違いは実質的にワークスペースの数だけである。まず無料で試し、複数プロジェクトを並行して抱えるようになった段階でProを検討する、という流れが自然だろう。
メリット・デメリット
✅ メリット
- エージェント同士を線でつなぐだけで連携させられる、他にあまり例のないUX
- アカウント不要・ゼロテレメトリで、データはすべてローカル保存。業務コードを扱う際の心理的ハードルが低い
- Swift/Metalによるネイティブ実装で動作が軽い
- SSH・Docker・サンドボックス接続とセッション永続化に対応し、リモート開発でも使える
- Proが$18の買い切りで、月額課金が積み上がらない
⚠️ デメリット
- Proのライセンスは最大2台までという台数制限がある
- MCP(Model Context Protocol)には対応していない
- 対応OSはmacOSとWindowsのみで、Linuxでは利用できない
- あくまでオーケストレーション層のツールであり、Claude CodeなどのエージェントCLI本体は別途インストールが必要
- ローカル完結の設計上、クラウド同期や複数人での共同編集はできない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Maestri | Conductor | Warp | Superset |
|---|---|---|---|---|
| 中心となる考え方 | 無限キャンバス上での空間的な配置 | Git worktreeによるエージェント隔離 | ターミナル自体の刷新 | worktree分離+幅広いエージェント対応 |
| エージェント間の直接連携 | 対応(線でつないで会話) | なし | 並行実行が中心 | 並行実行が中心 |
| 対応エージェント | Claude Code / Codex / OpenCode など | Claude Code / Codex | 幅広く対応 | 幅広く対応 |
| 対応OS | macOS / Windows | macOS | クロスプラットフォーム | クロスプラットフォーム |
| データの置き場所 | 完全ローカル(テレメトリなし) | ローカル | クラウド連携あり | ローカル中心 |
Conductorが「エージェントごとにGit worktreeを切って隔離し、レビューとマージの流れに落とし込む」方向なのに対し、Maestriは「複数のエージェントを空間的に並べ、必要に応じて相互に会話させる」方向を選んでいる。整然としたレビューフローが欲しいならConductor、探索的に何本も走らせて全体を眺めたいならMaestri、という住み分けになる。
こんな人におすすめ
- Claude CodeやCodexを複数同時に走らせていて、進行状況の把握に苦労している開発者
- SSHやDocker経由でリモート・コンテナ環境のエージェントを扱っており、それらを1画面で可視化したい人
- 業務コードを扱う都合上、テレメトリやクラウド送信のないローカル完結ツールを選びたい人
- 月額課金を増やしたくなく、買い切りライセンスを好む人
- モバイルアプリやWebの動作確認をしながらエージェントに指示を出したい人
まとめ
Maestriは、AIコーディングエージェントの「並行運用」という新しい悩みに、無限キャンバスという空間的なUIで答えたネイティブアプリである。エージェント同士を線でつないで直接会話させられる仕組みは他にあまり例がなく、複数エージェントを日常的に使う開発者にとっては試す価値がある。一方でMCP非対応、Linux非対応、Pro版の2台制限といった制約もあり、エージェントCLI本体は自分で用意する前提のツールでもある。無料プランでもコア機能はほぼ揃っているので、まずはワークスペース1つの範囲で使い勝手を確かめてみるのがよいだろう。