LEAP は、MIT 発のスタートアップ Liquid AI が提供するオンデバイス AI 開発プラットフォーム。同社が開発する軽量な基盤モデル「LFM(Liquid Foundation Models)」ファミリーを、モデル探索・ファインチューニング・バンドル化・アプリ組み込みまで一気通貫で扱える。特徴は、クラウド API を呼ぶのとほぼ同じ感覚で、端末内に置いたモデルを数行のコードから呼び出せる点にある。iOS・Android のモバイルアプリはもちろん、ノート PC や Raspberry Pi クラスの小型機器まで対象に含まれる。2025 年 7 月にアルファ版として公開され、その後 LFM2.5 世代の投入とともにビジョン・音声・ツール呼び出しへと対応範囲を広げてきた。
主な特徴
- モデルライブラリとモデル検索: LEAP 向けに最適化済みのモデルバンドルをブラウズしてダウンロードできる。用途と端末の制約(メモリ・速度)に合うモデルを探す「Best Model Search」も用意されている
- Leap Edge SDK でアプリに組み込む: 端末内のモデルを、クラウド API を叩くのと同じ感覚でロード・推論できる SDK。Kotlin Multiplatform で実装されており、iOS / macOS / Android / JVM デスクトップ / Linux / Windows に同一 API で対応する(WebAssembly は実験的サポート)
- LFM2 / LFM2.5 ファミリーへの一次対応: モデルを開発しているチーム自身が SDK を提供しているため、チャットテンプレートや特殊トークンの扱いが最初から正しく設定されている。テキストのほか、思考(thinking)・日本語特化・ビジョン・音声の各バリアントが利用できる
- ファインチューニングとモデルバンドリング: GPU 最適化済みスクリプトで LFM2 などを自分のユースケースに合わせて追加学習でき、その結果を配布用のバンドルにパッケージングできる
- ツール呼び出しと構造化出力: 関数呼び出し(function calling)に対応し、Kotlin のアノテーションや Swift のマクロで JSON スキーマをデコード時に強制する「制約付き生成」も備える。端末内で完結するエージェント的な処理を組みやすい
- Liquid Apollo で実機テスト: モデルを実際の端末上で試せるネイティブアプリが用意されており、組み込み前に応答速度や品質を確かめられる
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Free | $0(無期限無料) | モデル検索、モデルライブラリからのダウンロード、ファインチューニングツール、モデルバンドリング、LEAP Edge SDK |
| Enterprise | 要問い合わせ | Free の全機能に加え、独自データや専門知識を要するモデルへの個別サポート、複雑な環境での導入支援 |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- コア機能が無償で使え、個人開発者でもオンデバイス AI を試しやすい
- 推論が端末内で完結するため、通信費・API 従量課金・レイテンシの問題を避けられる
- 入力データが端末外に出ないため、プライバシー要件の厳しい用途に向く
- オフラインでも動作し、電波の届かない環境や機内でも機能が止まらない
- モデル開発元が SDK も出しているため、モデルと実行環境の相性問題が起きにくい
⚠️ デメリット
- 利用できるモデルは基本的に Liquid AI の LFM ファミリー中心で、他社の大規模モデルを自由に載せる用途には向かない
- 軽量モデルである以上、クラウドの大規模モデルと比べれば知識量・推論能力に上限がある
- 端末の性能差(メモリ・チップ世代)によって使えるモデルや体感速度が変わり、動作検証の手間が増える
- アプリにモデルを同梱するとバイナリサイズが大きくなり、配布面での設計が必要になる
- 比較的新しいプラットフォームのため、日本語の実装事例や解説はまだ少ない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | LEAP | Google AI Edge(LiteRT) | Apple Foundation Models | Ollama |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Liquid AI | Apple | Ollama | |
| 主な対象 | iOS / Android / PC / エッジ機器 | Android 中心(iOS も可) | Apple 製デバイスのみ | PC・サーバー |
| 主なモデル | LFM2 / LFM2.5 ファミリー | Gemma など | OS 同梱のオンデバイスモデル | オープンモデル全般 |
| ファインチューニング | 公式スクリプトを提供 | 対応(別ツール) | 限定的(アダプタ方式) | 外部ツール併用 |
| モバイルアプリ組み込み | 得意(SDK 前提) | 得意 | 得意(Apple 限定) | 想定外 |
| 料金 | 無料(Enterprise は要問い合わせ) | 無料 | 無料(OS 標準) | 無料 |
こんな人におすすめ
- 通信環境やプライバシーの制約から、AI 機能を端末内で完結させたいモバイルアプリ開発者
- API の従量課金を抱えずに AI 機能を載せたい個人開発者・小規模チーム
- Raspberry Pi クラスの小型機器や産業機器に AI を組み込みたいエッジ開発者
- iOS と Android の両方に同じ AI 機能を、できるだけ共通の実装で載せたい開発者
- 軽量モデルのファインチューニングから配布までを一つの流れで扱いたいチーム
まとめ
LEAP は、「軽量な基盤モデルを作る会社が、その配り方と載せ方まで面倒を見る」という構成が強みのプラットフォームである。モデル探索・追加学習・バンドル化・SDK 組み込みが一つの導線に収まっており、オンデバイス AI にありがちな「モデル変換と実行環境の相性で詰まる」段差が小さい。クラウドの大規模モデルの代替になるわけではないが、プライバシー・オフライン動作・コストのいずれかが要件に入るなら、まず無料枠でモデルライブラリと Edge SDK を触ってみる価値がある。