IntelliJ IDEA や PyCharm で知られる JetBrains が 2026 年 3 月に公開したスタンドアロンアプリ。同社はこれを「エージェント型開発環境(Agentic Development Environment)」と呼んでいる。特徴は、OpenAI の Codex、Anthropic の Claude Agent、Google の Gemini CLI、そして JetBrains 自身の Junie という 4 種類の AI コーディングエージェントを、1 つの画面で同時に走らせられること。各エージェントは互いに干渉しない独立したタスクループとして動き、Git worktree や Docker コンテナで作業が分離される。エージェントに「投げる」だけで終わらせず、タスクの定義・実行の監視・コードレビューまでを同じ画面で完結させる設計になっている。現在は公開プレビュー版として提供中。
主な特徴
- 4 つのエージェントを並行稼働: Codex・Claude Agent・Gemini CLI・Junie を同じワークスペース内で同時に走らせられる。1 つのエージェントの作業が終わるのを待たずに、別のタスクを別のエージェントへ渡せる
- タスクごとの実行環境を分離: 各タスクは Git worktree または Docker コンテナで隔離される。複数のエージェントが同じファイルを同時に書き換えて壊し合う事故を構造的に防ぐ仕組み。クラウド実行環境も予告されている
- コードを理解した状態でタスクを書ける: 単なるチャット欄ではなく、シンボル名やファイルを直接参照しながら指示を組み立てられる。「どのクラスの、どのメソッドを」を曖昧さなく伝えられる
- レビューまで同じ画面で: エージェントが出した差分を、言語を理解したコードナビゲーション付きで確認できる。定義へのジャンプや参照検索を効かせながらレビューできるのは、IDE ベンダーである JetBrains らしい部分
- ワークスペース単位のタスク管理: 進行中のタスクを一覧で把握し、複数の作業を並行して回せる
- 既存の IDE を置き換えない設計: Air は IntelliJ IDEA などの代わりではなく、エージェントへの委任とレビューを担当する別アプリという位置づけ。手で書く作業は従来の IDE のまま続けられる
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Air 本体(公開プレビュー) | 無料 | プレビュー期間中、Air アプリ自体は無償で利用できる |
| JetBrains AI Pro / Ultimate | 公式サイト参照 | サブスクリプション加入者は 4 種類のエージェントすべてを追加費用なしで利用できる |
| BYOK(自前のキーを持ち込む) | 各社への直接支払い | Anthropic・OpenAI・Google のサブスクリプションや API キーを自分で用意し、各社の通常料金を直接支払う |
料金は2026年8月時点の情報です。プレビュー期間の終了後に体系が変わる可能性があるため、最新の料金は公式サイトおよびJetBrains AI の料金ページをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 複数のエージェントを並べて走らせられるため、待ち時間そのものを減らせる
- worktree / コンテナによる分離が最初から組み込まれており、並行実行の一番の危険どころを自前で用意しなくてよい
- レビュー機能が言語を理解しているので、生成された差分の確認が「テキストの読み比べ」で終わらない
- 特定の AI ベンダーに縛られず、Anthropic・OpenAI・Google・JetBrains の 4 系統を用途に応じて使い分けられる
- 既存の IDE を捨てる必要がなく、エージェント委任の部分だけを追加で試せる
⚠️ デメリット
- 公開プレビュー段階のため、仕様変更や不具合に遭遇する可能性がある
- エージェント自体の利用には JetBrains AI のサブスクリプションか各社のキーが必要で、実質的な費用はゼロではない
- Docker や Git worktree を前提とした機能があり、これらに不慣れだと導入のハードルが上がる
- 複数エージェントを同時に走らせるとマシンのリソースを相応に消費する
- プレビュー期間終了後の料金体系が未確定
類似サービスとの比較
| 比較項目 | JetBrains Air | Cursor | Claude Code | JetBrains IDE + Junie |
|---|---|---|---|---|
| 形態 | スタンドアロンのエージェント環境 | AI 統合エディタ | ターミナル型エージェント | IDE 内蔵のエージェント |
| 複数エージェントの並行実行 | 4 系統を同時に | 主に単一の対話 | 単一セッション中心 | 単一 |
| タスク分離 | worktree / Docker を標準搭載 | 限定的 | 自分で用意する | 限定的 |
| モデルの選択 | Codex / Claude / Gemini / Junie | 複数モデル対応 | Anthropic のモデル | JetBrains 提供のモデル |
| 主な利用シーン | 複数タスクの並行委任とレビュー | 手で書く作業と AI の併用 | ターミナルからの委任 | 慣れた IDE の中で完結 |
こんな人におすすめ
- 複数の改修タスクを抱えていて、AI に順番待ちさせている時間がもったいないと感じている開発者
- Codex と Claude と Gemini を用途で使い分けたいが、ツールを行き来するのが面倒になっている人
- エージェントの生成物をきちんとレビューしてからマージしたい、品質にこだわるチーム
- すでに IntelliJ IDEA や PyCharm を使っていて、同じベンダーのエコシステムで揃えたい人
- 並行実行の分離環境を自前で組むのは避けたい人
まとめ
JetBrains Air は、「AI エージェントに任せる」段階から一歩進んで、「複数のエージェントを同時に動かし、その結果をきちんと確認する」ための道具である。worktree や Docker による分離、言語を理解したレビューといった要素は、IDE を長年作ってきた JetBrains の経験が出ている部分といえる。まだ公開プレビュー段階で料金体系も確定していないため、本格導入の判断は早いが、AI へのタスク委任が日常になっている開発者であれば、無償のプレビュー期間中に一度触れておく価値はある。