米国のInference Shell Inc.が提供するAIワークスペース。画像・動画・音声・テキスト・検索・3Dといった各モダリティのAIモデルを、提供元をまたいで1つのAPIから呼び出せる。加えて、状態の永続化や自動リトライ、Human-in-the-Loop(人の承認を挟む処理)を備えたエージェントの実行基盤も持つ。モデル選定・課金・インフラ管理といった周辺の作業をまとめて引き受けるため、開発者はエージェントやワークフローのロジックそのものに集中できる。Anthropic・OpenAI・Google・xAI・ElevenLabsなど主要プロバイダのモデルに対応し、料金は実行ごとの従量課金が基本になっている。
主な特徴
- 1つのAPIで各社のモデルを横断: Tools(ツール)と呼ばれる100種類以上のアプリを通じて、画像生成・動画・音声・テキスト・検索・3Dの処理を統一されたAPIから実行できる。プロバイダごとに契約や課金を分ける必要がない
- エージェントの実行基盤(Agents): 途中で落ちても続きから再開できる永続的な実行環境を用意し、状態の保持・自動リトライ・人の承認を挟むHuman-in-the-Loopのフローを標準で扱える。長時間かかる処理や、確認を必要とする業務フローに向く
- Skills ─ 再利用できる知識のレジストリ: プロンプトや手順書をバージョン管理された「スキル」として登録し、複数のランタイムから呼び出して使い回せる
- UIコンポーネント: チャット画面や生成結果の表示に使えるReactコンポーネントが用意されており、フロントエンドをゼロから組まずにAIアプリの体裁を整えられる
- Commons と Belt CLI: チームで共有するメモリと自動化の基盤がCommons、スキル・ツール・コネクタ・デプロイをまとめて扱うコマンドラインツールがBelt CLI。Python / JavaScript のSDKも提供される
- 外部サービス連携とMCP対応: Slack・Discord・X・Google Cloud などのコネクタに加え、MCP(Model Context Protocol)サーバーとしての接続にも対応している
料金
| プラン | 月額料金 | 年額料金 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| Starter | $0 | $0 | 同時実行1、20リクエスト/分、履歴保持7日、1シート、ストレージ100MB |
| Pro | $20 | $240(実質$16/月) | クレジット$20分、同時実行5、100リクエスト/分、保持30日、1シート、5GB |
| Team | $200 | $2,400(実質$160/月) | クレジット$200分、同時実行20、500リクエスト/分、保持90日、5シート、51GB |
| Enterprise | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 大規模組織向けの個別対応 |
各プランに含まれるクレジットとは別に、モデルの実行そのものは従量課金となる。画像生成は1枚あたり$0.001〜、動画は秒単位、チャットモデルはトークン単位など、モデルとカテゴリごとに単価が設定されている。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 複数のAIプロバイダとの契約・APIキー管理・請求を1本化できる
- モデルを差し替えても呼び出し側のコードを大きく変えずに済み、特定ベンダーへの依存を避けやすい
- エージェントの永続実行・リトライ・承認フローを自前で作らずに済む
- 無料のStarterプランがあり、費用をかけずに実装の当たりを付けられる
- CLI・SDK・UIコンポーネントが揃っており、試作から運用まで同じ道具立てで進められる
⚠️ デメリット
- 従量課金のため、動画生成など単価の高い処理では費用が読みにくい
- 同時実行数・リクエスト制限・履歴保持期間がプランごとに決まっており、負荷の高い用途では上位プランが前提になる
- 構成要素(Tools / Skills / Agents / UI / Commons / Belt)が多く、全体像をつかむまでに学習コストがかかる
- 各モデルの最新機能をそのまま使いたい場合、提供元のAPIを直接叩くほうが早いことがある
- 日本語のドキュメントや事例はまだ少ない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | inference.sh | OpenRouter | Replicate | LangGraph Platform |
|---|---|---|---|---|
| 主な役割 | モデル横断API+エージェント実行基盤 | LLMのルーティング・統一API | 機械学習モデルのホスティング・実行 | エージェントの構築・運用基盤 |
| 対応モダリティ | 画像・動画・音声・テキスト・検索・3D | テキスト中心(一部マルチモーダル) | 画像・動画・音声・テキストなど幅広い | フレームワーク依存 |
| エージェント実行 | 永続実行・リトライ・承認フローを標準装備 | 対象外 | 対象外(モデル実行が中心) | 中核機能 |
| 料金体系 | サブスク+従量課金 | 従量課金 | 従量課金(実行秒数) | 従量課金+プラン |
| 無料枠 | あり(Starter) | あり(一部モデル) | あり(試用枠) | あり |
こんな人におすすめ
- 複数のAIプロバイダを使い分けていて、APIキーと請求の管理が煩雑になっている開発者
- 途中で止まると困る長時間のAI処理を、リトライや状態保持まで含めて任せたいチーム
- 人の承認を挟むワークフロー(下書きの確認、公開前チェックなど)をエージェントに組み込みたい人
- 画像・動画・音声を横断するアプリを作りたいが、個別のAPIを繋ぎ込む手間を省きたい人
- 特定ベンダーに固定されない構成で、AI機能を試作したい人
まとめ
inference.shは、各社のAIモデルを1つのAPIにまとめる「統一レイヤー」と、エージェントを落とさず動かし続ける「実行基盤」を1つのサービスに束ねたAIワークスペースである。単にモデルを呼びたいだけならより単純な選択肢もあるが、永続実行・リトライ・人の承認を伴う処理まで含めて任せたい場合は候補になる。無料のStarterプランで小さく試し、使う量が見えてきた段階でProやTeamを検討するとよい。