HubSpot Breeze は、CRM プラットフォームの HubSpot が 2024 年 9 月に発表した AI 機能群の総称である。チャット形式で指示を出せる「Breeze Assistant」、マーケティング・営業・カスタマーサービスの定型業務を自動で進める「Breeze エージェント」、企業・担当者データを補完する「Breeze Intelligence」の 3 つが柱になっている。最大の特徴は、AI が参照するデータが自社の CRM そのものだという点である。汎用チャット AI に顧客情報を貼り付ける必要がなく、商談・問い合わせ・コンタクト情報を踏まえた回答や作業をそのまま任せられる。なお 2026 年 8 月時点の公式サイトでは、エージェント機能が「Agent Hub」という名称で前面に打ち出されており、Breeze は Assistant や Intelligence を含む AI 機能の呼称として使われている。
主な特徴
- Breeze Assistant(対話型アシスタント): HubSpot の画面内から自然な言葉で指示を出すと、CRM のデータを踏まえてメール文面・ブログ記事・レポートの下書きなどを生成する。エージェントを作るときも、やりたいことを言葉で説明すれば設定を組み立ててくれる
- 用途別のプリセットエージェント: コンテンツ生成の Content Agent、見込み客の発掘とアプローチを担う Prospecting Agent、問い合わせ対応の Customer Agent、CRM への質問に答える Data Agent などが標準で用意されている。オンにするだけで使い始められる
- Agent Builder による自作エージェント: 既製のエージェントで足りない業務は、Agent Builder で自社向けのエージェントを組める。トリガー・参照データ・実行内容を指定して、社内の運用フローに合わせられる
- Breeze Intelligence(データ補完・意図検知): 不足している企業情報や担当者情報を補完し、Web サイト訪問者の購買意欲のシグナルを検知する。フォームの入力項目を短縮して離脱を減らす機能も含まれる
- CRM と同一基盤で動く: 別サービスとの連携設定やデータ書き出しが不要で、HubSpot 上のコンタクト・取引・チケットをそのまま参照する。作業結果も CRM に記録される
- 既存プランに同梱: AI 機能を使うために別契約を結ぶ必要はなく、Starter・Professional・Enterprise の各プランに含まれる形で提供される
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| HubSpot の各プラン(Starter / Professional / Enterprise) | 各プランの料金に含まれる | Breeze Assistant・プリセットエージェント・Agent Builder を利用可能。プランごとに「HubSpot クレジット」が一定量付与される |
| HubSpot クレジット(追加購入) | 従量課金 ─ 単価は公式の価格カタログを参照 | エージェントの実行や Breeze Intelligence のデータ補完で消費。超過分は月次後払いで、10 クレジット単位で課金される |
Breeze の料金は「プラン料金 + クレジット消費」の二階建てになっている。Customer Agent・Prospecting Agent・Data Agent、および Data Studio の同期などがクレジットを消費する対象で、消費量は実行した件数に応じて決まる。プランごとの付与クレジット数と 1 件あたりの消費量は公式のカタログに記載されており、契約内容によって変わるため、導入前に自社の想定件数と突き合わせて確認するのが確実である。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトおよびクレジットの解説ページをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- CRM のデータをそのまま参照するため、顧客情報をコピーして貼り付ける手間や情報漏えいの不安が少ない
- 既存の HubSpot プランに含まれており、AI 利用のために別サービスを契約・接続する必要がない
- 用途別のエージェントが最初から用意されているので、AI に詳しくなくてもオンにするだけで試せる
- マーケティング・営業・サポートの各業務が同じデータ基盤の上で連携する
- Agent Builder により、既製品では埋まらない自社固有の業務も自動化できる
⚠️ デメリット
- HubSpot を使っていることが前提で、他の CRM を使う組織には導入できない
- クレジット消費型のため、利用量が増えると当初の想定より費用がかさむ可能性がある
- 複数の機能が同じクレジットを共有する設計で、部門横断で使うと消費のコントロールが必要になる
- 生成された文面やエージェントの判断は、そのまま送るのではなく人の確認を挟む前提で運用したい
- 機能名やパッケージの呼称が改定されており(Breeze / Agent Hub)、公式情報を追いかける必要がある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | HubSpot Breeze | Salesforce Agentforce | Zoho Zia | Microsoft Copilot for Sales |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | HubSpot, Inc. | Salesforce | Zoho | Microsoft |
| 前提となる基盤 | HubSpot CRM | Salesforce | Zoho CRM | Dynamics 365 / Microsoft 365 |
| 主な狙い | マーケ・営業・サポートの自動化 | 業務全般の自律エージェント | 予測・提案・自動化 | Office 上での営業支援 |
| 課金の考え方 | プラン込み + クレジット従量 | 従量課金中心 | プラン + アドオン | ユーザー単位のライセンス |
| 向いている規模 | 中小〜中堅企業 | 中堅〜大企業 | 小規模〜中堅企業 | Microsoft 中心の企業 |
こんな人におすすめ
- すでに HubSpot を使っていて、AI の導入先を新規に探すより手元のツールで完結させたい担当者
- 問い合わせ対応やリード発掘に人手が足りず、定型的な部分から自動化したい中小企業
- 顧客データを外部の AI サービスに渡すことに慎重で、CRM 内で処理を完結させたい組織
- メール文面やコンテンツの下書き作成を効率化したいマーケティング担当者
- 自社の業務フローに合わせた自動化を、開発を伴わずに組みたいチーム
まとめ
HubSpot Breeze は、AI を単体のツールとしてではなく CRM の一機能として組み込んだ点に価値がある。データを移す手間がなく、既存プランの延長で使い始められるため、AI 活用の入り口としてのハードルは低い。一方で費用はクレジットの消費量に左右されるので、どの業務をどれくらい任せるかを決め、小さく試して消費量を実測してから範囲を広げるのが現実的である。HubSpot を業務の中心に据えている組織であれば、まず既存プランに含まれる範囲で Breeze Assistant とプリセットエージェントを触ってみるとよい。