AI Deck

HermesOffice ─ ドキュメント・表計算・スライド・PDFをAIエージェントごと手元で動かすオープンソースのオフィススイート

Genspark社が2026年8月3日にApache-2.0で公開したオープンソースのAIオフィススイート「GenOffice」から、個人開発者のGustavo Caetano氏(GitHubアカウント: criptogus)が派生させたデスクトップアプリ。ドキュメント(Docs)・表計算(Sheets)・スライド(Slides)・PDFの4アプリを1つの基盤にまとめ、それぞれの編集画面にAIエージェント「Hermes Agent」を組み込んでいる。派生元との最大の違いは、クラウドへの接続を取り払い、AIとのやり取りも含めて処理が手元のマシンで完結する点にある。ソースコードはApache License 2.0で公開されており、無料で利用できる。

主な特徴

  • 4アプリを1つの基盤に統合: Docs(段落単位の編集、変更履歴、コメント、数式)、Sheets(グラフ、ピボットテーブル、条件付き書式、数式のトレース)、Slides(マスター、グラフ、画像トリミング)、PDF(注釈、フォーム、しおり、署名、ページ操作)を同じエンジンの上で扱える
  • AIエージェントがローカルで動く: Hermes Agentはマシン内のローカルゲートウェイ(http://127.0.0.1:8642)経由でOpenAI互換のAPIとして呼び出される。既定ではこのHermes Agentが使われるため、クラウドアカウントの作成や外部モデルのAPIキー登録なしに動作する
  • バイト単位で元ファイルを保つ: docx/xlsx/pptxを読み込む際、まず元ファイルをハッシュで保管したうえでブロック構造として解析し、AIが触れた箇所だけを書き換える。編集しなかった部分は元のバイト列のまま残るため、他のオフィスソフトで開き直したときのレイアウト崩れが起きにくい
  • 提案 → 確認 → 適用のレビュー方式: AIの編集は即座に反映されるのではなく「変更の提案」として差分プレビュー付きで提示される。受け入れ・却下・巻き戻しをユーザーが選べ、バージョンスナップショットも残る
  • ドキュメントごとに文脈が続く: セッションIDをドキュメント単位で持つ設計になっており、同じファイルでの対話の流れが引き継がれる
  • Apache License 2.0のオープンソース: リポジトリの ee/ ディレクトリのみ将来のエンタープライズ機能向けに別ライセンスが設定されているが、本体は自由に利用・改変できる

料金

プラン料金主な特徴
オープンソース版無料全機能。Apache License 2.0でソースコードを公開
エンタープライズ機能未提供(ee/ ディレクトリを別ライセンスで確保)現時点で提供内容・価格の公表なし

料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式リポジトリをご確認ください。

メリット・デメリット

メリット

  • クラウドアカウントもモデルのAPIキーも用意せずに、AIによるドキュメント編集を試せる
  • ファイルの中身が外部サーバーに送られないため、社外に出せない資料や個人情報を含む文書でも扱いやすい
  • docx/xlsx/pptxをそのまま読み書きでき、Microsoft Officeを使う相手とのやり取りを崩さない
  • AIの編集が差分プレビューと巻き戻し前提で設計されており、勝手に書き換えられる不安が小さい
  • Apache License 2.0のため、社内利用や改変、独自機能の追加が制限されない

⚠️ デメリット

  • 公開から日が浅く、バージョンは0.7.0系。安定性や機能の網羅性は商用オフィススイートに及ばない
  • GitHubのReleasesにビルド済みバイナリが用意されておらず、gitとnpmでソースからビルドする必要がある。非エンジニアには導入のハードルが高い
  • 公式に案内されている対応OSはmacOS(Apple Silicon / Intel)とWindowsで、Linuxは明記されていない
  • ローカルでAIを動かす以上、マシンの性能がそのまま応答速度に効く
  • 個人開発の派生プロジェクトであり、長期のメンテナンス体制は未知数

類似サービスとの比較

比較項目HermesOfficeGenOfficeLibreOfficeMicrosoft 365 Copilot
提供元criptogus(Gustavo Caetano)GensparkThe Document FoundationMicrosoft
AI機能Hermes Agentを内蔵(ローカル完結)AIエージェント内蔵(クラウド利用あり)標準では非搭載Copilotを内蔵(クラウド)
データの送信先マシン内で完結構成による送信なしMicrosoftのクラウド
対応OSmacOS / WindowsmacOS / Windows / LinuxmacOS / Windows / LinuxWindows / macOS / Web
ライセンス・料金Apache 2.0・無料Apache 2.0・無料MPL 2.0・無料有料サブスクリプション
導入方法ソースからビルド配布ビルドありインストーラーインストーラー / Web

こんな人におすすめ

  • 契約書や人事資料など、クラウドに上げたくない文書をAIに手伝わせたい人
  • Microsoft Officeのファイル形式を崩さずに、AIで下書きや整形を進めたい人
  • オープンソースのAIエージェント実装を自分の手元で動かして中身を確認したい開発者
  • 月額のサブスクリプションを増やさずにAI付きのオフィス環境を用意したい個人・小規模チーム
  • ソースからのビルドやローカルサーバーの起動に抵抗がない人

まとめ

HermesOfficeは、GenOfficeを土台にしながら「AIも含めて全部ローカルで動かす」方向に振り切った派生プロジェクトである。バイト単位で元ファイルを保つ編集方式と、提案 → 確認 → 適用のレビュー方式は、AIに文書を任せるうえでの不安をよく潰している。一方で公開から日が浅く、導入にはソースからのビルドが必要なため、現時点では技術に明るいユーザー向けの選択肢といえる。手元のマシンで完結するAIオフィス環境がどこまで実用に足るかを確かめたい人は、まずリポジトリのREADMEから触ってみるとよい。

関連リンク

← ブログ