Headroom Labs, Inc. が開発するオープンソースのコンテキスト圧縮ツール。コーディングエージェントがモデルに送り込むツール出力・ログ・ファイル読み込み・検索結果には、同じ形の定型的なノイズが大量に含まれる。Headroom はそれをモデルに届く前に取り除き、回答の質を落とさずにやり取りするトークン量を減らす。headroom wrap claude のようなコマンド一つで既存のエージェントに後付けでき、ローカルプロキシとして動かせばアプリ側のコードは一行も変えずに済む。ライセンスは Apache 2.0 で、個人がローカルで使う分は無料。2026年1月に公開された。
主な特徴
- コンテンツの種類ごとに圧縮方式を自動選択: JSON・ソースコード・ログ・検索結果・プレーンテキスト・git diff・画像といった種類を判別し、それぞれに向いた方式を当てる。公式ドキュメントは削減率の目安として JSON 70〜90%、コード 40〜70%(AST を解析して構造を保つ方式)、ログ 80〜95%(失敗ログを残して成功ログを間引く)、検索結果 60〜80%(関連度順に絞る)を挙げている
- 4 つの組み込み方法: エージェントのラッパー(
headroom wrapで Claude Code・Codex・Cursor・Aider などを包む)、ローカルの圧縮プロキシ(コード変更なし)、Python / TypeScript ライブラリとしてのインライン利用、MCP サーバーの 4 通りから選べる - 圧縮しても原文を取り戻せる(CCR): 圧縮前の内容は Compress-Cache-Retrieve ストアに保管され、モデルには
headroom_retrieveツールが渡る。詳細が必要になった場面ではモデル自身が原文を取りに行けるため、「圧縮して情報が消えた」状態になりにくい - 主要エージェント・フレームワークに対応: Claude Code、Cursor、Aider、Codex、Cline、Continue、OpenHands などのエージェントに加え、LangChain・LiteLLM・Vercel AI SDK・Agno・Strands といったフレームワーク、そして MCP に対応する
- ローカル処理: 圧縮は手元で走り、モデルに渡る前段で完結する。外部の圧縮サービスに全文を預ける構成ではない
- 圧縮結果の可視化: どこがどれだけ縮んだかをトレースとして確認できるため、効いている箇所と効いていない箇所を切り分けられる
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| オープンソース版 | $0 | Apache 2.0。ローカル実行・CLI・プロキシ・SDK・MCP サーバーのすべてを利用可能 |
| Enterprise | 要問い合わせ | VPC へのデプロイ、独自の圧縮パイプライン、SLA 付きサポート |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
なお、Headroom 自体は無料でも、圧縮によって減るのは利用中の LLM API に支払うトークン料金である。定額プランのエージェントで使う場合は、金額ではなく「一度の会話で扱える情報量」や利用上限までの余裕として効いてくる。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 既存のエージェントを置き換えず、コマンドを一つかぶせるだけで導入できる
- プロキシ構成ならアプリケーション側のコード変更が不要
- 圧縮方式がコンテンツ種別ごとに切り替わるため、JSON やログのような定型的で冗長なデータで効果が大きい
- CCR により、必要な場面ではモデルが原文を取り直せる
- Apache 2.0 のオープンソースで、圧縮処理の中身を確認できる
⚠️ デメリット
- 削減率はデータの性質に強く左右される。公式 README もコーディングエージェント用途では 15〜20% と、JSON データでの 60〜95% より控えめな数字を示している
- Python 3.10 以上の環境が前提で、CLI ツールの導入・設定に一定の慣れが要る
- プロキシを一段挟む構成のため、経路が増える分だけ切り分けの手間が増える
- 圧縮が効きすぎて文脈が損なわれないかは、実際のワークロードで確かめる必要がある
- 公開から日が浅く、仕様や設定項目が今後変わる可能性がある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Headroom | LLMLingua | LiteLLM Proxy | エージェント内蔵の自動要約 |
|---|---|---|---|---|
| 主な役割 | コンテキスト圧縮レイヤー | プロンプト圧縮ライブラリ | LLM ゲートウェイ(ルーティング・キャッシュ) | 会話履歴の自動圧縮 |
| 導入形態 | CLI ラップ / プロキシ / SDK / MCP | Python ライブラリ | プロキシ / SDK | エージェント本体の機能 |
| 圧縮の粒度 | コンテンツ種別ごとに方式を切り替え | プロンプト全体を言語モデルで圧縮 | 圧縮は主眼ではない | 会話全体をまとめて要約 |
| 原文の復元 | CCR ストアから取得可能 | 基本的に不可 | 該当なし | 不可 |
| ライセンス | Apache 2.0 | MIT | オープンソース版あり | 各エージェントに準拠 |
Headroom の位置づけは、モデルやエージェントを乗り換えるものではなく、両者の間に挟んで無駄を削る中間層である。ゲートウェイ製品と役割が重なる部分はあるが、主眼が「送るデータそのものを小さくすること」にある点が異なる。
こんな人におすすめ
- Claude Code や Codex などのコーディングエージェントを日常的に使い、コンテキスト上限や API 課金が気になっている開発者
- ログや JSON レスポンスのような定型的で長いデータを、エージェントに大量に読ませている人
- 自作のエージェントやワークフローに、コードをほとんど変えずに圧縮を組み込みたい開発者
- 圧縮処理をブラックボックスにしたくなく、オープンソースで中身を確認したいチーム
- 社内環境で運用したく、VPC へのデプロイやサポートを検討している組織
まとめ
Headroom は、コーディングエージェントとモデルの間に挟んでコンテキストの無駄を削る圧縮レイヤーである。コンテンツの種類に応じた方式の自動切り替えと、原文を取り戻せる CCR の組み合わせにより、「削って壊す」リスクを抑えながらトークン量を減らせる設計になっている。効き目はデータの性質次第で幅があるため、まずは自分がよく扱うワークロードでプロキシ経由の試用を行い、トレースで削減率を確かめてから本格導入するとよい。