CJ Pais 氏が開発する、無料・オープンソースのデスクトップ音声入力アプリ。キーボードショートカットを押しながら話すだけで、音声認識モデルが文字起こしを行い、いま開いているアプリの入力欄にそのままテキストを差し込む。処理はすべて手元のパソコンの中で完結し、音声がクラウドへ送られることはない。音声認識には多言語に強い Whisper と、英語・欧州言語で高速な Parakeet の 2 系統を選べる。Tauri で作られており macOS・Windows・Linux で動作し、ライセンスは MIT。Homebrew や winget、Raycast 拡張からも導入できる。
主な特徴
- 完全オフラインで動作: 音声認識モデルを端末にダウンロードして使うため、録音した音声も文字起こし結果も外部サーバーへ送信されない。オフライン環境や、社外に音声を出せない業務でもそのまま使える
- 押して話すだけの操作: 既定のショートカットは
Option + Space。押している間だけ録音するプッシュトゥトーク方式のほか、押すたびに録音の開始・停止を切り替えるトグル方式も選べる。Escapeで取り消せる - どのアプリの入力欄でも使える: 文字起こし結果はアクティブなテキストフィールドに直接挿入される。メーラー、チャット、コードエディタ、ブラウザのフォームなど、アプリを選ばずに使える
- Whisper と Parakeet を用途で使い分け: 日本語を含む 99 以上の言語を扱いたいときは Whisper、英語や欧州言語を速く正確に処理したいときは Parakeet。Whisper は Small / Medium / Turbo / Large のサイズ違いが用意されている
- GPU 加速と無音カット: Whisper モデルは GPU が使える環境では加速される(Windows / Linux では NVIDIA・AMD・Intel の各 GPU に対応)。Silero VAD による無音区間の除去で、言いよどみや間の処理も軽くなる
- AI による後処理:
Option + Shift + Spaceで「後処理付きの文字起こし」を実行すると、書き起こした文章の整形や言い回しの調整を AI に任せられる。よく使う固有名詞を登録する「カスタムワード」機能もある - 導入経路が豊富: 公式サイトや GitHub のリリースページからの直接ダウンロードに加え、macOS は
brew install --cask handy、Windows はwinget install cjpais.Handyで入る。Raycast からの起動にも対応
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| オープンソース版 | $0 | 全機能を制限なく利用可能。MIT ライセンス、アカウント登録・サブスクリプションなし |
開発者は「アクセシビリティのためのツールは有料の壁の向こうにあるべきではない」という考えを示しており、有料プランや機能制限は設けられていない。動作にかかるのは端末の計算資源だけで、API 利用料も発生しない。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 音声が一切外に出ないため、社内情報や個人情報を含む口述でも安心して使える
- 無料かつサブスクリプション不要。従量課金の心配なく、一日中話し続けても費用が増えない
- ネットワークが不安定な場所でも、機内でも同じように動く
- MIT ライセンスのオープンソースなので、挙動を確認したり自分で拡張したりできる
- macOS・Windows・Linux の 3 プラットフォームに対応し、環境を選ばない
⚠️ デメリット
- 音声認識モデルを端末で動かすため、非力なマシンでは待ち時間が長くなる。Large 系モデルは 1 GB を超えるダウンロードも必要
- macOS では Bluetooth ヘッドセット使用時に問題が報告されている
- Linux の Wayland 環境では、テキスト挿入に
wtypeやxdotoolなどの追加ツールが必要 - 環境によっては Whisper モデルがクラッシュする既知の不具合がある(Windows / Linux の一部構成)
- 初回はマイクとアクセシビリティの権限付与、モデルのダウンロードといった準備が必要
- 個人開発のプロジェクトのため、企業向けのサポート窓口や SLA はない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Handy | MacWhisper | superwhisper | Wispr Flow |
|---|---|---|---|---|
| 対応 OS | macOS / Windows / Linux | macOS | macOS | macOS / Windows |
| 処理場所 | 端末内(完全オフライン) | 端末内が中心 | 端末内が中心 | クラウド処理 |
| 料金体系 | 無料(オープンソース) | 無料版+有料ライセンス | 無料版+有料プラン | サブスクリプション |
| ソースコード | 公開(MIT) | 非公開 | 非公開 | 非公開 |
| 主な用途 | どのアプリでも使える音声入力 | 音声入力+音声ファイルの文字起こし | 音声入力+AI 整形 | 音声入力+AI 整形 |
料金や機能は各サービスとも変動するため、比較検討する際は各公式サイトで最新の情報を確認してほしい。
こんな人におすすめ
- 機密性の高い内容を口述するため、音声をクラウドへ送りたくない人
- 長文のメールやドキュメントを、タイピングではなく話して書きたい人
- 音声入力を毎日使うので、月額課金や従量課金を避けたい人
- Windows や Linux も使っていて、macOS 専用アプリでは足りない人
- 手や肩の負担を減らしたい、キーボード操作が難しいなど、アクセシビリティ上の理由で音声入力を必要としている人
- オープンソースのツールを自分で確認・改造しながら使いたい開発者
まとめ
Handy は、音声入力に必要な機能を「押して話す」という一点に絞り込み、それを完全オフライン・無料・オープンソースで提供するデスクトップアプリである。クラウド型の音声入力サービスと比べると、モデルのダウンロードや権限設定といった初期の手間はかかり、端末の性能に応じて速度も変わる。その代わり、音声が外に出ない安心感と、使い続けてもコストが増えない気軽さが手に入る。まずは軽量な Parakeet か Whisper Small から試し、精度が足りなければ大きいモデルに切り替えるとよい。