Grok Code(正式なモデル名は grok-code-fast-1)は、xAI が2025年8月28日に公開した、エージェント型のコーディング作業に特化したAIモデルである。汎用の Grok 4 系列とは別に一から訓練され、実際のプルリクエストを中心とした後訓練で「コードを読み、直し、テストを回す」一連の流れに最適化されている。毎秒190トークン級の生成速度と、入力100万トークンあたり$0.20という当時としては極端に安い価格が最大の特徴で、GitHub Copilot・Cursor・Cline・Roo Code・Kilo Code・opencode・Windsurf といった主要なコーディングツールに一斉に組み込まれた。
ただし現在(2026年8月時点)、このモデルは新規に選んで使えるものではない。xAI は2026年5月15日付でGrok Code Fast 1を含む8モデルを退役させており、grok-code-fast-1 宛のAPIリクエストは後継の grok-build-0.1 へ自動的にルーティングされる。GitHub Copilot でも同日に提供が終了している。この記事は、当時どういうモデルだったのかと、いま同じ用途を満たすには何を選べばよいかを整理したものである。
主な特徴
- 速度に全振りした設計: 応答速度は毎秒190トークン級。エージェントが何十回もツールを呼びながら進むコーディング作業では、1回あたりの待ち時間の短さがそのまま体感速度になる。「考え込む」よりも「素早く手を動かす」タイプのモデルとして位置づけられていた
- ツール利用に最適化: grep によるコード検索、ターミナルの実行、ファイル編集といった、コーディングエージェントが日常的に使う操作を前提に訓練されている。単発の質問応答ではなく、複数ステップの自動作業で力を発揮する設計
- プロンプトキャッシュを前提にした価格構成: 入力$0.20 / 出力$1.50 / キャッシュ済み入力$0.02(いずれも100万トークンあたり)。同じコードベースの文脈を何度も読み直すエージェント用途では、キャッシュヒット率が9割を超える事例も公式に報告されていた
- 得意な言語がはっきりしている: TypeScript、Python、Java、Rust、C++、Go に強いと公式が明言。Webアプリからシステムプログラミングまで、実務で使われる主要言語をカバーする
- 主要ツールへの一斉統合: リリース時点で GitHub Copilot、Cursor、Cline、Roo Code、Kilo Code、opencode、Windsurf に搭載され、一部では期間限定の無料提供も行われた。SWE-Bench-Verified では70.8%というスコアが公表されている
料金
| 項目 | 料金(100万トークンあたり) | 備考 |
|---|---|---|
| 入力(提供当時) | $0.20 | 2025年8月のリリース時点の公式価格 |
| 出力(提供当時) | $1.50 | 同上 |
| キャッシュ済み入力(提供当時) | $0.02 | 繰り返し読み込む文脈に適用 |
| 現在(2026年8月) | ─ | grok-code-fast-1 は退役済み。リクエストは grok-build-0.1 にルーティングされ、公式の移行ドキュメントでは入力$1.25 / 出力$2.50 で課金されると案内されている |
メリット・デメリット
✅ メリット
- エージェント型コーディングに絞って訓練されており、ツールを何度も呼ぶ自動作業との相性が良い
- 応答が速く、エージェントの反復サイクルが短く回る
- 提供当時はコーディング用モデルとして突出して安く、大量のトークンを消費する使い方でもコストが読めた
- キャッシュ済み入力が極端に安価で、同一リポジトリを繰り返し扱う用途に有利だった
- 主要なコーディングツールに幅広く統合され、乗り換えの手間が小さかった
⚠️ デメリット
- 2026年5月15日に退役済みで、新規に選択することはできない
- API のモデル識別子は解決されるものの、実際に応答するのは後継モデルであり、当時の挙動や価格はそのまま再現されない
- 速度を優先した設計のため、腰を据えた設計判断や難度の高い推論には汎用の上位モデルのほうが向く
- 得意言語が明示されている反面、それ以外の言語やニッチなフレームワークでの実力は公式に示されていなかった
- 単体の製品ではなくAPIモデルであるため、利用するにはエディタやエージェント側の対応が前提になる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Grok Code Fast 1 | Grok Build 0.1 | Grok 4.6 | GitHub Copilot の代替モデル |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | xAI | xAI | xAI | OpenAI / Anthropic |
| 位置づけ | 速度重視のコーディング特化モデル | 後継のエージェント型コーディングモデル | 汎用フラッグシップ(コーディング推奨) | Copilot 上での推奨移行先 |
| コンテキスト長 | 256Kトークン | 256Kトークン | 500Kトークン | ─ |
| 提供状況 | 退役済み(2026年5月15日) | 提供中 | 提供中 | 提供中 |
| 主な用途 | 反復の多い自動コード修正 | エージェント型コーディング・Web開発 | 難度の高い設計・長時間のエージェント作業 | Copilot 内での日常的なコード支援 |
GitHub は Copilot での代替として GPT-5 mini と Claude Haiku 4.5 を案内しており、xAI の API を直接使う場合は grok-build-0.1 への移行が公式の推奨となっている。
こんな人におすすめ
- 過去に
grok-code-fast-1を組み込んだツールやスクリプトを持っていて、移行先を決めたい開発者 - コーディングエージェントのランニングコストを抑えたく、安価で高速なモデルを探している人
- xAI のモデルを使い続けたいが、どのモデルがコーディング向けなのか分からなくなっている人
- SWE-Bench のような公開ベンチマークを手がかりに、モデルの世代交代を追いかけたい人
まとめ
Grok Code Fast 1 は、「エージェント型コーディングには、賢さよりも速さと安さのほうが効く場面がある」という仮説を形にしたモデルだった。毎秒190トークンの速度、入力$0.20という価格、キャッシュを前提にした課金設計は、コーディングエージェントの実運用コストを大きく引き下げた。一方で、その役割はすでに後継の grok-build-0.1 に引き継がれ、モデル自体は2026年5月15日に退役している。いま同じ用途を求めるなら、xAI のAPIでは grok-build-0.1、より難度の高い作業には Grok 4.6 を見るのが素直な選択になる。過去に組み込んだ設定が残っている場合は、意図せず別モデル・別価格で課金されていないかを一度確認しておきたい。