Flow は、Google Labs が開発した AI 映像制作ツールである。動画生成モデル Veo と画像生成モデル Imagen を組み合わせ、テキストの指示から映像を生成したり、手持ちの画像を動かしたり、生成したカットをつなげて 1 本のシーンに仕上げたりできる。2025 年 5 月の Google I/O にあわせて公開され、それ以前から Google Labs で提供されていた映像生成の実験ツール(VideoFX)を発展させたものと位置づけられている。カメラワークの指定、登場人物や小道具の一貫性の維持、ショットの延長といった「映像づくりに必要な操作」がブラウザ上で一通りそろっているのが特徴で、編集ソフトを持っていない人でも短編映像のプロトタイプをつくれる。
主な特徴
- テキストから映像を生成: つくりたい場面を文章で書くだけで、Veo が数秒〜十数秒のクリップを生成する。上位モデルでは映像と同時に音声(効果音や環境音)も生成される
- 素材(Ingredients)から映像を生成: 登場人物・背景・小道具といった素材を Imagen で作るか、手持ちの画像をアップロードして登録しておくと、それらを組み合わせた映像を生成できる。カットが変わっても同じキャラクターの見た目を保ちやすい
- 画像を起点にしたアニメーション化: 1 枚の静止画を始点(あるいは始点と終点)として指定し、その間の動きを生成できる。既存のビジュアルを活かしたい場合に使いやすい
- カメラコントロール: パン、ズーム、寄り引き、アングルなどのカメラ操作を指示でき、同じ被写体を別の画角で撮り直したような映像をつくれる
- Scenebuilder(シーンビルダー): 生成したクリップの続きを生成して尺を伸ばしたり、複数のカットをつないで一連のシーンに構成したりできる。オブジェクトの追加・削除や、画面外を描き足すシーン拡張にも対応する
- プロジェクトと素材の管理: 生成した映像・素材・使用したプロンプトがプロジェクト単位でまとまるため、後から同じ設定で作り直したり、うまくいったプロンプトを再利用したりしやすい
料金
Flow は Google の AI サブスクリプション(Google AI Plus / Pro / Ultra)に含まれる形で提供され、生成のたびに「クレジット」を消費する。消費クレジットは使うモデルによって変わり、高品質なモデルほど 1 本あたりの消費が大きい。
| プラン | 月あたりの Flow クレジット | 主な内容 |
|---|---|---|
| Google AI Plus | 200 クレジット | 入門向け。試用や短いクリップ中心の利用 |
| Google AI Pro | 1,000 クレジット | 標準的な制作用途。動画生成モデルへの拡張アクセス |
| Google AI Ultra | 10,000 クレジット(上位段階は 25,000 クレジット) | 最上位。生成の優先アクセスと最大の利用上限 |
料金は 2026 年 8 月時点の情報です。月額料金は国・通貨によって異なり、提供されるプランの構成も変更される場合があります。最新の料金と、各プランで使えるモデル・クレジット消費量は公式サイトおよび Google AI プランのページをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 生成から編集・シーン構成までがブラウザ内で完結し、動画編集ソフトや高性能な PC を用意しなくてよい
- 素材登録によってキャラクターや小道具の見た目を保ちやすく、複数カットをつないでも破綻しにくい
- カメラワークやショットの延長を指示で操作できるため、「映像の文法」に沿った作り込みができる
- 上位モデルでは音声も同時に生成されるため、無音のクリップに後から音を当てる手間が減る
- Google アカウントとサブスクリプションがあれば始められ、導入のハードルが低い
⚠️ デメリット
- 実質的に有料サブスクリプションが前提で、クレジットを消費するため試行錯誤にコストがかかる
- 1 回の生成で得られるクリップは短く、長尺の作品をつくるには何度も生成してつなぐ必要がある
- 文章での指示が結果を大きく左右し、狙いどおりの画にするにはプロンプトの試行錯誤が要る
- 生成される映像には出所を示す透かし(SynthID などの識別情報)が含まれ、商用利用の可否や条件は契約プランと利用規約の確認が必要
- 提供国・対応言語や利用できるモデルは順次拡大している段階で、地域によって使える機能が異なることがある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Flow | Runway | Sora | Kling AI |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Runway | OpenAI | 快手(Kuaishou) | |
| 生成モデル | Veo(画像は Imagen) | Gen 系モデル | Sora | Kling |
| 強み | 素材の一貫性とシーン構成、カメラ操作 | 映像編集機能の幅広さ、制作現場での実績 | プロンプト理解と表現力、共有機能 | 生成の手数と価格帯の選択肢 |
| 音声の同時生成 | 対応(対応モデル) | 一部対応 | 対応 | 一部対応 |
| 提供形態 | Google AI サブスクリプションに同梱 | 独自プラン | ChatGPT のプラン等 | 独自プラン |
こんな人におすすめ
- 短編映像や広告カット、SNS 向けの動画を、撮影なしで素早く形にしたい人
- 絵コンテやイメージビデオなど、企画段階のたたき台を関係者に見せたい制作担当者
- 手持ちのイラストや写真を動かして、作品やポートフォリオに変化をつけたいクリエイター
- すでに Google AI Pro / Ultra を契約していて、追加コストなく映像生成を試したい人
- 動画編集ソフトの操作を覚える前に、まず「映像をつくる」体験から入りたい初心者
まとめ
Flow は、Veo による映像生成を軸に、素材の管理・カメラ操作・シーン構成といった映像制作の工程をブラウザ上にまとめたツールである。単発のクリップを生成するだけのサービスと違い、カットをつないで 1 本のシーンに仕上げるところまで面倒を見てくれる点が持ち味といえる。一方でクレジット制のため、思いつくままに生成を繰り返すと消費が早い。まずは下位プランで作りたい画のプロンプトを固め、方向性が定まってから高品質モデルで本番の生成を行う ─ という使い分けが現実的である。