Web フレームワーク Astro を開発する Astro チーム(withastro)が公開している、TypeScript で AI エージェントを構築するためのオープンソースフレームワーク。公式サイトでは「The Open Agent Framework」と掲げられ、長時間動き続けるエージェントやワークフローを、途中で落ちても作業をやり直さずに済む形で書けることを重視している。エージェント本体はヘッドレス(UI を持たない)で、Slack や Discord、GitHub といったチャネルに後から接続する設計。ライセンスは Apache-2.0 で、フレームワーク自体の利用は無料である。
主な特徴
- フックで書く TypeScript エージェント:
'use agent'を付けた関数の中でuseModel()useTool()useSkill()useSubagent()といったフックを呼ぶだけでエージェントを定義できる。React のフックに近い書き味で、実行中に能力を足していく動的なエージェントも組める。組み込みフックは 16 種類 - Durable Execution(耐久実行): 長時間タスクの途中でプロセスが落ちたりエラーが起きても、そこまでの進捗を保持して再開できる。数分〜数時間かかる処理をエージェントに任せる用途を前提にした設計
- セキュアなサンドボックス: エージェントがファイルを読み書きしたり実際のコマンドを動かす作業場を、隔離された環境として与えられる。セッションや永続ステートも扱えるため、会話をまたいだ文脈の保持ができる
- ツール・スキル・サブエージェント: 型付きのツール(アクション)、再利用可能な手順をまとめたスキル、専門タスクを任せるサブエージェントという 3 段構えで、処理を分割・委譲できる
- MCP と 30 以上の連携先: Model Context Protocol のサーバーをマウントして外部ツールに接続できるほか、デプロイ先(Cloudflare / AWS / Docker / Vercel)、データベース(PostgreSQL / MongoDB / Redis)、チャネル(Slack / Teams / Discord / GitHub)、可観測性(OpenTelemetry / Sentry / Braintrust)と接続する仕組みが用意されている
- どの LLM でも動く: モデルは
useModel('anthropic/claude-haiku-4-5')のように文字列で指定する形式で、特定ベンダーに固定されない。実行環境も Node.js、Cloudflare Workers、GitHub Actions、GitLab CI/CD などから選べる
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| オープンソース(Apache-2.0) | $0 | フレームワーク本体・CLI・SDK のすべて。npm から取得して自由に利用・改変できる |
| 実行にかかる費用 | 別途 | 利用する LLM プロバイダーの API 料金と、デプロイ先(Cloudflare / AWS など)のホスティング料金 |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
Flue 自体に有料プランやライセンス費用は設定されていない。実際のコストは「どのモデルをどれだけ呼ぶか」と「どこで動かすか」で決まる。Cloudflare にデプロイする場合は組み込みの AI ゲートウェイを使えるため、別途 API キーを用意せずに始められる。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 進捗が失われない耐久実行を前提としているため、長時間タスクや夜間バッチのようなエージェントを安心して任せやすい
- フック中心の API で記述量が少なく、TypeScript の型がそのまま効くので補完とリファクタリングが効く
- サンドボックス・セッション・永続ステートが標準で揃っており、周辺基盤を自前で組む手間が小さい
- Apache-2.0 のオープンソースで、ベンダーロックインの心配がない。モデルも実行環境も差し替えられる
- Slack・Discord・GitHub などのチャネル接続や MCP 対応が最初から用意されている
⚠️ デメリット
- TypeScript と Node.js(22.19.0 以上)の知識が前提で、ノーコードで扱えるツールではない
- 2.0 が最初の安定版という若いプロジェクトのため、周辺の情報やサードパーティ製の実例はまだ少ない
- 1.x から 2.0 で API がフック中心へ大きく変わっており、古い記事やサンプルがそのままでは動かない場合がある
- フレームワーク自体は無料でも、モデル呼び出しとホスティングの費用は利用量に比例して増える
- UI は含まれないため、チャット画面などを見せたい場合は SDK を使って自分で作る必要がある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Flue | Mastra | LangGraph | OpenAI Agents SDK |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Astro(withastro) | Mastra | LangChain | OpenAI |
| 言語 | TypeScript | TypeScript | Python / TypeScript | Python / TypeScript |
| 中心となる考え方 | フックと耐久実行 | ワークフローとエージェント | グラフによる状態遷移 | エージェントとハンドオフ |
| サンドボックス | 標準搭載 | 別途構成 | 別途構成 | 別途構成 |
| モデルの自由度 | 任意(プロバイダー非依存) | 任意 | 任意 | OpenAI 中心 |
| ライセンス | Apache-2.0 | Apache-2.0 | MIT | MIT |
いずれも「エージェントを組む土台」という点では重なるが、Flue は落ちても続きから走れる耐久実行と、ファイル操作まで含むサンドボックスを標準で持つ点が特徴的である。グラフで分岐を厳密に設計したい場合は LangGraph、OpenAI のモデル前提で素早く形にしたい場合は OpenAI Agents SDK が候補になる。
こんな人におすすめ
- 数十分〜数時間動き続けるエージェントを、途中で落ちても作業をやり直さずに済む形で組みたい開発者
- TypeScript を主戦場にしていて、Python 中心のエージェント基盤に移りたくないチーム
- Slack や GitHub と連携する社内向けの自動化エージェントを作りたい人
- 特定の LLM ベンダーに縛られず、モデルや実行環境を後から差し替えられる構成にしたい人
- Cloudflare Workers など、サーバーレス環境でエージェントを動かしたい人
まとめ
Flue は、TypeScript でエージェントを書くための土台として、耐久実行・サンドボックス・セッション・MCP 連携といった「実運用で必要になるもの」を最初から抱え込んだフレームワークである。Astro チームが手がけていることもあり、フック中心の API とビルド周りの整備は開発者体験に寄っている。まだ若いプロジェクトで情報は少ないが、長時間タスクを任せるエージェントを TypeScript で組みたい場合には有力な選択肢になる。まずは公式のはじめ方に沿って、ローカルで flue run を試すところから始めるとよい。