Flipbookは、2026年4月23日に公開された実験的な「無限ビジュアルブラウザ」である。元OpenAIのZain Shahを含む少人数チームが開発した。通常のWebブラウザはHTMLを受け取ってレイアウトエンジンが描画するが、Flipbookにはその工程がない。画面に映る絵も文字もすべて、動画生成モデルがその場でピクセルとして描き出す。表示されたページの気になった部分をタップすると、それを掘り下げた次のページが即座に生成される。リンクをたどるのではなく、知識の地形を歩くように探索していく体験を目指したプロジェクトだ。Appleの往年のソフトウェアHyperCardに着想を得たとも紹介されている。
主な特徴
- HTMLもレイアウトエンジンも持たない: 通常のWebページのようなDOM構造は存在しない。ページ全体が生成モデルの出力する映像であり、ブラウザというよりも「描かれ続けるキャンバス」に近い
- タップした場所から次のページが生まれる: あらかじめ用意されたリンク先が無いため、リンク切れという概念がない。画面上の要素を指定すると、その内容を主題にした新しいページがその場で作られる
- 1080p / 24fpsのリアルタイムストリーミング: Lightricks(LTX Studio)の動画生成モデルとModal Labsのサーバーレス GPU を組み合わせ、WebSocket経由で映像として配信する
- 文字も挿絵も一体で描かれる: テキストと図版が別々の要素ではなく、挿絵つきの本のページのように一枚の絵として生成される。チャットUIのようにテキストが流れてくるのではなく、レイアウトごと受け取る形になる
- 少人数の実験チーム: Zain Shah(Y Combinator S13、OpenAI・Samsungを経験)を中心に、Apple・Slack・Humane出身のエンジニアが参加している
料金
| プラン | 料金 | 備考 |
|---|---|---|
| 実験版 | 非公表 | 有料プラン・課金体系は公開されていない。実験的プロジェクトとして公開されている |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 検索結果やチャットの長いテキストではなく、挿絵つきのページとして情報を受け取れる
- リンクが張られているかどうかに縛られず、画面上の気になった箇所を起点にどこまでも掘り下げられる
- 毎回レイアウトごと生成されるため、既存のWebページを回遊するのとは違う発見の仕方ができる
- 動画生成モデルをUIそのものに使うという発想を、実際に手で触って確かめられる
⚠️ デメリット
- 画面がすべて映像であるため、テキストの選択・コピー・ページ内検索ができない。スクリーンリーダーによる読み上げにも対応しないと考えられ、アクセシビリティの面では通常のWebに大きく劣る
- 表示される文章は生成モデルの出力であり、誤字や事実誤認が混じりうる。調べ物の裏取りには使えない
- 常時映像をストリーミングする方式のため、通信量とサーバー側のGPU負荷が大きい
- 実験プロジェクトであり、提供の継続性・可用性は保証されていない。料金体系も公表されていない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Flipbook | websim.ai | Perplexity | 一般的なWebブラウザ |
|---|---|---|---|---|
| 画面の作り方 | AIが画面のピクセルを生成 | AIがHTMLを生成 | 既存のWebを検索して要約 | 既存のHTMLを描画 |
| 出力の形式 | 映像(画像の連続) | Webページ(HTML) | テキストと出典リンク | Webページ |
| リンク | 存在しない(タップで生成) | 生成されたリンク | 出典へのリンク | 実在するURL |
| テキストの選択・コピー | 不可 | 可能 | 可能 | 可能 |
| 位置づけ | 実験プロトタイプ | 実験的サービス | 商用サービス | 標準的な閲覧手段 |
こんな人におすすめ
- 生成AIとユーザーインターフェースの新しい関係に関心がある人
- 動画生成モデルの応用例を、デモ動画ではなく実際に触って確かめたいエンジニアやデザイナー
- テキストが延々と流れてくるチャット形式のAI利用に物足りなさを感じている人
- 調べ物を「読む」よりも「眺めて掘る」形で試してみたい人
まとめ
Flipbookは、Webページの表示という当たり前の工程を丸ごと生成モデルに置き換えた、極端な実験である。テキストを選択できない、情報の正確さが保証されない、通信量が大きいといった制約は大きく、日常の調べ物を置き換えるものではない。ただし、UIそのものを生成する発想がどこまで成立するのかを体感できる題材としては貴重だ。まずは短時間触ってみて、生成された画面を「読む」感覚がどう変わるかを確かめるとよい。