英国の llmindset.co.uk が開発するオープンソースのAIエージェント構築フレームワーク。2025年3月の公開以来、「MCP(Model Context Protocol)をネイティブに扱えるエージェントフレームワーク」という立ち位置を保ち続けている。Pythonのデコレーター数行でエージェントを定義でき、そのまま対話できるCLI/TUIが付属する。チェーン・並列・ルーター・評価と改善・オーケストレーターといった定番のワークフローパターンが最初から用意されており、複数エージェントの連携を自分でスクラッチから書かずに済む。Apache 2.0ライセンスで、フレームワーク自体の利用料はかからない。
主な特徴
- MCPをフル実装: ツール呼び出しだけでなく、Elicitation(エージェントから利用者への追加質問)、Sampling(サーバー側からのLLM呼び出し)、Roots、リソース参照までMCP仕様の広い範囲をカバーする。SSE/HTTPサーバー向けのOAuth 2.1認証やキーリング保管、Streamable HTTPのトランスポート診断機能も持ち、MCPサーバーの接続トラブルを切り分けやすい
- デコレーターでエージェントを定義:
@fast.agentや@fast.parallelのようなデコレーターで、エージェントとワークフローを宣言的に書ける。Pythonアプリに組み込む用途はこの書き方が基本になる - エージェントカードで持ち運ぶ: エージェント定義をMarkdownファイル(Agent Cards)として書き出し、TUIやコマンドラインから読み込める。チームで共有したり、用途別に定義を切り替えたりする使い方に向く。analyst / developer / researcher といった出発点になるカードパックも同梱されている
- 5つのワークフローパターン: Chain(順次実行)、Parallel(ファンアウト・ファンイン)、Router(LLMによる振り分け)、Evaluator-Optimizer(生成と評価を反復して品質を上げる)、Orchestrator(タスク分解と計画)。エージェント自体をツールとして別のエージェントに渡す Agents-as-Tools もサポートする
- CLI/TUIで対話しながら開発できる: ターミナル上でエージェントと直接会話し、途中経過やツール呼び出しを見ながら挙動を確かめられる。
/skillsコマンドによるエージェントスキルの管理や、バッチ処理、構造化出力にも対応する - 主要モデルを横断してサポート: Anthropic・OpenAI・Google をネイティブに扱えるほか、Azure・Bedrock・DeepSeek・xAI などのプロバイダ、llama.cpp や Ollama によるローカルモデルも利用できる。同じエージェント定義のままモデルを差し替えて比較しやすい
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| オープンソース版 | 無料(Apache 2.0) | 全機能。PyPI から導入して自分の環境で実行する |
フレームワーク自体は無料だが、実際に動かすと利用するモデルのAPI料金が別途かかる(ローカルモデルを使う場合はその限りではない)。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- MCPの実装範囲が広く、Elicitation や Sampling まで含めてMCPサーバーを検証したいときに実機として使える
- エージェント定義が短く、最小構成なら数行から動かせるため、試作から本番まで距離が近い
- ワークフローパターンが標準で揃っており、マルチエージェント構成の定型部分を自分で書かなくてよい
- CLI/TUIで対話しながらデバッグでき、ツール呼び出しの挙動が見える
- Apache 2.0のオープンソースで、依存やロックインの心配が小さい
⚠️ デメリット
- Pythonのコードを書く前提のツールで、ノーコードのエージェント作成サービスではない
- ホスティングやGUI管理画面は提供されないため、運用は自前で用意する必要がある
- バージョン0.x系での開発が続いており、メジャーアップデート時には移行作業が発生しうる(2026年8月の v0.10 系リリースでも移行ガイドが案内されている)
- 個人・小規模チームによる開発のため、大手ベンダー製フレームワークに比べるとサポート体制は限定的
類似サービスとの比較
| 比較項目 | fast-agent | LangGraph | CrewAI | OpenAI Agents SDK |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | llmindset.co.uk | LangChain | CrewAI | OpenAI |
| 中心的な考え方 | MCPネイティブ + ワークフローパターン | 状態グラフによる制御 | 役割を持つエージェントの協働 | ハンドオフとガードレール |
| MCP対応 | 仕様の広い範囲を実装 | 対応(拡張として) | 対応 | 対応 |
| CLI/TUI | 標準搭載 | なし(ライブラリ中心) | CLIあり | なし(ライブラリ中心) |
| ライセンス | Apache 2.0 | MIT | MIT | MIT |
こんな人におすすめ
- 自作のMCPサーバーを、Elicitation や Sampling まで含めて実際のエージェントから検証したい開発者
- 複数エージェントの連携(並列実行・振り分け・評価ループ)を、フレームワークの型に乗せて短く書きたい人
- ターミナル中心で作業し、GUIよりCLI/TUIでエージェントの挙動を確かめたい人
- モデルを差し替えながら、同じエージェント定義で出力品質やコストを比較したい人
- オープンソースで、自分の環境に閉じたまま動かせるエージェント基盤を探しているチーム
まとめ
fast-agentは、MCPを中心に据えたエージェント開発の「実験台」として使いやすいフレームワークである。デコレーターによる短い定義、標準搭載のワークフローパターン、対話しながら確認できるCLI/TUIが揃っており、MCPサーバーの検証からマルチエージェント構成の試作まで一貫して扱える。ノーコードでエージェントを作りたい人には向かないが、Pythonが書けてMCPを本気で使いたいなら、まず触ってみる価値がある。ドキュメントとGitHubリポジトリが充実しているので、公式ガイドのサンプルを動かすところから始めるとよい。