Docker, Inc. が開発するオープンソースのAIエージェント構築・実行ツール。コードを書く代わりにYAML(またはHCL)の設定ファイルでエージェントの役割・使えるツール・利用モデルを宣言し、CLIから実行できる。公式ドキュメントでは「docker run がコンテナに対して果たす役割を、AIエージェントに対して果たすもの」と位置づけられている。複数の専門エージェントをチームとして連携させる構成、MCPサーバー経由でのツール接続、RAG、A2A(Agent-to-Agent)プロトコルに対応し、作ったエージェントはOCI互換レジストリにプッシュしてDockerイメージと同じ感覚で共有できる。ライセンスはApache-2.0で、GitHubリポジトリは3,000スター超(2026年8月時点)。
主な特徴
- YAML/HCLの宣言的な設定でエージェントを定義: エージェントの指示文、担当範囲、使えるツール、モデルを設定ファイルに書くだけで動く。アプリケーションコードを書かずに始められる
- マルチエージェントのチーム編成: 調査役・実装役・レビュー役といった専門エージェントを複数定義し、互いに委譲させながら複雑なタスクを分担処理できる
- モデルプロバイダー非依存: OpenAI、Anthropic、Google Gemini、AWS Bedrock、Mistral、xAI に加え、ローカル実行用の Docker Model Runner にも対応。設定ファイルの1行でモデルを切り替えられる
- ビルトインツールとMCP連携: ファイルシステム、シェル、メモリ、Web取得などの標準ツールを内蔵。さらにMCP(Model Context Protocol)サーバーを追加すれば、外部サービスやローカル環境へ自由に接続できる
- 4つの実行モード: 対話型のTUI、スクリプトから叩くヘッドレスCLI、HTTP APIサーバー、そして自身をMCPサーバーとして公開するMCPモードを備え、開発から組み込みまで同じ定義を使い回せる
- OCIレジストリでの配布: 完成したエージェントをコンテナイメージと同様にレジストリへプッシュ/プルできる。チーム内での共有やバージョン管理がDockerの既存フローに乗る
料金
| 項目 | 料金 | 内容 |
|---|---|---|
| Docker Agent 本体 | 無料(Apache-2.0) | CLI・ランタイムともオープンソース。Homebrew またはGitHub Releases のバイナリで導入可能 |
| Docker Personal | $0 | Docker Desktop(4.63以降にCLIプラグインが同梱)、1ユーザー |
| Docker Pro | 月額$11(年払いで月額$9相当) | 個人プロフェッショナル向け。Build Cloud・Testcontainers Cloud など |
| Docker Team | 1人あたり月額$16(年払いで$15相当) | 最大100ユーザー、一括ユーザー管理、監査ログ |
| Docker Business | 1人あたり月額$24 | ユーザー数無制限、SSO、SCIM、Hardened Docker Desktop |
料金は2026年8月時点の情報です。Docker Agent 自体の利用にサブスクリプションは不要ですが、呼び出すLLMのAPI利用料は各プロバイダーへ別途支払う必要があります。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 設定ファイルだけでエージェントが動くため、フレームワークの学習やコード実装を経ずに試せる
- モデルプロバイダーを固定しない設計で、商用APIとローカルモデルを同じ定義で行き来できる
- エージェントの配布がOCIレジストリ経由になり、Dockerを日常的に使うチームなら既存の運用に自然に収まる
- MCP対応により、対応ツールが増えるほど接続先を増やせる
- Apache-2.0のオープンソースで、内部実装を確認したり自前で拡張したりできる
⚠️ デメリット
- 基本操作はCLI中心で、GUIでフローを組むノーコードツールに比べると非エンジニアには敷居が高い
- LLMのAPIキーと利用料は自前で用意する必要があり、実行コストは使い方次第で膨らむ
- リリース頻度が高く(2026年8月時点でv1.127系)、設定項目やオプションが更新に伴って変わる可能性がある
- シェルやファイルシステムのツールを与えるとローカル環境へ直接影響するため、権限設計の判断は利用者側に委ねられる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Docker Agent | LangGraph | CrewAI | Dify |
|---|---|---|---|---|
| 定義方法 | YAML/HCLの設定ファイル | Pythonコード | Pythonコード | GUIのビジュアルエディタ |
| 主な対象 | Dockerを使う開発者・運用者 | 制御フローを細かく作り込みたい開発者 | マルチエージェントを組みたい開発者 | 非エンジニア〜開発者 |
| 実行形態 | CLI/TUI/APIサーバー/MCP | 自作アプリに組み込み | 自作アプリに組み込み | Webアプリ・API |
| 配布方法 | OCIレジストリ | パッケージ・自前デプロイ | パッケージ・自前デプロイ | ホスティング/セルフホスト |
| ライセンス | Apache-2.0 | オープンソース | オープンソース | オープンソース(有償クラウドあり) |
こんな人におすすめ
- 普段からDocker CLIを使っており、AIエージェントも同じ操作感で扱いたい開発者
- Pythonのエージェントフレームワークを学ぶ前に、まず設定ファイルで挙動を試したい人
- 調査・実装・レビューのように役割を分けた複数エージェントの連携を試したいチーム
- 商用APIとローカルモデルを状況に応じて切り替えたい人
- 作ったエージェントをチームで共有し、バージョン管理まで含めて運用したい組織
まとめ
Docker Agentは、AIエージェントの定義・実行・配布をDockerの流儀に寄せたオープンソースのツールである。YAMLを書けば動き、OCIレジストリで配れるという設計は、すでにコンテナを使っている開発チームにとって学習コストが小さい。一方でCLI中心の操作とLLM利用料の自己負担は前提となるため、まずは無料のDocker Personal環境とローカルまたは手持ちのAPIキーで、小さなエージェントを1つ動かしてみるところから始めるとよい。