ByteDanceが公開しているオープンソースのAIエージェント基盤。数分から数時間かかるような大きな仕事 ─ 調査レポートの作成、コードの実装、資料やコンテンツの制作 ─ を、人が細かく指示し続けなくても最後まで進めることを目指している。当初は「Deep Research(深い調査)」に特化したフレームワークとして2025年5月に公開されたが、2026年に登場したバージョン2.0でゼロから作り直され、サブエージェント・メモリ・スキル・サンドボックスを備えた汎用のエージェントハーネスへと拡張された。ライセンスはMITで、自分のPCやサーバーで動かせる。
主な特徴
- 長時間タスクの自律実行: 与えられたゴールを計画に分解し、サブタスクとして並列または順番に実行する。途中で進捗を自己評価し、必要なら続きの作業を組み立て直すため、一往復のチャットでは終わらない規模の仕事を任せられる
- サブエージェントによる分業: 調査担当・コード担当のように役割を分けた子エージェントを立ち上げ、それぞれに部分作業を割り振れる。親エージェントは結果を受け取って統合する
- 長期・短期メモリとコンテキスト圧縮: 会話やタスクをまたいで文脈を保持し、長くなった履歴は自動的に要約・圧縮する。長丁場の作業でも情報が抜け落ちにくい
- スキルとツールで機能を足せる: スキルは「作業手順とベストプラクティスを書いたMarkdownファイル」という形式で、リサーチ・レポート作成・スライド作成などが標準で用意されている。自作のスキルを追加することもできる
- MCP対応でツールを外部接続: Model Context Protocol(MCP)のサーバーを設定ファイルで登録すると、その機能が標準ツールと並んで使えるようになる。ツールが増えすぎたときは必要なものだけ読み込む仕組みも備える
- Dockerベースのサンドボックス: コード実行・コマンド実行・ファイル操作を隔離された環境で行う。ブラウザ・シェル・ファイル・VSCode Serverをひとまとめにしたオールインワンのコンテナが用意されている
- 複数のモデルを選べる: Doubao・DeepSeek・OpenAI・Gemini・Qwen・Claude などに対応し、OpenRouter経由やローカルモデル(vLLM)も利用できる。用途やコストに応じて使い分けられる
- チャットツールからの利用: Telegram・Slack・Feishu・WeChat・DingTalkなどのチャネル連携に対応しており、日常的に使っているチャットからタスクを投げられる
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| セルフホスト(オープンソース) | $0 | 全機能を利用可能。MITライセンスで商用利用も可 |
| LLMの利用料 | 各モデル提供元の従量課金 | OpenAI・Gemini・DeepSeek・Doubaoなど、接続するAPIの費用が別途かかる |
| 実行環境 | サーバー費用 | ローカル評価なら4 vCPU / 8GBメモリ程度、共有サーバー運用では16 vCPU / 32GBメモリ程度が目安 |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- ソフトウェア自体は無料で、MITライセンスのため業務利用や改変のハードルが低い
- 自分の環境で動かせるので、扱うデータを外部のSaaSに預けずに済む
- モデルを固定されず、性能重視とコスト重視を場面で切り替えられる
- サブエージェント・メモリ・サンドボックス・スキルが最初から揃っており、エージェント基盤を自作するより早く立ち上がる
- MCP対応により、既存のツール資産をそのまま接続できる
⚠️ デメリット
- セットアップにNode.js・Python・Dockerなどの前提知識が必要で、非エンジニアが単独で導入するのは難しい
- サーバーとLLM APIの費用は自己負担になり、長時間タスクを回すほどトークン消費が膨らむ
- バージョン2.0はv1と互換性のない全面書き直しのため、v1向けの解説記事や設定がそのままでは使えない
- 自律実行の品質は接続するモデルに強く依存し、結果の検証は利用者側の責任になる
- MCPのファイルシステム系サーバーなど、機能が重複するツールを足すと動作が不安定になる場合がある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | DeerFlow | OpenHands | Manus | Dify |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | ByteDance | All Hands AI | Butterfly Effect(Monica) | LangGenius |
| 種別 | 汎用エージェントハーネス | 開発作業特化のエージェント | クラウド提供の自律エージェント | LLMアプリ開発プラットフォーム |
| 導入形態 | セルフホスト | セルフホスト/クラウド | クラウドのみ | セルフホスト/クラウド |
| ソースコード | 公開(MIT) | 公開 | 非公開 | 公開 |
| 得意分野 | 調査・コード・コンテンツ制作の長時間タスク | コードの実装・修正 | 汎用タスクの手離れの良さ | ワークフローとチャットボットの構築 |
| 費用の考え方 | 本体無料+API・サーバー費 | 本体無料+API・サーバー費 | 有料サブスクリプション | 本体無料または有料クラウド+API費 |
こんな人におすすめ
- 調査から資料化まで、複数ステップにまたがる作業をまとめてAIに任せたい人
- 社内データや顧客情報を外部サービスに出せないため、自社環境でエージェントを動かしたい企業
- 特定のAIベンダーに縛られず、モデルを比較しながら運用したい開発者
- エージェント基盤を一から作るのではなく、実績のある土台の上に自社のスキルを足したいチーム
- MCPサーバーを既に整備していて、それを活かせる実行環境を探している人
まとめ
DeerFlowは、Deep Research用のフレームワークから汎用のエージェントハーネスへと作り直された、ByteDance発のオープンソースプロジェクトである。サブエージェント・メモリ・スキル・サンドボックスという、長時間タスクを回すために必要な部品が一通り揃っており、モデルの選択肢も広い。一方で導入には開発者向けの知識とサーバー環境が要り、クラウドサービスのように契約すればすぐ使えるものではない。手元の環境でエージェントを動かしたい、モデルを自分で選びたい、という条件に当てはまるなら有力な選択肢になる。