ターミナルアプリで知られるCharm(Charmbracelet, Inc.)が開発する、CLIベースのAIコーディングエージェント。ターミナルの中でAIにコードの生成・編集・調査を任せられる。最大の特徴は特定のAIモデルに縛られないことで、OpenAI・Anthropic・Google・ローカルモデルなど好みのLLMを自分で選んで接続し、会話の途中でモデルを切り替えることもできる。Go言語製で、macOS・Linux・Windows・BSD系まで広くカバーする。同社がかつて手がけたOpen Code系の流れを汲むツールで、ソースコードはGitHubで公開されている。
主な特徴
- 好きなLLMを持ち込んで使える: OpenAI・Anthropic・Google・Groq・OpenRouter・Hugging Face・ローカルのOllamaなど、多様なプロバイダーに対応。APIキーを自分で用意する「BYOK(Bring Your Own Key)」方式で、ツール自体の利用料はかからない
- セッション中のモデル切り替え: 会話の文脈を保ったまま、途中で別のLLMに乗り換えられる。調査は安いモデル、実装は高性能モデル、といった使い分けができる
- LSP連携でコードを正しく理解: エディタが使うのと同じLanguage Server Protocolから型情報や定義位置を取得し、プロジェクトの構造を踏まえた提案を行う
- MCPサーバーで拡張: Model Context Protocol(stdio・HTTP・SSE)に対応し、外部サービスや社内ツールをエージェントの手足として追加できる
- プロジェクト単位のセッション管理: 1つのプロジェクトに複数の作業セッションを保持し、それぞれの文脈を持続させられる。作業を中断しても続きから再開しやすい
- 権限コントロールと除外設定: 実行を許可するコマンド・拒否するコマンドをリストで管理でき、
.crushignoreでAIに読ませたくないファイルを除外できる - 幅広いプラットフォーム対応: macOS・Linux・Windows・Android・FreeBSD・OpenBSD・NetBSDで動作。Homebrew・npm・Winget・Scoop・Nixなど主要なパッケージマネージャーからインストールできる
料金
| プラン | 月額料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Crush 本体 | $0 | オープンソース(FSL-1.1-MIT)。利用料はかからず、接続するLLMプロバイダーへの従量課金のみ |
| Charm Hyper(無料プラン) | $0 | Charm公式のモデル提供サービス。毎月リフレッシュされる100ハイパークレジットを付与 |
| Charm Hyper(有料プラン) | 要確認 | 月間クレジット枠の拡大、モデルへの優先アクセス |
| ハイパークレジット追加購入 | 従量 | 月間枠を超える分をバンドルで購入。購入したクレジットは失効しない |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトおよびCharm Hyperをご確認ください。
Crush自体は無料で使えるため、実際のコストは「どのモデルをどれだけ使うか」で決まる。自前のAPIキーを使う場合はそのプロバイダーの料金が、Charm HyperのようなCharm公式の提供サービスを使う場合はクレジット消費が、それぞれ費用になる。
メリット・デメリット
✅ メリット
- モデルを自由に選べるため、ベンダーロックインを避けられる。新しいモデルが出たらすぐ試せる
- ツール本体が無料のオープンソースで、コストはAPI使用量だけに抑えられる
- LSP連携により、単なるテキスト補完ではなくプロジェクトの構造を踏まえた編集が期待できる
- MCP対応で、社内システムや外部サービスと連携した独自ワークフローを組み立てられる
- 対応プラットフォームが非常に広く、BSD系やAndroidのターミナルでも動く
- ターミナルUIの完成度が高く、CLIツールを作り続けてきたCharmらしい操作感
⚠️ デメリット
- 導入時にAPIキーの取得と設定ファイルの記述が必要で、まったくの初心者にはハードルがある
- 料金がAPI従量課金のため、使い方によっては月額固定のサービスより高くつく場合がある
- GUIを持たないターミナル専用ツールで、エディタのGUI補完に慣れた人には馴染みにくい
- モデルによって出力品質が大きく変わり、結果の当たり外れを自分で見極める必要がある
- FSL-1.1-MITライセンスのため、完全なOSSライセンス(MIT等)を前提とした商用利用には条件の確認が必要
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Crush | Claude Code | Gemini CLI | Aider |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Charmbracelet | Anthropic | コミュニティ(OSS) | |
| 使えるモデル | 複数プロバイダーから選択 | Claude系のみ | Gemini系が中心 | 複数プロバイダーから選択 |
| 課金方式 | 本体無料+API従量/Charm Hyper | サブスクリプションまたはAPI | 無料枠+API | 本体無料+API従量 |
| LSP連携 | あり | 独自のコード解析 | 独自のコード解析 | リポジトリマップ方式 |
| MCP対応 | あり | あり | あり | 限定的 |
| 実装言語 | Go | TypeScript | TypeScript | Python |
こんな人におすすめ
- 特定のAIベンダーに縛られず、複数のモデルを比較しながら使いたい開発者
- 手元のAPIキーで、使った分だけ払う形にコストを抑えたい個人開発者
- ターミナル中心のワークフローを組んでおり、エディタを離れずにAIへ委任したい人
- MCPで社内ツールや独自データソースをエージェントに接続したいチーム
- LinuxやBSD、Androidのターミナルなど、対応環境が限られがちな環境で作業する人
まとめ
Crushは、「AIコーディングエージェントを使いたいが、モデルの選択権は手元に残したい」という要求に正面から応えるツールである。本体はオープンソースで無料、コストは選んだLLMのAPI利用量次第という構造は、モデルの世代交代が速い今の状況と相性がよい。一方でAPIキーの用意や設定ファイルの記述など、最初の一歩には多少の準備がいる。まずは手持ちのAPIキー、あるいはCharm Hyperの無料枠で小さなタスクを任せてみて、自分のワークフローに馴染むか確かめるとよい。