AI Deck

crow-cli ─ ターミナルとエディタの両方で動く、MIT ライセンスの ACP ネイティブなコーディングエージェント

Thomas Wood 氏が開発するオープンソースのコーディングエージェント。Agent Client Protocol(ACP)にネイティブ対応しており、ターミナル単体でも、Zed のような ACP 対応エディタの中でも同じエージェントを動かせる。設計思想は「ゼロフレームワーク」─独自のエージェントフレームワークを作らず、OpenAI SDK・FastMCP といった既存の部品だけで組み上げる、という方針である。思考を担う crow-cli と、実際にファイルやコマンドを触る crow-mcp の 2 層構成をとり、Web 検索まで含めた 7 種類のツールを最初から備えている。MIT ライセンスで公開されており、サブスクリプション型のエージェントサービスに代わる選択肢として作られた。

主な特徴

  • ACP ネイティブで、CLI とエディタを行き来できる: 独自プロトコルではなく Agent Client Protocol に準拠しているため、ACP に対応したクライアントであればそのまま接続できる。開発チームは Zed をフォークしたクライアントを推奨環境として挙げている
  • 思考と実行を分けた 2 層アーキテクチャ: ACP エージェント本体の crow-cli(ReAct ループを回す「頭脳」)と、MCP ツールサーバーの crow-mcp(ファイル・シェル・Web を触る「手」)に役割を分離。ツール側だけを差し替えたり、他の MCP クライアントから利用したりしやすい構造になっている
  • 7 種類の内蔵ツール: ファイル操作(読み書きと曖昧一致による編集)、ターミナルコマンド実行、SearXNG 経由の Web 検索、Web ページの Markdown 取得、Webcam キャプチャ、画像ファイルの読み取り、メモリ参照が標準で使える
  • 検索 API キーが要らない Web 検索: 検索はセルフホストしたメタ検索エンジン SearXNG(Docker で起動)に投げるため、検索専用の API キーを別途契約する必要がない
  • セッションをまたいだ記憶: 会話やツール実行の履歴をローカルに保存し、過去のセッションを検索して呼び戻せる。エージェント同士が互いの履歴を参照する使い方も想定されている
  • スキルとサブエージェントによる拡張: ~/.agents/skills 配下に SKILL.md を置くと、その手順が実行時に読み込まれ、タスクに合うものをエージェントが選んで使う。別のエージェントに作業を委譲する仕組みも用意されている
  • 好きな LLM を選べる: OpenAI 互換エンドポイント(OpenAI、OpenRouter、独自エンドポイントなど)を設定ファイル ~/.agents/crow/config.yaml で指定する方式。モデルの選択権はユーザー側にある

料金

プラン料金主な内容
本体(MIT ライセンス)$0すべての機能。GitHub からインストールして無制限に利用可能
LLM 利用料各プロバイダの従量課金OpenAI・OpenRouter など、接続先の API 利用料が別途かかる

crow-cli 自体は無料のオープンソースソフトウェアで、公式サイトにも有料プランの記載はない。実際のコストは「どのモデルにどれだけ投げたか」で決まるため、安価なモデルに切り替えれば費用を抑えられる一方、高性能モデルを多用すれば相応の API 料金がかかる。

料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。

メリット・デメリット

メリット

  • MIT ライセンスの OSS で、月額のサブスクリプション契約が不要。コストは API 従量分だけに収まる
  • ACP 準拠なので、ターミナルと対応エディタで同じエージェントをそのまま使い回せる
  • 検索・ファイル・シェル・画像といったツールが最初から揃っており、追加の MCP サーバーを探し回らなくても実用的な作業ができる
  • SearXNG をセルフホストするため、Web 検索に別サービスの API キーを用意しなくてよい
  • 実装が既存ライブラリの薄い組み合わせで、コードを読んで挙動を確かめたり手を入れたりしやすい

⚠️ デメリット

  • セットアップに Python と Docker が必要で、GUI だけで完結するツールに比べると導入のハードルが高い
  • LLM プロバイダの API キーを自分で用意し、利用料も自己管理する必要がある
  • 開発が活発な個人プロジェクトで、コミュニティ規模は大手ベンダー製エージェントに比べて小さい。ドキュメントと実装が食い違う場面もありうる
  • ACP 対応クライアントはまだ限られており、エディタ統合の選択肢は多くない
  • 日本語のまとまった情報はほとんどなく、英語のドキュメントとソースコードを読む前提になる

類似サービスとの比較

比較項目crow-cliClaude CodeGemini CLIAider
提供元Thomas Wood(個人・OSS)AnthropicGoogleOSS コミュニティ
ライセンスMIT(オープンソース)プロプライエタリオープンソースオープンソース
使えるモデルOpenAI 互換の任意のモデルClaude シリーズGemini シリーズ主要プロバイダから選択
エディタ統合ACP 対応クライアント(Zed など)専用拡張・IDE 連携対応エディタ・IDE 連携主にターミナル
料金体系本体無料+API 従量サブスクまたは API 従量無料枠あり+API 従量本体無料+API 従量

いずれもターミナルからコードを任せるという点では同じだが、crow-cli の立ち位置は「特定ベンダーのモデルに縛られず、プロトコル標準(ACP・MCP)に乗って動く軽量な実装」である。モデルの選択権とコード全体の可読性を重視する人に向く。

こんな人におすすめ

  • コーディングエージェントを使いたいが、月額サブスクではなく API 従量課金で済ませたい人
  • OpenAI・OpenRouter など、使うモデルを自分で選び分けたい人
  • Zed をはじめとする ACP 対応エディタを使っていて、その中でエージェントを動かしたい人
  • エージェントの内部実装を読んで理解したい、あるいは自分で手を入れたい開発者
  • 検索用の API キーを増やさずに、Web 検索まで含めた作業をエージェントに任せたい人

まとめ

crow-cli は、独自フレームワークを作らないという方針を貫き、ACP と MCP という標準プロトコルの上に薄く実装されたコーディングエージェントである。思考役の crow-cli と実行役の crow-mcp を分けた構成、SearXNG によるキー不要の Web 検索、セッションをまたぐ記憶といった実用的な機能が MIT ライセンスで手に入る。Python と Docker のセットアップを引き受けられるなら、サブスクリプション型エージェントの代替として十分に検討の価値がある。まずは GitHub のインストール手順に沿って導入し、手持ちの API キーで小さなタスクから試すとよい。

関連リンク

← ブログ