AIコーディングエージェントに作業を任せると、返ってくる変更が数百行、ときには数千行に達する。ターミナルの差分表示ではどこを直してほしいのか伝えづらく、結局「ここのエラー処理が雑」と文章で説明し直すことになりがちだ。Crit は、その往復をブラウザ上のレビュー画面に置き換えるオープンソースのCLIツールである。エージェントが出したプラン・差分・動作中のアプリを開き、気になった行をクリックしてコメントを書けば、エージェントがその内容を読み取って修正に入る。単一バイナリで動き、ローカル利用ではログインもデーモンも要らない。開発者は Tomasz Tomczyk 氏、ライセンスは MIT。
主な特徴
- レビュー対象に応じた4つのモード: プラン・ドキュメント(Markdown をレンダリングして行コメント)、コード(Git・jj・Sapling のブランチ差分をシンタックスハイライト付きで表示)、ライブ(起動中の localhost アプリをプロキシして DOM 要素にコメント)、プレビュー(生成された静的 HTML を iframe で表示)に対応する
- 行単位・範囲単位のインラインコメント: 行番号をクリック、あるいはドラッグして範囲を選択するとコメントを付けられる。表示は GitHub のプルリクエストに近く、未解決のスレッドは解決するまでフラグが立ったまま残る
- ラウンド間の差分表示: エージェントが修正を返すたびに、前回のレビューから何が変わったかを split / unified の差分で確認できる。指摘が反映されたかを目視で追える
- 13以上のエージェントに対応: Claude Code、Cursor、GitHub Copilot、Codex、OpenCode、Aider、Cline、Windsurf、Gemini、Qwen などに専用プラグインが用意されている。ファイルを読んでシェルコマンドを実行できるエージェントであれば、それ以外でも連携できる
- GitHub / GitLab との双方向同期: レビューコメントをプルリクエスト・マージリクエストと同期でき、チームの既存フローから切り離されない
- ローカル優先の設計: サーバーは 127.0.0.1 にバインドし、テレメトリは収集しない。共有は明示的にアップロードしたときだけ行われる
- 非同期レビュー用の共有と Vim キーバインド: レビューを crit.md にアップロードして他者に見せられるほか、
j/kで移動、cでコメントといったキーボード操作が用意されている
料金
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| ローカル利用 | 無料(MIT ライセンス) | 全レビューモード、エージェント連携、GitHub / GitLab 同期。アカウント登録不要 |
| crit.md での共有 | 無料アカウント | レビューを crit.md にアップロードして共有。GitHub OAuth でサインイン |
| セルフホスト | 無料(自前のインフラ費用のみ) | crit-web を Docker 等でデプロイし、共有先を自社サーバーに向ける |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- ターミナルの差分では追いきれない大量の変更を、ブラウザの見慣れた UI で読める
- 「この行のここ」という指示がそのままエージェントに渡るため、指摘を文章で言い換える手間が減る
- インストールが単一バイナリで完結し、Homebrew・Go・Nix・Windows 向けバイナリから選べる
- ローカル完結・テレメトリなしで、社内コードを外部に出さずに使える
- MIT ライセンスのオープンソースで、共有基盤まで含めてセルフホストできる
⚠️ デメリット
- CLI ツールのため、ターミナル操作に慣れていない人には導入のハードルがある
- 対応エージェントごとにプラグインの導入手順が異なり、初回の設定に手間がかかる
- コメントに対してエージェントがその場で応答する「Send to Agent」は実験的機能と位置づけられている
- バージョンアップの頻度が高く、機能や設定が変わることがある
- 共有機能を使う場合は crit.md へのアップロード(またはセルフホストの構築)が前提になる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Crit | GitHub プルリクエスト | CodeRabbit | エージェント内蔵の差分ビュー |
|---|---|---|---|---|
| 主な用途 | エージェントとの往復レビュー | 人間同士のコードレビュー | AI による自動レビュー | 変更内容の確認 |
| レビューする相手 | AIエージェント | 同僚 | 人間(AIが指摘) | AIエージェント |
| コメントの届き先 | エージェントが読む構造化ファイル | プルリクエスト上の議論 | プルリクエスト上の指摘 | 基本はチャット欄 |
| コミット前に使えるか | 使える(ローカルの作業ツリー) | 原則プッシュ後 | 原則プルリク作成後 | 使える |
| 動作環境 | ローカルの単一バイナリ | クラウド | クラウド | エディタ / ターミナル内 |
| 費用 | 無料(MIT) | GitHub のプランに準拠 | 無料枠と有料プラン | 各ツールに準拠 |
こんな人におすすめ
- Claude Code や Cursor に大きめのタスクを任せていて、返ってきた差分のレビューに時間を取られている開発者
- 実装前にエージェントが書いたプランを読み込み、方針の段階で細かく修正を入れたい人
- UI の見た目を確認しながら「この余白を詰めて」と要素単位で指示したいフロントエンド担当者
- 社内コードを外部サービスに送らずにレビュー環境を整えたいチーム
- 既存の GitHub / GitLab のフローを維持したまま、エージェント向けのレビュー手段だけを足したい人
まとめ
Crit は、AIエージェントが生み出す大量の変更を「読んで、指して、直させる」ための道具である。人間同士のコードレビューを模した UI をローカルに用意し、行単位の指摘をそのままエージェントへの指示に変換する点が中心的な価値になっている。プラン・コード・動作中のアプリ・静的 HTML と対象の幅も広く、テレメトリなし・MIT ライセンス・セルフホスト可という条件は業務利用でも扱いやすい。エージェントに任せる作業量が増え、レビューが追いつかなくなってきたと感じたら、まず brew install crit で試してみるとよい。