QwenPaw(旧 CoPaw)は、Alibaba の AgentScope チームが開発するオープンソースの AI パーソナルアシスタントである。Apache License 2.0 で公開されており、自分のパソコンにインストールしても、Docker やクラウドサーバーに置いても動かせる。最大の特徴は、DingTalk・Lark・WeChat・Discord・Telegram・iMessage・QQ といった普段使いのチャットアプリから、同じひとつのアシスタントを呼び出せる点にある。2026年4月のバージョン1.1.0で「CoPaw」から「QwenPaw」へ改名され、Alibaba の Qwen(通義千問)オープンソースエコシステムに正式に組み込まれた。2026年8月時点の最新版は v2.1.0 系である。
主な特徴
- 3層構造のメモリ: 直近のやり取りを保持する作業中の文脈、会話の全履歴、そして ReMe による自己更新型のナレッジベースという3つの層でユーザーの情報を覚える。使い込むほど前提説明が要らなくなる設計になっている
- 複数のチャットアプリを1インスタンスで横断: DingTalk・Lark・WeChat・Discord・Telegram・iMessage・QQ に対応。仕事では Lark、私用では Discord、といった使い分けをしても同じアシスタント・同じ記憶を共有できる
- ローカルからクラウドまで選べる導入方法: pip やインストールスクリプトでの導入、Tauri 製のデスクトップアプリ、Docker コンテナ、Alibaba Cloud ECS へのワンクリック展開、AgentScope Platform でのホスティングと、環境に応じて選べる
- スキルとMCPによる拡張: PDF・Office 文書の処理、ブラウザ操作、ニュース取得などのスキルを追加できるほか、MCP(Model Context Protocol)対応の外部ツールも接続できる。REST API と ACP(Agent Communication Protocol)も備える
- 定時タスクの自動実行: Cron ベースのスケジューラを内蔵しており、「毎朝この情報をまとめて送る」といった定期実行を任せられる
- 安全側に倒したサンドボックス設計: Tool Guard・File Guard・Skill Scanner といった仕組みでツール実行やファイル操作、外部スキルの取り込みを制御する。個人の端末で動かす前提のツールとして重要な部分である
- 軽量モデル QwenPaw-Flash: エージェント用途に最適化された 2B / 4B / 9B の小型モデルが用意されており、Ollama や LM Studio 経由のローカルモデルと併せて、API キーなしでの運用も選べる
料金
| 項目 | 料金 | 内容 |
|---|---|---|
| ソフトウェア本体 | 無料 | Apache License 2.0 のオープンソース。自分の端末やサーバーに導入して使う |
| LLM の利用料 | 別途(従量課金) | DashScope(Qwen)や OpenAI などクラウド API を使う場合は各社の料金が発生する。QwenPaw-Flash やローカルモデルを使う場合は API キー自体が不要 |
| クラウド実行環境 | 要確認 | Alibaba Cloud ECS や AgentScope Platform 上で動かす場合は、各プラットフォームの料金体系に従う |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式サイトおよびGitHub リポジトリをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- オープンソースのため、データを自分の端末・自分のサーバーの中に閉じたまま運用できる
- 普段使っているチャットアプリがそのまま入り口になり、専用アプリを開き直す必要がない
- メモリが会話をまたいで蓄積されるので、毎回同じ前提を説明し直す手間が減る
- ローカルモデルに対応しており、API 課金ゼロで動かす構成も選べる
- スキルと MCP の両方で拡張できるため、後から用途を足していきやすい
⚠️ デメリット
- 導入には Python 環境(3.11〜3.13)やコンテナの知識が要り、クリック1回で使い始められる類のサービスではない
- チャットアプリとの連携には各サービス側でのボット登録・トークン発行が必要で、初期設定に手間がかかる
- 中国のチャットアプリ(DingTalk・Lark・WeChat・QQ)への対応が手厚い反面、Slack や Microsoft Teams など日本の職場で使われがちなツールの扱いは事前確認が必要
- 開発ペースが速く、バージョン間で構成が変わることがある(2026年4月にはプロジェクト名自体が CoPaw から QwenPaw へ変わっている)
- ローカルモデルで動かす場合は、それなりのマシンスペックが求められる
類似サービスとの比較
| 比較項目 | QwenPaw | Open WebUI | LibreChat | Dify |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Alibaba(AgentScope) | コミュニティ | コミュニティ | LangGenius |
| 主な用途 | 個人向けAIアシスタント | 各種LLM向けのチャットUI | マルチモデル対応のチャットUI | LLMアプリの開発基盤 |
| チャットアプリ連携 | DingTalk・Discord・Telegram・iMessage 等 | 基本は自前のWeb UI | 基本は自前のWeb UI | API経由で自作アプリに組み込む |
| ローカル実行 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 主な拡張方法 | スキル + MCP | 関数・パイプライン | エージェント・MCP | ワークフロー・プラグイン |
| 長期メモリ | 3層メモリを標準搭載 | 設定・拡張で対応 | 会話履歴中心 | アプリ側で設計 |
こんな人におすすめ
- 業務データや個人的な記録を外部サービスに預けたくなく、自分の環境で AI アシスタントを動かしたい人
- ブラウザのチャット画面を開き直すのではなく、普段使っているチャットアプリからそのまま AI に話しかけたい人
- 「毎朝の情報整理」「定期的なリマインド」など、定時タスクを AI に任せたい人
- Ollama や LM Studio でローカルモデルをすでに動かしており、その上に実用的なアシスタント層を載せたい人
- MCP 対応ツールを自作・接続して、自分専用のエージェント環境を組み上げたい開発者
まとめ
QwenPaw(旧 CoPaw)は、「自分の手元で動く」「普段のチャットアプリから呼べる」「使うほど覚える」の3点を軸にしたオープンソースの AI パーソナルアシスタントである。導入には Python やコンテナの基礎知識が必要で、誰にでも勧められる手軽さはない。一方で、データを自分の管理下に置いたまま、メモリ・定時タスク・MCP 拡張まで備えたアシスタントを構築できる点は、クラウド完結型のチャットサービスにはない強みといえる。まずは GitHub のクイックスタートに沿ってローカルに立て、慣れてからチャットアプリ連携やスキル追加へ広げていくのが現実的な進め方だろう。