AI Deck

Cognee ─ AIエージェントにセッションを跨ぐ長期記憶を与えるオープンソースのメモリ基盤

ドイツのTopoteretesが開発する、AIエージェント向けのオープンソース memory プラットフォーム。チャットを閉じると文脈が消えてしまうという生成AIの弱点に対して、取り込んだドキュメントや会話からナレッジグラフを組み立て、次のセッションでも同じ知識を呼び出せるようにする。グラフ検索・ベクター検索・リレーショナル検索を組み合わせて「関連する記憶」を引き当てるのが特徴で、MCPサーバー経由でClaude CodeやCodexといったエージェントにそのまま接続できる。ライセンスはApache-2.0で、GitHubでは3万を超えるスターを集めている。自分のマシンやサーバーで動かすセルフホストから始め、規模が大きくなったらマネージドのCognee Cloudへ移行できる。

主な特徴

  • ナレッジグラフ化された記憶: 取り込んだデータを単なるテキストの断片としてではなく、チャンク → 抽出したエンティティ → 概念 → オントロジーという段階で構造化する。「誰が何にどう関係しているか」を保持するため、キーワードが一致しない質問にも答えを返しやすい
  • remember / recall / forget / improve の4操作: 記憶する、思い出す、忘れる、記憶を改善する、という4つの動詞に操作が整理されている。recallでは検索戦略が自動で選ばれるため、利用側でグラフ検索とベクター検索を使い分ける必要がない
  • MCPサーバーで既存エージェントに接続: 公式のMCPサーバーがstdio・SSE・HTTPの各トランスポートに対応。Claude Code向けのプラグインも用意されており、エージェントに永続的な記憶を後付けできる
  • PythonのSDKとCLIの両対応: pip install cognee でインストールし、LLMのAPIキーを設定すればすぐ動く。cognee-cli remember / cognee-cli recall のようにコマンドラインからも扱える
  • データベースを差し替えられる設計: グラフはKuzu(既定)・Neo4j・PostgreSQL・Turso、ベクターはLanceDB(既定)・PGVector・Qdrant・Chroma・Weaviate・Milvusなどに対応。既存の構成に合わせて選べる
  • セルフホストからクラウドまで: ローカルで完結させて手元のデータを外に出さない運用も、Cognee Cloudでワークスペースを共有する運用も選べる。Standardプラン以降ではSlack・Notion・Google Driveをデータソースとして接続できる

料金

プラン料金主な内容
Free$01ワークスペース、100万トークンぶんの利用枠、ユーザー数無制限、API呼び出し無制限、Claude Code / Codex / MCP 連携
Standard100万トークンあたり $2.50 + ワークスペース追加ごとに $5Freeの内容すべて、Slack / Notion / Google Drive 連携、アプリ内サポート
Enterprise要問い合わせStandardの内容すべて、専用Slackチャンネル、専任サポートエンジニア、BYOクラウド、サポートSLA

料金は2026年8月時点の情報です。年額プランの記載はなく、Standardは従量課金です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。

なお、オープンソース版をセルフホストする場合、Cogneeそのものの利用料はかからない。ただし内部で使うLLMや埋め込みモデルのAPI料金は別途発生する。

メリット・デメリット

メリット

  • Apache-2.0のオープンソースで、セルフホストすればデータを自分の管理下に置いたまま使える
  • ナレッジグラフとベクター検索を組み合わせるため、単純な類似度検索では拾えない関係性のある情報を引き出せる
  • MCPサーバーがあるので、Claude Codeなど既存のエージェントに大きな改修なしで記憶を足せる
  • グラフDB・ベクターDB・LLMをそれぞれ差し替えられ、既存のインフラに寄せやすい
  • 無料枠が100万トークンぶんあり、ユーザー数とAPI呼び出しに制限がないため小さく試しやすい

⚠️ デメリット

  • 前提としてPythonやデータベースの知識が要る開発者向けのツールで、非エンジニアが単体で使うものではない
  • セルフホストではグラフDB・ベクターDB・LLMキーの構成を自分で決める必要があり、初期セットアップに手間がかかる
  • データの取り込み(グラフ構築)時にLLMを使うため、投入するデータ量が増えるとその分のAPI費用がかさむ
  • Standardプランは従量課金のため、利用量が読めないうちは月額の見通しを立てにくい
  • 分野としてまだ新しく、周辺のベストプラクティスや事例が固まりきっていない

類似サービスとの比較

比較項目CogneeMem0ZepLlamaIndex
主な位置づけエージェント向けメモリ基盤エージェント向けメモリレイヤーエージェント向けメモリサービスLLMアプリのデータフレームワーク
記憶の持ち方ナレッジグラフ+ベクター+リレーショナルベクター中心(グラフ機能も提供)時間軸を持つナレッジグラフインデックス/ベクターストア中心
ライセンスApache-2.0(オープンソース)オープンソース版+クラウドオープンソース版+クラウドオープンソース+クラウド
利用形態セルフホスト/Cognee Cloudセルフホスト/クラウドセルフホスト/クラウドセルフホスト/クラウド
得意なこと関係性を辿る想起、DBの差し替え導入の手軽さ会話履歴の時系列的な扱い検索・RAGパイプライン全般

「記憶」を扱うツールは競合が増えているが、Cogneeは検索の手段としてグラフを前面に置いている点と、構成要素をほぼすべて差し替えられる点が持ち味になっている。

こんな人におすすめ

  • Claude CodeなどのAIエージェントに、セッションを跨いで残る記憶を持たせたい開発者
  • 社内ドキュメントや議事録を、単なる全文検索ではなく関係性ごと引き出せる形で扱いたいチーム
  • 顧客データや設計資料を外部サービスに預けたくなく、セルフホストで完結させたい組織
  • RAGの精度が伸び悩んでおり、グラフ構造を使った検索を試したいエンジニア
  • 既存のPostgreSQLやNeo4jといった資産を活かしたまま、記憶の仕組みを足したい開発者

まとめ

Cogneeは、AIエージェントの「セッションが終わると忘れる」という制約に対して、ナレッジグラフという形で答えを出そうとしているオープンソースのメモリ基盤である。Apache-2.0でセルフホストでき、MCPサーバー経由で既存のエージェントにすぐ繋がる一方、扱うにはPythonとデータベースの知識が前提になる。まずは無料枠とローカル環境で小さなデータセットを取り込み、想起の質を確かめてからCognee Cloudや本格導入を検討するのが現実的だろう。

関連リンク

← ブログ