Cline Kanban は、Cline Bot Inc. が公開しているオープンソースのローカル Web アプリ。git リポジトリのルートで npx kanban と打つとブラウザにカンバンボードが立ち上がり、Claude Code・Codex・Cline CLI といった CLI 型のコーディングエージェントを並列で走らせられる。タスクカード 1 枚ごとに専用のターミナルと git worktree が自動で用意されるため、複数のエージェントが同時に動いても互いの変更が衝突しない。位置づけは「IDE の置き換え」ではなく「大量のエージェントを走らせ、その差分をレビューするための作業台」で、公式にはリサーチプレビューとして提供されている。ライセンスは Apache 2.0。
主な特徴
- カード = ターミナル + worktree: タスクカードを作るたびに独立したターミナルと使い捨ての git worktree が割り当てられる。ブランチの切り替えや掃除を自分でやる必要がなく、5 つのタスクを同時に走らせても作業ツリーが混ざらない
- 依存チェーンで自律実行: カード同士をリンクして依存関係を作れる(⌘ + クリック)。先行カードが完了すると後続カードが自動で走り出すため、「実装 → テスト追加 → リファクタ」のような一連の流れをまとめて任せられる
- リアルタイム差分レビューと行コメント: エージェントのターミナル出力の隣に差分が表示され、diff の行に直接コメントを書いてエージェントの作業を軌道修正できる。チェックポイント付きの差分ビューアも内蔵
- auto-commit / auto-PR: レビューを通した内容を自動でコミット、あるいはプルリクエストまで作らせる設定がある。マージコンフリクトの解消も含めて任せられる
- 内蔵の git インターフェース: コミット履歴・ブランチ管理・fetch / pull / push をボードの中から扱える。ターミナルとエディタを行き来する回数が減る
- Linear MCP 連携: Linear のチケットを取り込み、スプリントのバックログをまとめてエージェントのタスクカードに変換できる。説明文をプロンプトにコピペし直す手間がない
- サイドバーチャットでタスク分解: やりたいことをチャットに書くと、カードへの分解を手伝ってくれる。手動でのカード作成ももちろん可能
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| オープンソース版 | $0 | 全機能。アカウント登録不要、ローカル実行、Apache 2.0 ライセンス |
Cline Kanban 自体は無料で、アカウント登録も不要。ただし実際にコードを書くのは Claude Code・Codex・Cline CLI といった別のエージェントなので、それぞれのサブスクリプションや API 利用料は別途かかる点に注意したい。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式ドキュメントをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
npx kanbanだけで起動でき、既存のリポジトリに設定ファイルを追加する必要がない- worktree の管理が自動なので、並列実行にありがちな「どのブランチで作業していたか分からなくなる」問題が起きにくい
- 特定のエージェントに縛られない。手元に入れている CLI エージェントを検出して使う
- ローカル完結でコードが外部サービスのボードに上がらない
- オープンソース(Apache 2.0)で、挙動が気になれば実装を読める
⚠️ デメリット
- リサーチプレビューであり、実験的なエージェント機能に依存している。仕様変更やバグに遭遇する前提で使う必要がある
- Node.js 18 以上と git リポジトリが必須。エージェント本体も別途インストールしておく必要がある
- 並列実行すると API 消費が一気に増える。エージェント側の従量課金プランでは費用の見積もりが読みにくい
- 複数のエージェントが同時に大きな変更を出すため、レビューの負荷はむしろ人間側に寄る
- ローカルアプリなので、チームでボードを共有する用途には向かない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Cline Kanban | Conductor | Claude Code(単体) | Linear |
|---|---|---|---|---|
| 主な用途 | 複数 CLI エージェントの並列実行と差分レビュー | 複数エージェントの並列実行(macOS アプリ) | 単一セッションでのコーディング委任 | チームのタスク管理 |
| エージェントの選択 | Claude Code / Codex / Cline CLI など | Claude Code 中心 | Claude Code のみ | エージェント実行機能なし |
| 実行場所 | ローカル(ブラウザ UI) | ローカル(ネイティブアプリ) | ターミナル | クラウド |
| worktree 分離 | 自動 | 自動 | 手動 | ─ |
| 料金 | 無料・オープンソース | 無料枠あり | Claude のプランに準拠 | 有料プラン中心 |
こんな人におすすめ
- Claude Code や Codex を日常的に使っていて、1 セッションずつ順番待ちするのが遅いと感じている開発者
- 独立した小さめのタスクが同時に何本もあり、それぞれ別ブランチで進めたい人
- エージェントの出力を「動いたかどうか」ではなく差分としてきちんとレビューしたい人
- Linear でスプリントを管理していて、チケットをそのままエージェントに渡したいチーム
- 特定ベンダーのエージェントに固定されたくない、オープンソース志向の開発者
まとめ
Cline Kanban は、CLI コーディングエージェントを 1 本ずつ動かす使い方から、複数本を同時に回して差分をまとめてレビューする使い方へ移るための道具である。カードごとの worktree 分離と依存チェーンによって、並列実行の面倒な部分(ブランチ管理、順番待ち)が自動化されている点が中心的な価値だ。一方でリサーチプレビューであり、レビューの負荷とエージェント側の利用料は増える。まずは重要度の低いタスクを 2〜3 枚並べて、自分のワークフローに並列実行が合うかを確かめるところから始めるとよい。