Claw-Empireは、Claude CodeやCodex CLIといったAIコーディングエージェントを「社員」に見立て、ピクセルアート風の仮想オフィスの中でまとめて動かすオープンソースのシミュレーターである。利用者はCEOのデスクに座る立場で、企画・開発・デザイン・QA・DevSecOps・運用といった部門にタスクを割り振り、カンバンボードで進捗を追う。ローカル環境で完結するローカルファースト設計で、ライセンスはApache 2.0。GreenSheepが公開し、2026年時点でバージョン2系まで開発が進んでいる。
複数のエージェントを同時に走らせようとすると、ターミナルのタブが増え、どのエージェントが何をしているのか分からなくなる。Claw-Empireはその状況を「会社の組織図」というメタファーに置き換えることで、全体像を一目で把握できるようにしている。
主な特徴
- 複数エージェントの一元管理: Claude Code、Codex CLI、Gemini CLI、OpenCode、Kimi Code、GitHub Copilot、Antigravityなど複数のコーディングエージェントに対応。CLI経由・OAuth・APIキーのいずれかで接続し、同じオフィス内で並行して稼働させられる
- 部門制の組織構造とピクセルアートUI: 企画・開発・デザイン・QA/QC・DevSecOps・運用の6部門にエージェントを配置。PixiJSで描画されたアニメーション付きのオフィス画面で、誰がどの仕事に取り組んでいるかを視覚的に確認できる
- カンバンボードによるタスク管理: Inboxから完了までのライフサイクルをカンバン形式で追跡。WebSocketによるリアルタイム更新で、進捗が画面に即座に反映される
- Git worktreeによる作業の分離: 各エージェントは独立したgit worktree上で作業するため、同時並行で走らせても変更が衝突しにくい。マージ前にworktreeの内容と検証結果を確認する流れも用意されている
- ワークフローパックと成果物の出力: 開発・レポート・Webリサーチ・小説・動画プリプロダクション・ロールプレイの6種類のワークフロープロファイルを内蔵。会議の議事録を自動生成したり、レポートや議事録からPowerPointスライドを書き出したりできる
- メッセンジャー連携: Telegram、Discord、Slack、WhatsApp、Google Chat、Signal、iMessageと連携し、外出先からタスクの指示や進捗確認ができる。OAuthトークンやメッセンジャーのトークンは暗号化して保存される
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| オープンソース版(Apache 2.0) | $0 | 全機能を利用可能。個人利用・商用利用とも無償 |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の情報は公式リポジトリをご確認ください。
Claw-Empire自体は無償だが、実際に動かすAIエージェント側の費用(Claude CodeやCodex CLIのサブスクリプション、あるいは各社APIの従量課金)は別途必要になる。エージェントを増やすほど、そちらのコストが積み上がる点は最初に見積もっておきたい。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 複数のAIエージェントの稼働状況を1画面で把握でき、ターミナルを行き来する手間がなくなる
- git worktreeでエージェントごとに作業が分離されるため、並行実行時の変更衝突を抑えられる
- Apache 2.0のオープンソースで、商用利用も含めて無償で使える
- 特定のエージェントに縛られず、Claude Code・Codex CLI・Gemini CLIなどを組み合わせて使える
- Dockerでの起動に対応しており、開発マシンを汚さずに試せる
- UIが英語・韓国語・日本語・中国語に対応している
⚠️ デメリット
- セルフホスト前提のため、Node.js 22以上・pnpm・Gitといった環境の準備と保守は利用者側の責任になる
- ホスティング型のSaaSではなく、サポート窓口やSLAは存在しない
- エージェントを増やすほどAPI・サブスクリプション費用とマシン負荷が増える
- 仮想オフィスというメタファーは分かりやすい反面、単純に1タスクを流したいだけの用途にはオーバースペックになりやすい
- 発展途上のプロジェクトで更新が速く、バージョン間で挙動や設定が変わる可能性がある
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Claw-Empire | Claude Squad | Vibe Kanban | Conductor |
|---|---|---|---|---|
| 形態 | Webアプリ(ローカル実行) | ターミナルUI | Webアプリ(ローカル実行) | macOSネイティブアプリ |
| UIの特徴 | ピクセルアートの仮想オフィス + カンバン | tmuxベースのセッション一覧 | カンバンボード | ワークスペース一覧 + 差分ビューア |
| 作業の分離 | git worktree | git worktree | git worktree | git worktree |
| 対応エージェント | Claude Code / Codex CLI / Gemini CLI / OpenCode ほか | Claude Code / Codex / Gemini / Aider ほか | 複数のコーディングエージェント | Claude Code / Codex |
| 外部連携 | Telegram・Discord・Slack ほか | ─ | ─ | ─ |
| ライセンス・料金 | Apache 2.0・無償 | オープンソース・無償 | オープンソース・無償 | 無償 |
いずれもgit worktreeでエージェントの作業を分離するという発想は共通している。違いは「どう見せるか」で、ターミナル内で完結させたいならClaude Squad、macOSのネイティブアプリで差分レビューまで含めて済ませたいならConductor、組織のメタファーで役割を分けて長めのワークフローを回したいならClaw-Empireが候補になる。
こんな人におすすめ
- 3体以上のAIコーディングエージェントを日常的に並行運用していて、進捗の把握に困っている開発者
- 企画・実装・レビューといった役割分担をエージェント側にも持たせて、長めの作業を任せたい人
- クラウドにコードを預けず、ローカル環境で完結する構成を優先したい人
- 開発だけでなく、リサーチレポートや議事録・スライド作成までAIに任せる運用を試したい人
- 外出先からTelegramやDiscordで進捗を確認したい個人開発者
まとめ
Claw-Empireは、増えすぎたAIコーディングエージェントを「会社」というメタファーで束ね直すオープンソースのオフィスシミュレーターである。ピクセルアートのUIは一見すると遊びに見えるが、その裏でgit worktreeによる作業分離とカンバンによる進捗管理という実用的な仕組みが動いている。セルフホストの手間を許容できるなら、複数エージェント運用の見通しを大きく改善してくれる選択肢になる。まずはDockerかインストールスクリプトでローカルに立て、手持ちのエージェントを1〜2体つないで感触を確かめるとよい。