Claude Code のようなコーディングエージェントを使っていると、セッションを閉じるたびに文脈が消える。翌日また同じ前提を説明し直す、あるいは「前回なぜこの設計にしたのか」を思い出せない ─ この問題を、作業内容の自動記録と全文検索で解決しようとするのが Claude-Mem である。開発者は thedotmack。Apache-2.0 ライセンスのオープンソースとして公開され、npx claude-mem install の 1 コマンドで導入できる。バックグラウンドのオブザーバーがセッション中の意思決定・バグ修正・アーキテクチャ選択を構造化された「観測(observation)」として記録し、次のセッションで検索・参照できるようにする。
主な特徴
- セッションをまたいだ自動記録: SessionStart / UserPromptSubmit / PostToolUse / Summary / SessionEnd の各ライフサイクルフックに介入し、ツール実行の履歴と要約を自動で蓄積する。ユーザーが「メモを取る」操作をする必要はない
- SQLite + FTS5 による高速全文検索: 記録はローカルの SQLite に保存され、FTS5 インデックスで全文検索できる。オプションで Chroma を組み合わせた意味ベースのベクトル検索にも対応する
- 自然言語での検索: MCP ツールと同梱スキルを通じて「先週この認証まわりで何を決めたか」といった自然文で過去の文脈を引き出せる。過去の観測に対する出典表示(引用)も行う
- CLAUDE.md の自動生成: プロジェクトの活動タイムラインをまとめた
CLAUDE.mdを自動で生成・更新し、次回セッションの起動時に文脈として渡せる - プライバシー制御:
<private>タグで囲んだ内容は記録対象から除外できる。データは基本的にローカル完結 - 複数クライアント対応: Claude Code のほか Cursor、Windsurf、OpenCode、Codex CLI、Gemini CLI、OpenClaw、VS Code など、MCP に対応した各種エージェントから利用できる
- Web ビューア: 記録されたメモリのストリームをブラウザ上でリアルタイムに眺められる管理 UI が付属する
料金
| プラン | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| claude-mem(オープンソース) | $0 | 全機能をローカルで利用可能。Apache-2.0 ライセンス |
| CMEM Cloud | 月額 $20 | クラウド同期、どこからでもアクセスできるプライベート MCP エンドポイント |
| Team | 1 席あたり月額 $333(3〜50 席) | チーム利用、導入支援(FDE オンボーディング)付き |
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 本体はオープンソースで無償。クラウドを使わずローカルだけで完結させられる
- 記録が完全に自動で、作業中に「メモを残す」という負担がかからない
- SQLite ベースのため、記録データの実体が手元にあり、中身を自分で確認・バックアップできる
- Claude Code 専用ではなく、Cursor・Windsurf・各種 CLI エージェントなど複数の環境で同じメモリを共有できる
<private>タグによる除外指定があり、機密情報の記録を避ける手段が用意されている
⚠️ デメリット
- Node.js 20 以上、Bun、SQLite 3 などの実行環境が前提で、非エンジニアが気軽に使うツールではない
- すべての作業を自動記録するため、記録の肥大化やノイズの混入を運用でコントロールする必要がある
- 意味ベースの検索を使うには Chroma の追加セットアップが要る
- 更新頻度が高く、破壊的な変更やバージョン間の差異に追随するコストがかかる
- クラウド同期やチーム共有は有償プランの領域で、Team プランは個人には手が届きにくい価格帯
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Claude-Mem | Mem0 | Basic Memory | CLAUDE.md(手書き) |
|---|---|---|---|---|
| 主な用途 | コーディングエージェントの作業履歴の自動記録 | アプリ組み込み用のメモリレイヤー | Markdown ベースの知識ノート連携 | プロジェクト前提の手動記述 |
| 記録の方式 | 自動(フック経由) | アプリ側の実装次第 | 半自動(ノートとして保存) | 完全に手動 |
| 保存先 | ローカル SQLite(+ 任意でクラウド) | ローカル / マネージドクラウド | ローカルの Markdown ファイル | リポジトリ内のテキスト |
| 検索 | 全文検索(FTS5)+ 任意でベクトル検索 | ベクトル検索 | 全文・リンク辿り | 検索機能なし |
| 費用 | 無料(クラウドは有償) | 無料枠あり / 有償プラン | 無料(オープンソース) | 無料 |
こんな人におすすめ
- Claude Code を日常的に使っていて、セッションのたびに前提を説明し直す手間を減らしたい開発者
- 「なぜこの実装にしたのか」という意思決定の経緯を、後から検索できる形で残しておきたい人
- 長期にわたるプロジェクトで、数週間前の作業内容を思い出す必要が頻繁に発生する人
- Cursor・Windsurf・各種 CLI エージェントを併用していて、環境をまたいで文脈を共有したい人
- クラウドにコードや作業履歴を出したくない、ローカル完結を優先したい人
まとめ
Claude-Mem は、コーディングエージェントの「セッションが終わると記憶が消える」という構造的な弱点に、自動記録と全文検索で正面から取り組むオープンソースのプラグインである。導入は 1 コマンドで済み、本体は無償、データはローカルの SQLite に残る。一方で Node.js や Bun といった実行環境が前提となり、記録の肥大化やバージョン追随の手間は運用側で引き受ける必要がある。まずはオープンソース版をローカルで試し、複数マシンやチームでの共有が必要になった段階で CMEM Cloud を検討するのが現実的だろう。