ドイツのBurmCorpが開発する、AIエージェント専用のオンライン世界。プレイヤーとして世界を歩き回るのは人間ではなく、あなたが作ったAIエージェントである。エージェントは周囲を観察し、自分で判断して行動し、その結果を記憶として積み上げていく。世界は24時間動き続けてリセットされず、四季や天候も移り変わる。参加方法は2通りで、REST APIと公式のagent-runnerを使って自分でループを書く方法と、プログラミングなしで用意されたプロンプトをClaudeに貼り付けるだけの方法がある。2026年8月時点でアーリーアクセス中であり、開発途上であることが公式に明記されている。
主な特徴
- 観察・判断・行動・記憶のループ: エージェントは近くのエンティティ・資源・他エージェント・自分宛のメッセージだけを見る(文脈はローカル)。そこから性格と目標にもとづいて、移動・採取・製作・会話・取引・休息・戦闘などの行動を1つ選ぶ。結果は即座に反映され、記憶として残る
- 経験で人格が変わる: 作成者が与えるのは名前とペルソナ(性格・目標・恐れ)だけ。その後は生き抜いた出来事が記憶となり、推論のしかたに戻ってくる。公式ドキュメントは「同じペルソナを与えた2体が別の人物に育つ」と説明している
- リセットされない常時稼働の世界: 世界は24時間動き続け、初期化されない。複数のバイオーム、昼夜、四季、天候の変化があり、採取や戦闘の成否に影響する。経済・同盟・対立は運営が書いた台本ではなく、多数のエージェントの独立した判断から生まれる
- できること: 伐採・採掘・釣り・収穫といった採取、道具や武器の製作、生物の狩りや縄張りの争奪、新しいゾーンや隠し通路の探索、相場を読んだ売買。信頼関係や評判を築く「ソーシャル」は近日対応と表示されている
- REST APIでの実装: ワールド一覧の取得 → 参加してセッションIDを得る →
/agents/actionのロングポーリングを回す、という3ステップ。1ティックは既定で約3秒、行動タイプは8種類(LOOK / MOVE / MOVE_TO / FOLLOW / UNFOLLOW など)に絞られ、会話・記憶・交友・性格は別の個別エンドポイントで扱う。認証はX-API-Keyヘッダー - ノーコードでも参加できる: エージェントを作ると「Copy Prompt」で接続情報とゲーム説明をまとめたプロンプトがコピーできる。それをClaudeに貼るだけで、エージェントが説明を読み、周囲を見て、自分でループに入る
料金
| プラン | 月額料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Explorer | 無料 | エージェント2体、1体あたり1日1時間の世界アクセス、インベントリ12枠、記憶保持7日 |
| Citizen | 未発表(近日提供) | エージェント5体、1日6時間、インベントリ24枠、積載+25kg、記憶保持30日 |
| Architect | 未発表(近日提供) | エージェント10体、1日12時間、インベントリ36枠、積載+50kg、記憶保持90日 |
| Sovereign | 未発表(近日提供) | エージェント50体、世界アクセス無制限、インベントリ48枠、積載+100kg、記憶保持無制限 |
| Enterprise | 要問い合わせ | 専用ホスティング、専用ワールド、エージェント数無制限 |
「世界アクセス」は1体のエージェントが1日に世界内で活動できる時間を指す。有料プランは2026年8月時点で価格が公表されておらず、購入もできない(公式サイトに「COMING SOON」と表示)。また、エージェントを動かすLLMのトークン費用はこの料金に含まれず、利用しているモデル提供者から別途請求される点に注意したい。
料金は2026年8月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
メリット・デメリット
✅ メリット
- 自律エージェントの振る舞いを、閉じたベンチマークではなく「他者がいる持続的な世界」で観察できる
- 無料プランだけでもエージェントを2体作って動かせるため、試すコストが低い
- APIの設計が素直で、ロングポーリングに行動を投げるだけの薄いループから始められる
- 自分でコードを書かなくても、プロンプトをClaudeに渡すだけで参加できる導線が用意されている
- 世界がリセットされないため、長期間かけて育つ人格や関係性という、短時間の実験では見えない現象を追える
⚠️ デメリット
- アーリーアクセスであり、公式自身が「完成品ではない、壊れることもあるし機能が変わることもある」と明記している
- 有料プランの価格が未公表で、無料枠を超えたときのコストを事前に見積もれない
- LLMの利用料が別建てのため、エージェントを長時間走らせるほど自分持ちの費用が増える
- 無料プランは1体あたり1日1時間・記憶7日と制限が強く、長期の経験蓄積を見るには足りない
- 18歳以上向けのプラットフォームと明示されている
- 日本語のドキュメントやコミュニティはまだ見当たらない
類似サービスとの比較
| 比較項目 | Artificiety | AI Town | Project Sid(Altera) | Generative Agents(Stanford) |
|---|---|---|---|---|
| 位置づけ | 運営型のオンライン世界(サービス) | オープンソースのシミュレーション基盤 | 研究プロジェクト | 研究論文と実装 |
| 導入 | アカウント作成のみ、ホスティング不要 | 自前でデプロイして運用 | 一般提供なし | 自前で再現 |
| 世界の継続性 | 24時間稼働・リセットなし | 自分で起動している間だけ | 実験期間に依存 | 実験期間に依存 |
| 人間の参加 | 不可(エージェント専用) | 可能 | ─ | ─ |
| LLM費用 | 利用者持ち(別建て) | 利用者持ち | ─ | 利用者持ち |
Artificietyの立ち位置は「自分で環境を用意しなくても、既に動いている世界にエージェントを送り込める」点にある。研究用途の再現性や改造の自由度を求めるならオープンソース側が向くが、他人のエージェントと同居する持続的な社会を手軽に試したい場合はこちらが早い。
こんな人におすすめ
- 自作のAIエージェントを、他者がいる環境でどう振る舞うか観察してみたい開発者
- マルチエージェントの創発(経済・同盟・対立)に関心があり、環境構築の手間を省きたい人
- ゲーム的な題材でエージェント開発の練習をしたいAI初学者
- コードを書かずに、AIエージェントの自律的な振る舞いを眺めてみたい人
- 長期記憶や人格の変化といったテーマを、机上ではなく動くもので確かめたい研究者・実験者
まとめ
Artificietyは、AIエージェントだけが住民となるファンタジー世界を、サービスとして提供する試みである。観察・判断・行動・記憶というループを回し続けた結果として人格や社会が立ち上がるという発想は、既存のエージェント研究の系譜にありつつ、常時稼働の共有世界という形にまとめた点が特徴的だ。まだアーリーアクセスで有料プランの価格も未定のため、現時点では「本格運用する場所」ではなく「無料枠でエージェントを2体走らせ、自律的な振る舞いを観察してみる場所」と捉えるのが実情に合っている。